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株式会社ヒーロー  作者: ボサボサ
脱走計画と女医
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更生施設での生活

四月の終わり、怪人クラブA市支部の代表と幹部達が逮捕された直後。


「何?サイコが捕まった?そんな地方の統括が捕まっただけで、こっちに電話して来るなっ!

こっちは仕込みで忙しいんだっ!変わりなら後で用意してやるっ!それでも貴様らは本部の幹部かっ!」

『事態は急を要するんですぞっ!早めに対処しませんとっ!それにドラゴン様も現在、更生施設に収容されていますっ!どうか、早めのご決断をっ!』

「解った、解った…」

『それでは失礼します』

「はぁ~。自分らでどうにかできんのか、何の為に高い給料を払ってると思ってるんだ」


溜息と愚痴を零しながら、受話器を元に戻す。


「お邪魔しますよ…」

「申し訳ない今は準備中で…、常務か。勤めご苦労」

「いえいえ、ラーメンの仕込み中でしたか?それより、やはりサイコではここを押さえる事はできませんでした。早く、ドラゴン様を…」

「さっき同じ内容で電話があったわ、あいつらは幹部の自覚があるのか?お前が戻って、指揮を取ってくれないか?他の二人は忙しいだろうからな」

「了解。直ぐに本部に戻って、計画の見直します」

「ちょっと待て。せっかく来たんだ、ラーメンでも食ってけ」

「は、はい。頂きます」



七月になり蝉の鳴き声が人々の耳に入る、その音は季節の風物詩で誰も気に止めない。


「点呼を取るっ!全員、出ろっ!」


監視員が威勢良く、声を張り上げる。その前に数人の男達が整列する。

その光景はまるで刑務所の様だが、違う。


「良し。番号を言えっ!」

「1っ!」

「2っ!」

「3っ!」

「4っ!」

「5っ!」

「6っ!」

「7っ!」

「8っ!」

「全員いる様だな、今日の予定を発表するっ!何時も通りの予定をこなしてから、朝の0900時から畑作業っ!

午後から海の清掃、1700時に全作業を終了だ。質問は?ないようなら、グラウンドに向かえっ!」


まるで刑務所の様な場所だが違う、ここは全国各地に点在する「更生施設」である。

ここはA市が管理しているその一つである。


この世界では刑務所は存在せず、その変わりに更生施設が存在する。

何かしら罪を犯した人間が送られる場所である。もちろん裁判で判決を出され、刑期の変わりに更生期間と言う形で罪を清算して行く。

その目的は社会復帰が目的である。


一例を挙げれば、人との交流を持たせる。何かの役割を与え達成感を覚えさせ、自分は誰かに必要にされているのだと実感を与える。

その過程を得て、常人と同じ道に戻し社会復帰へと導いて行く。それが更生施設だ。

その過程でヒーローになった者達もいる。

一度、過ちを犯してしまった者達に夢と希望を与える。それも社会復帰の第一歩。


「今日も暑いっすね~、ドラゴンさん」

「夏だからな、当たり前だ。ほら、真面目に走れ」

「朝から真面目すっね~」

「そうだな」

「こらお前達、私語は慎めっ!」


隣の部屋で仲が良い、クマと日課の様な会話をしていると監視から注意を受ける。


「集合っ!良し、全員揃っているなっ!良し、これから朝食の時間だ」


グラウンドの中央に八人全員揃っているかどうかを確認後、一日の最初の楽しみだ。


更生施設での食事は食堂で一斉に食す事になっている、喧嘩や揉め事が起きないように順番で行われているが人間がいる空間ではそれは無理な話だ。


ドラゴン達が列に並んでいると、早速喧嘩が始まっている。


「てめぇっ!今、肩にぶつかったぞっ!」

「あぁんっ!言いがかりつけんてじゃねぇぞっ!」

「やんのかっ!」


お互いが掴みかかった瞬間だ。


「お前達、止めないかっ!監視達が見ているぞ、反省室に入りたいのかっ!」


それを見かねた、ドラゴンがその場で一括する。


「す、すいませんっ!ドラゴンさん、お前も謝れよ」

「すいません…、どうかご勘弁を」


普通ならこう言う場なら喧嘩の規模が大きくなりそうだが、ここは違うらしい。



「さすが、ドラゴンさん」

「何時もの事だろ、ささっと食事にしよう」

「そっすね」


食堂の中は人間で溢れ返って騒がしい、その雑多の中に一人の少年がドラゴン達を眺めていた。


「どうした、黒牙?早く、飯食え」

「あぁ…」


収容された人間達が食事を終え、作業に入る。


「今日も近所の米を生産している、農家さんの手伝いだっ!」

「皆さん、今日もよろしくね~。監視さんも、そう気を張りすぎないで」

「「よろしくお願いしますっ!!」」

「じゃ~、初めに田んぼの雑草取りにでもしてもらうかね~」

「良し、準備が出来たら作業開始っ!」


全面に広がる、緑色の風景。それを視界に入れば、日常生活の疲れは取れる。

精神的に緑色は癒しの色とされる。


話は変わるが季節は夏だ、日光が万遍なく降り注ぐ中での農作業は結構辛い。


「ふぅ~、今日も虫がぎょうさんいるっすね」

「そうだな、虫付くと言う事とはこの米は良い物だ」


汗を流し、労働をする。これは人間が太古の昔から行っていた活動の一つだ。

それを行う事に責任感と達成感を得る事が可能になり、人々の輪に入りやすくなる。

それに良い人間関係の構築が可能になる。


「そろそろ、お昼にしませんか?」

「おい、お前らっ!農家さんからの差し入れだっ!昼食の時間にする、直ちに作業を中止だっ!」


農家のおばちゃんから差し入れは大量のおにぎり、豚汁、漬物だ。

平凡な品物だが、ここのいる人間達は声を上げて喜ぶ。


「よっしゃぁっ!今日はおばちゃん特性おにぎりだぁっ!」

「生きてて良かったっ!」

「貴様らっ!静かにせんかっ!」

「まぁ、まぁ。休み時間くらいは良いじゃありませんか~。監視さんもお茶どうぞ」

「ありがとうございます…、ですが良いのですか?作業に来る度にこんな大量な食事を…」

「良いんですよ、家はじいさんと私しかいないからね。それに子供達も盆と正月くらいしか、顔を見せないしね。それに私は賑やかな方が好きだしね」

「そう言って貰えると、恐縮です」


この二人の会話を聞いていると、心が温まる言葉が聞こえて来る。


「やっぱ、ここの米はうめぇっ!」

「そうだな、あのお婆さんには何時も世話になってるからな。感謝しなきゃな」

「家の米は美味いかい?どらちゃん、くまちゃん」


二人が食事をしていると、農家のお婆さんが話しかけて来た。


「はい、美味しいです。何時もありがとうございます」

「すげぇ、うめぇよっ!ありがとう、ばぁちゃんっ!」

「そうかい、そうかい。そいつは良かった、それと施設の暮らしは慣れたかい?」

「は、はい。おかげさまで、周りの皆も良くしてくれます」

「はっはは、それは良かったね~。すっかり、顔付きも良くなって安心したよ」

「何いってんすか~、今じゃボス見たいなもんじゃないっすか~」

「おや?それは良かったね~」

「け、決して自分はそう言うつもりじゃ…」

「どらちゃんは根は真面目で優しいからね~、皆から好かれてるんだよ」

「そうだと良いのですが…」

「私はあんたは悪い人間だとは初めから思ってなかったけどね」


こんな言葉を聞いてしまうと恥ずかしくて、照れてしまう。

三ヶ月前までは父親の後を継ぐ為にヒーロー達と戦って来た、その目的はもちろん組織の利益と勢力の拡大。

その為に二十五年間過ごして来た。否、それしか知らなかった。

幼い頃から帝王学を学び、武術を学び、暗殺術を学び、経済、社交、人を殺す術と人を先導する事を学んだ。

だがそれは段々は疑問に変わって来たのだ、父の思想が正しいと教わって来たし、それが当たり前だと思っていた。


きっかけは小さい出来事だったのだ。数年前組織での仕事をした時、ヒーローに情報が洩れていたらしく戦闘になったり犠牲が出た。

犠牲はとある家族がその戦闘に巻き添えに会い、両親が死亡。もちろん、その子供は孤児になり施設に行く事になる。

その仕事が終わった後にその孤児が気になり、様子を見に行った事もあるが声をかける事が出来なかった。

そんなのは当たり前だ、自分達の責任で他人の人生を変えてしまったのだ。

それから父の方針に疑問を抱く様になる。

あのシルバーファングに捕まったのは、もしかしたら良かったのかもしれない。

組織に居た時に得られなかった物が今では得た。


「よしっ!休憩は終了だっ!作業に戻れっ!」

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