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株式会社ヒーロー  作者: ボサボサ
脱走計画と女医
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脱走計画

更生施設にあるグラウンド、そのコンクリートで囲まれた隅っこがある。

そこは第三棟の仕切り役の強力達の溜まり場であり、今日も下品な笑い声と嫌味な声が交じり合う。


「これで揃ったな。それで、守備はどうだ?ねずみ?」

「ちゅちゅ、そうですね。今の所は順調ですが、どうしても障害になる場所があるんで」

「監視塔か?」

「ちゅちゅ、そうです。どうしても、あっしらが近づけない。なぁ、くも?」

「あぁ。旦那、せめてもう一人仲間が欲しいんだが?どうにかならないか?」


何やら怪しい会話を強力をしている、他の二人。

一人目はサイバー犯罪で捕まった怪人ネズミ。

二人目は傷害罪、窃盗など捕まった怪人蜘蛛男。


特にネズミは頭が良く切れる為に他人の弱みなどを握るのは得意であり、電脳世界は得意と自負している。


「宛が無いわけじゃないんだがな、ドラゴンは当てにならないからな…」

「ド、ドラゴンって…。あのっ?!怪人クラブのボスの息子…。そ、そんな大物がなぜ?」

「あぁ…、三ヶ月前に入って来たんだ。知らなかったのか?」

「ちゅ~、さすが強力さんでちゅ。それで、ドラゴンは何て?」

「あの野郎、この俺の誘いを断りやがった。だが、手は打ってある」

「さすが強力の旦那だぜ」

「ちゅちゅちゅ」


三人の悪人が不適な笑みを社会の端っこで浮かべる。

悪人が集まる所には何か起こると相場が決まっている。


「仮説では無い、これは事実だ…」


消灯時間までの10分間で考えていた、食堂で怪しい男に襲われた事についてだ。

第三棟に収容されている、強力の傘下入りを拒否した事への報復だろう。

なぜ末端の構成員に凶器を持たせる事が出来た、そもそも別の棟に移動は禁止されている。

導き出せる答えは簡単だ、強力がこの施設の一部を仕切ってるからだ。


「ふっ…」


答えが出た頃には自然と鼻で笑いが出る、丸で安い映画を見てる様だ。

ベタな脚本だ、舞台はとある刑務所でその場所には囚人を仕切るまとめ役がいる。

そのまとめ役は看守より、その小さな世界では地位が上。


つまりまとめると、奴は申し出を断った俺に警告をしたわけだ。

囚人が仲間を集め始めるのは誰にでも解る事だ。

だがこれは証拠が無い、今は仮説のと言う所で留めておこう。

ただ、他の連中に危害が及ばないように警戒だけはした方が良さそうだ。

俺には目標がある、「ヒーロー」になる。

一日でも早くここを出て、あの人との約束を果たす。

それに模範囚になれば更生期間が短くなると聞いた事がある。

もう前の自分には戻りたくない、否、戻らない。

この綺麗な感情を与えてくれた、あの人の為に。


考え事をしていると自然と意識が睡魔に吸い込まれる。


明朝6時、更生施設の囚人達はこの時間に目を覚ます。


「点呼っ!開始っ!」


何時ものように点呼で看守に挨拶をする。


「良し、グランドに移動っ!駆け足っ!」


グラウンドに移動して、朝のランニングを始める。


「おい、皆。話があるんだ」

「珍しいすっね、朝から険しい顔して…」

「そうですよ、どうしたんですか?」

「お前達、第3棟にいる強力って知っているよな?」

「えぇっ?あの強力ですか?名前だけなら知ってるますが…」

「そうだったな、俺達は同時期にここに入ったんだな。その強力が何かの目的で俺を仲間に誘った」

「目的って?何すか?」

「それは解らないが大体の予想はついているが、確証が無い」

「でも何か予兆があったすんね、さすがドラゴンさんっすね」

「あぁ…、それで奴らが何かを報復をして来るだろう」

「あっ!昨日のあいつかっ!全く気づかなかったっ!」

「恐らくな、警戒だけもしておいても良いだろう。俺達に近づいて来る人間は一切信用するな、少しでも違和感を感じたら俺に報告してくれ」


正直ここにいる全員を疑っている、正確にはクマ以外信用していないと言うのが正確だ。

この話をして、少しでも動揺する人間がいないかどうか、反応を見ている。

強力の奴は少しは頭は働く見たいだが、手先の人間の思考回路と行動までは読めないだろう。


今の所は特別な反応は無いが、これから俺の周辺の人間に接触があってもおかしくないと思っている。

その前に少しでも俺が先に動いておく。


「私語は慎めっ!黙って走れっ!」


何時ものように看守の渇が飛ぶが誰も気にしてはいない。


「良し朝食の時間だ、全員移動っ!」


今の所は、何時も通りの行動で何も変化は無い。


「しかし、強力の野郎はいったい何を考えてるんすかね?」

「今はその事に触れるな、俺達の会話は聞かれていてる」

「え?いったい誰にすか?」

「周りの看守達を良く見てみろ、違う人間だ。しかも、ずっとこちらを見ている」

「気のせいじゃないすか?」


気のせいでは無い紛れもない事実だ、この囚人達が利用する大食堂にはもちろん看守がいる。

その人数は、合計で10人だ。この人数には理由がある、囚人達の首に付いている超能力強制停止装置がある為に必要最低限の人員で済むのである。

もしも囚人達が揉め事や脱走など起きた場合、対応するがそれ以外は基本監視をしている。


だが今日の看守は様子が何時もと違う、目付きが違う。

それにその視線は五つ、全てドラゴンに向けられている。


「いや、気のせいじゃない。そろそろ来るぞ…」

「おい、お前達。私語は禁止されているのは知っているはずだな?」

「申し訳無い、ついつい話が盛り上がってしまった…」

「何だ、その生意気な態度は?」


看守の手がドラゴンの肩を強く掴むがそれに全く動じず、鋭い視線と重い言葉で威嚇する。


「お前達は誰だ?この俺が知らないと思っているのか?前の看守達はどこに行った?」

「くっ…!今回は見逃してやろう」


苦虫を噛むような表情でその場を立ち去ろうとするが最後に一言。


「お前が悪いんだぞっ!」


その言葉だけを言い残しその場を立ち去る。


朝食済ませ、何時ものように作業をする。午前は人手が足りない工事現場の手伝いだ。


「いや~、助かるよ。こんな事までして貰って、内の人間が怪我しちまってね」

「良いんです、これもこいつらの社会貢献の一つですから」


ドラゴン達の班は道路工事を手伝いをしている、この真夏には辛い作業だが本人達は嫌な表情は一切浮かべていない。

むしろ、労働をする事に喜びを覚えている。


「最近、身体を動かすのが楽しいんだよな~。これもドラゴンさんのおかげだな~」

「そうだよな、俺もここに来るまではただのごろつきだったもんな~。何か、生まれ変わった気がするぜ」

「そうっすね、あの人は人を変える力があるんすよ」

「そうそう、ドラゴンさんが怪人クラブの跡継ぎって信じらねぇよ」

「おいっ!お前らっ!手が止まってるぞっ!」


何時ものように看守が注意をしていると、時計の針は12時を指している。


「お前らっ!昼の時間だっ!」


全員が昼食を口に入れていると、ドラゴンが看守の側に寄る。


「看守…」

「どうした、ドラゴン。お前が話しかけて来るなんて、珍しいじゃないか」

「第3棟にいる、強力について教えて欲しい」

「何?お前、まさか奴と揉めたんじゃないだろうな?」


強力の名前を出したとたん、看守の表情が硬くなる。


「正確には違う、奴は俺に仲間になれと言って来た。恐らく、何か企みがあるんだろう」

「そうか…、お前は有名人だからな。それでお前は何て返した?」

「もちろん、断った」

「そうだよな、まともな奴は近づかないしな」

「それで奴は何者だ?」

「あいつは五年前に更生施設に来てな、素行が悪くてな直ぐに有名になった。五年もいれば、シャバに戻れるはずなんだがな」

「五年も居るのか?あいつは余程、学習能力が無いのか。全国の更生施設の平均出所年数は確か、二年だとデータで見たぞ?」

「あいつは更生している様子が全く無いからな、当然の処置だ」

「どれだけ、態度が悪いと期間が延びるんだ?」

「簡単に言えば、喧嘩とかかな…」

「そうか…」


その言葉を聞いて一つだけで思い出す事があった。更生施設に入ったばかりの頃、とにかく苛立っていて目に付いた者には喧嘩を売っていた。

その時に看守達に言われた言葉がある。


『これ以上、問題を起こすと更生期間が延びるぞっ!』


この言葉を思い出していた。

喧嘩をする度に百合さんに怪我の治療をしてもらっていた。

あの時の手の優しい温もりは今でも忘れない。


「あ、そう言えば。今日、お前に面会が入ってたの忘れてたわ」


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