ブラッククロウ攻略その十二
これは十年前の話だ。
「新しく家族になる、白牙一狼だ。仲良くするんだぞ、サイコ」
「はい。解りました、先生。よろしく白牙君、僕はここで手伝いをしているサイコだよろしく」
その青年は嫌味が無い、爽やかでそよ風が通りそうな笑顔で自己紹介をする。
「白牙、呼吸を整えて!違う!」
「ちょっ、ちょっと、待ってくれよ~。はっ…、はっ…。そんなに早く走れない…」
「そんな事じゃ、立派なヒーローにはなれないぞ!ほら、立ち止まるな!」
「別に俺はヒーローになりたいわけじゃ…」
「口答えしない!良いから、もう三週行くぞ!」
その光景はまるで兄がわがままな弟を躾けている様子に見える。
その光景の中に二人はいた。だが白牙が二十歳になった頃、サイコは突然姿を消してしまう。
この二人が過ごした十年間は実の兄弟のようで、ミスターも二人になら会社を任せても良いと本気で考えていた。
実の息子のように二人を育て、鍛え、自分の分身のように考えていた。
その矢先に行方不明になり、ずっと行方を捜していた。
「何で、ここにお前がいるんだよっ!サイコ!」
「白牙、お前はこの世界の正体を知らない…」
「何、意味わかんねぇ事言ってるんだよ!」
「優しさでは何も守れないと知ったから、だから私はここにいる…」
珍しく白牙が感情を剥き出しにしている、それは当たり前の話だ。
自分の家族と呼べる人間が敵側にいるのだから、怒りが芽生えて当然だ。
「白牙さん、無事だったんですか?!」
「ぶ…」
白牙が加藤の声に釣られ、振り向くと強い衝撃で吹き飛ばされる。
「それがお前の短所だ、直ぐに集中力を切らす。だから、隙が生まれる」
サイコの両脇から手裏剣、クナイ、鎖が飛んでくるが空中に静止する。
「何っ?!これでも駄目でござるかっ?!」
「お前達は何も学習していない、私にそんな子供騙しは通用しない」
「くそっ!どうなってやがる?!」
この場にいる全員が思考停止する。
その場の物全てが動きを停止をする。
「忍者とシャドーは邪魔だな…」
時間が止まっているわけではない、その場全ての物理現象が止まって見える。
「ぐっ…、馬鹿なっ!完全に気配をけしていたのに!」
「あの野郎…、人の思考でも読んでやがるのか!」
二人の背中に重力が伸し掛かり、身動き出来ない。それどころか、段々と重力が強くなって行く。
「お前達はそこで大人しくしていろ」
「僕を忘れていませんか?」
アタックスーツの上段蹴りが顔にかする。
「ふん…、四強と言っても所詮は若造だ!」
「うっ!」
一瞬の所で衝撃波を交わし、体勢を立て直し構え直す。
「それでさらに攻撃して来るつもりか?無駄だ、私には当たらない」
「そんな事はやって見ないと解らないだろ!」
拳をサイコに向けて、放つが避けられてしまう。だが、これは解っていた事だ。
アタックには目的はこの次にある。
「俺を忘れてたなっ!サイコ!」
「何っ?!白牙だとっ!貴様らは同じ事しか出来な…」
白銀に輝く拳がすかした顔面に直撃し、数メートル吹っ飛ぶ。
これは完全にサイコの過信だ、仕掛けてこないと思っていた人間が自分に向かって来た。
『部長!今だ!』
「は、はいっ!」
脳内に白牙の声が響き渡り、その声のままに加藤はサイコに向かって走り出し、殴りかかろうとするが。
「調子に乗るなよ…」
「えっ…」
怨念の満ちた言葉を歌いながら立ち上がり、衝撃波が放たれ加藤は倒れてしまう。
「私に一発当てたくらいでいい気になるな…、生かして帰さん!」
その身体からは淡い光が発せられ、その表情は怒りが支配している。
「何だ、このエネルギーは…。今までこんな、怪人は見た事が無い!」
「不味いぞ、サイコは本気いで俺達をやる気だ…」
珍しく白牙の額に汗を浮かべる。普段は冷静で状況分析が出来るはずなのだが、かなり焦っている。
「ぐっ…、今のなって傷がっ!」
「白牙さん、下がっていて下さい」
「はっ!」
先ほどより強力な衝撃波が放たれ、周りのコンクリートがえぐれて行くがそれをアタックが交わしながら接近を試みる。
「はっ!」
拳を高速で放つが、その瞬間に消え背後を取られてしまう。
「雑魚が…」
「ぐはぁっ!」
そのまま、数メートル吹き飛ばされ倒れ込む。
「はっ…、は…、ぐはぁ!つ、強い…」
受けたダメージで口から吐血する。
「私に勝てると思ってたのか!」
倒れているアタックスーツの背中を残酷にも、踏みつける。
「ぐっ!」
「四強と言っても大した事なかったな!所詮は若造よ!ぐっ、貴様!」
踏みつけている隙に加藤がサイコに掴みかかる。
「白牙さん、早く!」
「くっ、放せっ!」
「うぉーーーっ!」
白牙が再び拳をサイコの身体に打ち込み、直撃する。
「ぐ…。これくらいで、倒れるかっ!」
「うっ!」
肘撃ちと蹴りで加藤が少し後ろに下がる、その瞬間に白牙が間髪入れずに反撃を入れる。
「貴様らの思考はとっくに解っている!」
「そうかよ!でも、複数同時には読めないだろ!やれ部長!」
「何…、ぐはっ!」
白牙の声で加藤がタックルを決め、見事に命中する。
「はっ…、はっ…。いったい、どう言う事が確かに思考は読んでいるはずだ!」
サイコはよろけながら、考えていた。どうして、あの二人の思考が読めないのか。
そして、一つ仮説に辿り付いた。それは白牙が何かしらの方法で思考を伝えているのだ。
それはテレパシーそのものだ、そんな事が出来るわけが無いと自分の中で否定を繰り返す。
だがその事に気づいても、もう二人の反撃は止まらない。
「はっ…、はっ…。行けるか部長?」
「は、はい…。大丈夫です!」
「そろそろ、反撃開始だ!」




