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株式会社ヒーロー  作者: ボサボサ
黒い狼と決別
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ブラッククロウ攻略その十三

頭が一瞬混乱した、どうして自分が読めない事が起きるのか疑問しか浮かばない。

この力で他人の思考が読めない事は今まで一切なかった。

それが今自分の目の前で起こっている、しかも身内と言う事もあり油断していた。

これが、自分の甘さだ。

昔から知っていると言う考えは捨てよう。昔から兄弟のように育ったと言う情は捨てよう。

昔からの同志と言う考えは捨てよう。昔から甘さは捨てよう。


「行くぞっ!部長っ!」

「はいっ!」


白牙と加藤の士気が上がり、サイコに向かい走り出す。


「はっ…、はっ…。あくまで歯向かうか…」


珍しくネクタイを緩め、眼鏡を投げ捨て目付きが鋭くなり先ほどより身体から発せられる淡い光が強くなる。

その瞬間赤い鎧が迫って来るがこれは読めていた事だ、問題はこの先だ。


「はぁっ!貴様達の思考などとっくに読めている!」


二人の行動を読み。高速で構え、拳を突き出す。


「ぐはぁっ!」

『腹部に衝撃を受けた為、破損を確認しました』


パワードスーツのアナウンスが耳に流されるが、それを聞き取る余裕は一切無い。


「はぁっ!」

「やはり来たかっ!一狼、何故私の邪魔をする!」

「人体実験何て、人がやる事じゃないだろがぁっ!」

「お前は何時もそれにこだわるな!お前は情に脆すぎる!だから、ヒーローになったんだろ!

かつての友の夢を叶える為に!自分と同じ境遇になっている人間を助ける為に!」

「たまたまそうなっただけだ!」


『やれ、部長!』


この言葉を合図に身体を動かす。


「くっ、またか!お前は何時も、私の予定外の事をする!」

「うぉぉぉぉ!」


加藤が力一杯助走を付け、飛び蹴りを放つが上段蹴りで相殺されてしまう。

その隙に白牙が拳で連撃を決める。


「それで私に当てるつもりだったか…。これで終わりだぁ!」


手から光の粒子で出来た件が出現して、それを白牙に向けて切り付ける。


「白牙さん避けてっ!」

「貴様!また、邪魔を!」

「部長っ!」

「ぐぁっ!」


白牙を庇って、光の剣をまともに受けてしまう。


『スーツに50パーセントの損傷を受けました。活動が制限されます』


こんな傷を負ったのは人生で二回目だ。

しかも一ヶ月で死んでもおかしくない傷だ、でも生きている。

自分でも不思議な位に、娘が見たら大騒ぎするだろう。

そうだ、ここで死ぬわけには行かない。


自分がこうして生きているのも、リストラをされたはずの人間がヒーローとしてこの場にいるのも奇跡だ。

死んでしまったら、「奇跡」は起こせない。


胸が熱くなる、心臓が生きろと騒ぎ出す。身体が今までに無い位に燃え上がる。


「な、な、何…、まだ生きているのか。しぶとい奴だ、だがなこれで終わりにしてや…」

「部長っ!俺が抑えてる!早くしろ!薬が切れそうだ!」

「はいっ!」

「そうはさせるかぁ!」


今までとは比べる事が出来ない位に身体が輝き出し、衝撃波が放たれる。


「「ぐぁっ!」」


衝撃波で二人は吹き飛ばされ、倒れこむ。


「はっ…、はっ…。これで私の勝…、まだ息があるのか!化け物か、この男は…。まぁいい、止めを刺すとするか。

貴様達は誇って良い、このサイコをここまで追い詰めたのだからな」

「ま、不味い…。ぶ、部長っ!逃げ…、ぐっ!」


男は静かに歩き出す、まるで狩りをしている獣のように獲物に向かう。


ボロボロの鎧を背負ったまま、瓦礫の壁にもたれかかりふと思う。

これで本当に死ぬのかと本気で弱気になるが、再び心臓が動き出す。

だが、身体が動かない。人生で身体をこれだけ酷使したのは始めてだ。


『加藤さん、大丈夫ですか?!応答して下さい?!』


耳に入って来る優しい声、だがその声に言葉は返せない。

口を動かす気力すら残っていない。


「これで終わ…、何だこれはっ!く…、頭の中に流れ込んで来るっ!」


突然頭を抱え、よろめく。


『加藤君、どうして君は何時も部下を説得できないんだ?』

『す、すいません…』


他人の記憶が映像として、頭の中で再生される。


『加藤さん、これでは契約は出来ませんよ…。もう一度、会社に戻って検討して下さい』

『ちゃんと読んで頂きませんか?期限は厳守しました!それにあなた方の言う通りに作成しました!

いったい、どこが駄目なんでょうか?どうか、もう一度目を通して下さい!お願いします…、お願いします!』


これはサイコの特徴と言っても良い、超能力を使用できる彼は人の頭の中を覗く事が出来る。

他人の思考は読む時はあくまで一方的だ、誰かの思考が流れて来るのは初めてだ。

見える事はあっても、見せられる事は無い。


『加藤君、このままではこの部署の業績は下がってしまう。君は責任を取れるかね?』

『す、すいません…。最善の努力はしているのですが…』

『良いか!私は努力の話をしているのではない!結果を出せと言ってる!理解してるか!

君はいったい何年この仕事をしているんだ!もう良い、下がって良い』


これは恐らく、株式会社ヒーローに入社する前の記憶だろう。

しかもこれは数十年前分の記憶だ。


『あの、僕と結婚してくださいっ!』

『は、はい…』


これはさらに前の記憶だ、若い男女は永遠の愛を誓う。


『良し、名前は真紀にしよう』

『君の名前は?』

『…黒牙剣』

『お父さん』

『邪魔するなら殺す…』


記憶だんだんと混在して来た、これはブラッククロウに自分の娘を重ねている。

これは同情と言う奴なのだろう、親心なのかサイコには不明だ。


「はっ…、はっ…、はっ…。奴にこだわるのはこう言う事か…」


近づいて来る男を霞む視界で眺める、すると頭の中に電波見たいものが流れて来る。


『君は特別な能力持っているみたいだね?この時代には珍しくないかな、でも君は特に特別な力を持っている見たいだね?』

『あ、あなたはっ?!ボスっ?!うっ!』


映像の中のサイコは頭は抱え、道の真ん中でうずくまり頭の中に黒い渦が流れ込む。

人の悪意、嫉み、嫉み、殺意、不満、欲望、憎悪。黒い物が自分の中にも流れ込んで来る。


「うっ…!」


吐き気がするくらいの物が自分の中にも流れ込んで来る。

今まで自分のして来た事が否定されているようだ。


優しさは弱さ、思いやりは弱さ、同情は意味が無い、気遣いは意味が無い。

人類は常に人の感情で動いて来た、人より上に行きたいと言う感情でだ。

その過程で、個人の嫌な部分が見える事がある。

それがこの黒い物だ、優しさでは何も変えられない。


それは良く知っている。いくら頭を下げたって結果は出ない、手柄を立てれば嫌味な上司に持っていかれる。


まるで今までの自分を見ている様だ。だが、同情はしない。


「はっ…、はっ…」

「まだ、立ち上がれるのかっ?!何故、そこまでして戦う!人助けしたって何もならないぞ!」

「関係ないっ!俺が助けたいと思ったから、助ける!それだけだっ!」


頭の中で何かが弾けて、ボロボロの身体に血が回り始める。


「はっ!何が助けたいから助けるだっ!貴様はただの馬鹿だっ!ぐっ!」


溝に拳が入り、お返しに顎に拳を返す。


「ぐっ!」


今までの気が弱い係長と180度違う、その鋭い眼光は獲物を狩り取ろうとする狼の目だ。


「くっ!まだ倒れないのか!」


穴だらけの鎧から出て来るのは刀のように鋭い殺気だ。それをサイコは肌で感じていた。

恐れている、こんな無名のヒーローに少し前までサラリーマンだった男にだ。

仮にも統括を任されている人間が、全く冴えない男に。


「たったそれだけの理由で自分の命が賭けられるな!たかががき一人のためにっ!」


完全にビビッているのが自分で解ってしまう。


「たかががきだって!ふざけるなっ!」

「うっ!所詮は子供の命だ!利用価値が無ければ、ただのゴミだ!」

「ぐっ…。子供の命はゴミじゃないっ!」

「自分の娘と重ねて、同情しているだけだっ!自分でもとっくに気づいているだろ!貴様はただ、同情して浸っているだけだ!

同情だけでは何も変えられない!私はそれを知っている!」

「同情して何が悪いっ!心配して何が悪いっ!子供の心配するのは大人として当たり前だろがっ!」

「ぐっ!馬鹿な…」


勝負は決した、サイコが地面に膝を付いた。


「うぉぉぉぉぉっ!」


加藤に突然異変が起きる。獣のように遠吠えを始める。


「ぶ、部長っ?!不味いっ!くそっ!身体が動かない…」


そして、サイコの身体を掴みかかる。


「そこまでだ、加藤君」


突然、ミスターが姿を現す。

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