決別とレッドウルフその一
ブラッククロウ攻略、研究所攻略から二日後。
A市の山中にあった研究所がヒーロー達によって陥落。その後始末が警察、解体業者で行われている。
もちろん、怪人クラブA市支部統括並びに幹部達が厚生施設に送られる。
その他の構成員達は逮捕され、世間はその話題で連日ニュースで報道されている。
『本日はこの場をお借りして、発表してたいございます。連日報道されています、ブラッククロウと研究所の件でございます。
私が代表を勤めさせて頂いております、株式会社ヒーローA支部所属のヒーロー達の手により事件の解決いたしました事をご報告させて頂きます』
病室のテレビでニュースが流れているのをボサボサの白髪の頭を揺らしながら眺めていた。
「ふぁ~、やっぱ病院は暇だな~」
数日まで死ぬ一歩手前の人間の発言では無い。
本人は暢気に振舞っているが、実は身体にはかなりの負担が掛かっている。外傷だけでは無い、能力強制発動剤の副作用で心臓と内蔵にダメージを負っている。
担当医師の判断で一週間の入院を支持された。
「失礼します。白牙さん、お加減はどうですか?」
「あぁ~。身体は痛むけど、時間が経てば治るでしょ?俺より、隣の奴はどうなんですかね?もう二日も目を覚まさないだけど…」
「加藤さんも大分無理をなされてようだ、あなた以上に。それにしても、あなた達はいつも無理をしている。少しは自分の身体を大事にしたらどうですか?
職業だからしょうがないとは言え、いずれは本当に死にますよ?」
口を開く医師の言葉が怖い。普通、医者が患者に向かって死ぬとは言わない。
だが、この二人はこの間の戦闘で無理をしたのは誰の目からも明白だ。
「はっ!ここは…」
「目が覚めましたか?」
「あ、どうも…。病院っ?!」
「私の顔を見て理解したようですね。加藤さん、あなたは白牙さんと一緒に運ばれたんですよ、今回も無茶をしたみたいですね…」
「は、はい…。途中から良く覚えてませんけど」
「そうですか、とにかく目が覚めて良かった。会社とご家族には連絡しておきますので、それまで絶対安静ですよ。それまでは病院から絶対出ないで下さいね。
それと、後一日は面会謝絶ですで気をつけて下さい。それでは失礼します」
「解りました」
何時もの腰が低い態度で会釈をして、医師を見送る。
「白牙さん。それで黒牙君とサイコは…」
「あぁ…、サイコもブラッククロウ逮捕された。でもあいつは未成年だからな、多少は罪が軽くなるんじゃね?」
「そうですか…、良かった」
「部長は本当に人が良いな。それより、どこまで覚えてる?」
「え、と言いますと?」
「だから、この間の戦いで…」
「あぁ…。吹っ飛ばされて急に身体が熱くなって、サイコと殴り合いをした所までは…」
「そうか…、やっぱりな」
「わ、私何かしましたか?!」
「何かって言うか、あれは多分暴走だな」
「ぼ、暴走っ?!そんな現実離れした話が…」
否定はするが、薄っすら覚えている空に向かって獣のように吠えている自分。
「これは憶測でしかないが、部長の身体に俺の血が馴染んで来てると思う。それで段々と力を強まって、暴走した…」
「なるほど、でもそれは悪い事ではないと思いますよ」
「驚かないのか?」
「い、いや~、自分の事ですからね…。それに何となく覚えてますよ、何か身体中が熱くなって「生きたい」って聞こえてた気がしたんです」
「じゃまするぜっ!」
突然、顔にガーゼを張ったミスターマッスルと機嫌が悪そうなミスサイコ、それに腕に包帯を巻いたミスターアタックスーツが入室して来る。
「えっ?!皆さん、どうしたんですか?!面接謝絶ですよ!」
「お~う。お前らどうした?」
「いや~、じっとしてらんなくてな、来ちまった」
その脇に明らか機嫌が悪い女性が思いきり、マッスルを睨み付ける。
「私はこいつに電話で呼び出されたのよ!仕方なくよ、仕方なく!」
「サイ子さんは呼び出されて嬉しかったですよね」
「うるさい!あんたは黙ってろ!」
その光景をそっと見ている女性が一人いた。
「あなたは入らないんですか?」
「わぁっ!先生?!」
後ろには二人の担当医師が笑みを浮かべながら立っていた。
「え、でもでも…」
「今日は特別ですよ、あの二人には一番の特効薬があるみたいですね。ほら…」
自然に背中を押され、病室に足が入る。
「あ、相川さんっ?!」
「あ、あのサイ子さんから連絡を貰って…。その…、来ちゃいました。ご迷惑でしたか?」
「とんでもない!嬉しいです!」
病室に二人だけの空間が出来上がっている。
「中々憎い事をするでござるな、ミスタードクター」
「久しぶりですね。忍者、シャドー」
「ドクターが担当だったのか、社長の依頼か?」
「いや~、偶然ですよ。でも何か、偶然ではない気がするんですよね」
廊下で三人が部屋の様子を伺いながら喋っている。
「あの新人ヒーローは面白い人ですね、つい最近までただの人だったのに…」
「何でも、白牙殿の血を輸血してから力が付いたとか」
「今までに無い事例ですね。通常、超能力者は生まれ付きで突発的には発生しないと言われています」
「あいつは面白い奴だぜ」
「そうですね、私もそう思います」
三人は笑みを浮かべる。
『今回の事件を解決に導いたのは、四月に入社したばかりの加藤努。ヒーロー名称レッドウルフの活躍により、ブラッククロウ逮捕と研究所の解体に成功。
それと怪人クラブA市支部統括サイコ、幹部各員と構成員の逮捕に成功。これで、怪人クラブA市支部はこれで指揮系統が麻痺。
警察との連携を取り、残っている構成員達の逮捕を開始。順調に進んでいます、これで会見を終わりたいと思いますが質問があれば受け付けます』
『質問を宜しいでしょうか?週間A市の者です。我々の情報では加藤努氏は中途採用の40歳とお聞きしましたが、事実ですか?』
『はい、事実です。弊社に中途採用は珍しくありません』
『それともう一つ、あのサイコを逮捕に成功とありましたがそれは彼が特別な能力をお持ちなのですか?』
『彼には特に珍しい能力はありません、持っているのは肉体強化です。それと、誰にも負けないガッツと勇気です』
この言葉で会場はざわめいた。
『はいっ!質問を宜しいでしょうか?A市新聞の物です!加藤さんは無名のヒーローですがランキングはどうなるんでしょうか?』
『それとただいまヒーロー委員会と協議中ですが、彼の功績は計り知れない。今の段階で申し上げられるのはトップ30位以内は妥当と我々は見ています。
詳細は後日発表とさせて頂きます。それでは他に質問がないようでしたら、会見をを終了させて頂きます』
この会見で加藤努はこの能力社会に「レッドウルフ」として、鮮烈なデビューを飾る事になる。




