脱獄計画実行その五
眠らせた見張りを廊下の脇に寄せ、三人は第三食堂の裏口に向かう。
この空気感を懐かしいと感じるのは気のせいだろうか。
若い時にドラゴンと少し似た、同じ軍の後輩と任務をしていた時に似ている。
その時もスリーマンセルで自分、後輩、お調子者の後輩。
その後輩は堅物で冗談も通じない奴だったが、基本は真面目で優しい奴だった。
その正反対のお調子者はやかましい奴だったが、憎めない奴。
そんな事を思い出して、鼻で笑う。
「どうした?」
「いや、昔の事を思い出してな…」
「あんたは昔、軍人だったんだろ?」
「そうだ、米軍にいた。結婚してこっちに来たんだ」
「結婚?あんた、結婚してたのか?以外だな」
「良く言われるよ。こう見えても、娘もいるぞ」
「えっ?!子供いるんすかっ?!」
「いるだろう普通、お前声がでかい。敵に気づかれたらどうする?」
「あ、悪いっす…」
何時の間にか三人の雰囲気は良くなって行くのが、肌で伝わる。
だが油断は出来ないのが、ドラゴンと言う男である。
「結婚は良い物か?」
「突然どうしたんだ?」
「単純な質問だ。答えたくないなら、それで良い」
「もしかして、惚れた女でもいるのか?」
「し、質問って言ってるだろ…」
「お、むきになってる所が怪しいすっね」
「クマ、お前まで…」
「その相手は誰なんだ?」
「言うわけないだろうっ!」
「はっはは。以外に可愛い所があるんだな、お前。ここが裏口か…、全員静かにしろっ!」
三人は息を殺し、壁に身を寄せる。
「よっしゃ、革命っ!!」
「また、お前の一人勝ちかよ…」
「あーあ。つまんねーの」
見張りの囚人達が暇つぶしで遊んでいるらしい。
「お前ら目を塞げ」
「え…」
「閃光弾を使う」
ドアを数センチ開け、その隙間から閃光弾を転がす。
その小さな鉄の塊が床を転がる音に気づかなずい。
「な、何だっ!目…」
「えっ…」
三人は麻酔銃で床に倒れこむ、その様子を確認を済ませ部屋に入る。
その部屋はどうやら、食材を保存している物置だったらしい。
食い散らかっている様子を見ていると、この三人が好き放題してあたようだ。
「ん?これは…」
眠らせた連中の腰の物が目に入る。
「どうした?」
「お前ら、武器は使えるか?」
「何すかそれ?」
腰にぶら下がっていたのは看守が所持している、電流式警棒。
「ここの看守達が持ってる警棒だ、ほれ。ドラゴン、お前は棒術は?」
「いや、習った事は無いが武器ならある程度は使える」
「そうか、クマとか言ったか?お前も一様持っておけ。良し、先に進むぞ」
三人は装備を奪取して、通路を進む。
すると、今までとは違い騒がしくなって行くのが解る。
「段々と賑やかになって来たっす」
「あぁ…。あいつら、無事だと良いが…」
「ちょっと止まれ、何か揉めてるぞ」
三人は恐る恐る、食堂の中を覗く。
「何だ、てめぇっ!自分の立場解ってんのかっ!」
「立場?お前こそ、自分が何してるか解ってるのか?」
「おい、止めろ黒牙っ!すいませんっ!」
「俺達は何も悪い事はしていないぞ?」
「だから俺らは今、縛られてるのっ!」
「そうだったな、別にこんな物は千切れるけど」
「てめぇ、ふざけてんのかぁっ!」
いかにも人相が悪い見張りの囚人が少年に襲い掛かろうとしている。
「あれはブラッククロウ…、第三棟に入っていたのか」
「どうする、助けるか?」
「あの人数を見ろ。どう見ても三人だけじゃ、無理だ」
「そうだな…」
様子を伺っていると、騒ぎは段々と大きくなっている。
「ぎゃぁぁぁっ!」
「だから、俺達は何もしてないって言ってるだろっ!」
「お、おい黒牙っ!やりすぎだっ!放してやれってっ!」
「何だ、あのガキっ!調子に乗ってんじゃねぇよっ!」
さらにその様子を見ていた、他の見張りも少年に襲いかかる。
だが、さすがは二人で研究所を襲撃しただけの力を持っているだけの事はある。
超能力を使用しなくても、大人が束になっても平気な顔をしている。
「もしかしたら…。行くぞ、二人共」
自分と同じ年頃のような少年を助けたいと言う親心が働いたのかもしれないが、あの実力を見てこの状況を何とか出来ると確信した。
三人は人質の大勢いる、食堂に活きよい良く張り出す。
「全員、大人しくしろっ!俺はヒーロースパイだっ!」
「ヒーローだって?」
「助けに来てくれたのかっ!」
スパイの登場により、その場の空気は一気に変わる。
「ふざけんなっ!聞いてねぇぞっ!」
ブラッククロウと含め、四人で第三棟食堂は制圧完了。
「協力感謝する、ブラッククロウ」
「俺には黒牙って名前がある」
「すまない、ニュースでしか君の事は知らなくてね。改めて、協力感謝する黒牙」
「それであんたは達は?何で、ヒーローが?」
「あんたは?」
「俺は黒牙の隣人の金髪だ。よろしく、それでなんてあんたが?」
「俺は依頼を受けて、人質の開放とこの立て篭もり事件の首謀者強力の拘束が任務だ」
「おっ!ドラゴンっ!無事だったかっ!?」
ドラゴン達の班を担当していた看守が駆け寄って来る。
「あぁ。あんたも無事だったか?」
「クマも一緒か、安心したよ…」
これで第一関門の第三棟制圧は完了した。
「こちら、ミスタースパイ」
『無事でしたかっ!良かったっ…、それで状況報告をお願いします』
「第三棟の制圧は完了した、それに協力者も得た。これより、第二棟に進む」
『協力者って、誰ですか?』
「ドラゴンとその隣人だ。それにブラッククロウも一緒だ」
『えっ?!ど、ドラゴンっ?!ブラッククロウっ?!』
「通信を切るぞ、また連絡する」




