女医とドラゴンその三
な、何っ?!」
「お前がなぜ小悪党か教えてやるよ」
受け止めた拳を振り払い、腹部に正拳突きを当てる。
「うぐっ!」
真正面から拳を受けた瞬間、衝撃で後ずさりをする。
「まずお前は、目先の欲で行動する短所がある」
「うるせぇっ!」
敵に背を向け、口を開く。この行動は常人では絶対にしない。
背中に目が付いているかのようにさらに裏拳を顔面に当てる。
「ぐっ!」
「二つ目は先に起こりうる出来事を予測しない事だ」
「はっ…。はっ…。お前に何が…」
「お前に何が解るとでも言うつもりか?そんなもの知るはずないだろ。
他人の思考なんて読めるわけが無い。良いか?お前が起こした、この騒ぎはどこまでこまで想定した?
どれだけの被害が出て、どれだけの利益が出ると思った?それとも、元々自分だけが逃げるつもりだったのか?
こんな騒ぎを起こして、逃げきれるわけが無いだろう。少し考えれば子供も解る話だ。
それにここから脱走しようとした時点でお前の頭は正常じゃない、得る物より失う物が方が大きすぎる。
その頭は損得も考えられないのか?」
「うるせぇ…、お前に俺の悔しさが解ってたまるかぁっ!何も不自由なく生きてたお坊ちゃまがよっ!
この俺が小悪党だって?そんな事はなどうでも良いんだよっ!後、一歩で組織になりそうだっんだっ!」
「組織?あんなのがか?」
「な、何っ?!」
「麻薬と詐欺でしか資金源を確保できなかった、小悪党が?」
この言葉が完全に止めになる。
自分が誇りにしてきたものがあっさりと否定され、馬鹿にされた。
誰だって頭に血が上ってもおかしくないが、特にこの男は自尊心が強い。
「くそぉぉぉっ!」
「最後にお前には徹底的に足りない物がある」
「死ねぇっ!」
巨大な拳が高速で迫って来るが、それに一切動揺すらしない。
ただ静かに呼吸を整え、拳を構える。
その姿は例えるなら、侍の様だ。
その拳を音速で突き出し腹部に当てる。
「ぐぅっ!」
拳の衝撃波で土煙が上がり、身体が吹き飛ぶ。
そして、屋上から落ちそうになる。
「た、助けてくれっ!」
「俺が助けると思うか?お前見たいな奴を?」
「く、くそっ!」
その光景をただ眺めていた。人間が一人、高い場所から落ちそうな場面。
普通なら助けるのが、優しさと言う奴なのかもしれないが今は感じない。
「お前をここから落とす前に教えてやろう。お前に徹底的に足りない物は信念だ」
この言葉を口にすると、力が無くなったのか自ら地に向かって行く。
だが、地面に叩きつけられる事は無かった。
運良く木に引っかかり、大怪我をせずに済んだ。




