ブラッククロウ攻略その十一
少年の心情はただ両親の仇を討ちたかった、その相手は怪人クラブ代表ボスと呼ばれる男。
五年前、若干10歳と言う若さで孤児になり鴉に拾われ五年間育てられた。
その五年の間復讐の事だけを考えて生きて来た。
いや、そうでは無い。「復讐」をする事だけを刷り込まれて生かされた。
その結果がただの悪鬼へと変貌するが、少年の心にほんの少しの亀裂が生まれる。
それが株式会社ヒーローに入社したばかりの中途採用、加藤努。
少年はその男と出会い何かを思い出していた、父親の事だ。
ただの偶然だと思うが、父親と似ている。
しつこく聞いてくる性分も父親と似ている、それを微笑みながら眺めている母の姿も思い出してしまった。
ずっと忘れているふりをしていた、思い出すと辛いからずっと忘れていた。
胸が痛むと知っていると同時に「家族」の暖かさを思い出してしまうから過去に蓋を閉じた。
「くっ…、こんな時に」
黒い狼は復讐の第一歩として、A市統括の殺害を目指し統括がいる部屋に向かう。
再び、復讐心に黒い物を入れる。今は人の情などいらないと吐き捨てる。
ただ、今は仇を討つ事に集中する。ただ、恨みを晴らす為にこの力を使う。
この力は怪人クラブの研究所で遺伝子研究をしていた、両親が強引に自分に与えた力だ。
こんな力はいらなかったが、今は感謝している。その両親を殺した連中に復讐が出来る。
統括がいる部屋の扉の前に立ち、深呼吸をする。そして、扉を力一杯蹴りつける。
「随分、乱暴な来客だな。ブラッククロウ?」
「お前がここのボスか…」
「そうだが?私は怪人クラブA市支部統括サイコだ」
高級机に肘を付け、高級椅子に眼鏡のレンズを光らせ座る。
「そうか…」
お互い少し会話をした瞬間、ブラッククロウが一直線に高速で動く。
「確かにその高速移動は厄介だが、動きがワンパターンだ」
「なっ?!」
たった、数メートルの距離を初動も無しにブラッククロウの背後を取る。
その後背中に衝撃波を与え、壁を突き抜ける。
「ぐはぁっ!」
「所詮は子供の思考回路だな。目で追えない高速な動きで突っ込んでいっきに攻撃を叩き込む。
そんな事は力を使わなくても読める。それが通用するのは下っ端までの戦闘員だ、幹部達には通用しない。
それにお前はまだまだ発展途上だ、どうだ私の下に付かないか?今までより、良い暮らしをさせてやるぞ?」
「そんなものに興味は無い…」
「くっ…、いつの間に上に?!」
サイコが心地よい言葉を並べている隙に頭上に飛び、そのまま力一杯踵落としを決める。
その衝撃で地面に小さなクレーターが出来る。
「今のは油断をしてしまったな」
「くっ!ちょこまかとっ!」
自身が作り出したクレーターの中心で奥歯を噛む。
怪人サイコはいたって冷静に状況判断をしている。
それと彼の超能力がかみ合っているから、若い内から地方の統括に抜擢されたのだ。
「そろそろお終いにしよう」
「身体が動かないっ?!どう言う事だ?!」
「お前とのお遊びもこれでお終いだ。大人しく寝てろ」
「こんな事で止まるわけにはいかないんだよ!」
「な、何っ?!私の金縛りを自力でっ?!」
自分の力で敵の金縛りを解き、黒い狼は再び動き出す。
「はっ!」
正面から正拳を放つがひらりと交わされてしまう。
だが、そんな事はもう計算内だ。相手が自分の行動を読む前に連撃を叩き込めば良いだけの話だ。
「学習のない奴だな!貴様は!くっ!」
押され始めているのは明らかだ。このまま、ブラッククロウが間髪入れずに攻撃を続ければ勝機が見えて来る可能性かもしれない。
「俺はこんな所で止まっていられないだよ!父さんと母さんの仇を討つまでは!お前らのボスを必ず殺す!」
「何時までも付き合ってると思ったか?」
今さっきまで額に汗を浮けべていたのが嘘のように涼しい顔をしている。
「ぐはぁっ!」
吐血すると同時にブラッククロウが膝を地面に付ける。
「親の仇だと?ふん、下らない。そんな低俗な思考で私達に挑んでいたとはな、貴様はしばらくそこで大人しくしていろ」
完全に勝敗は決した、勝者は怪人サイコだ。
「黒牙君!」
「ん?ヒーロー達の一味か」
ブラッククロウが敗れたと同時に加藤達がその場に駆けつける。
その場に訪れた時に初めに視界に入ったのは黒い狼が地に膝を付き、敵に屈服している。
敵はこっちを小馬鹿にするように見ている、その姿はまるで本当にゲームに出て来る魔王だ。
「四強はどうした?お前達三下じゃ、私の相手は務まらな…」
「うるせぇっ!」
「くっ…、貴様はミスターシャドー。貴様は偵察専門ではなかったのか?」
「それはどこ情報だ?それにな、お前達の上から目線はもう聞き飽きたんぜ」
シャドーがいきなり殴りかかるが避けられてしまう、まるで行動を知っているかのように。
攻撃を交わしたその姿に一切の焦りは感じ無い。
それはこれから起こる出来事を事前に知っているからか、その光景を見ていた他の二人は呆然と見ていた。
「シャドー殿、うかつに手を出すな!相手は怪人サイコでござる!短気な所はお主の悪い所でござる!」
「そうだな確かに想像と違う男のようだな。偵察専門と聞いてもっと冷静だと思っていたが…」
「そうだな、俺は直ぐにかっとなる所が悪い所だな」
「何…?!何だこれは、影っ?!」
サイコの足元に影の手が掴み、その場から放さない。
「やれ!忍者!部長!」
「貴様、これが目的か!くっ、小癪な真似を!」
敵の額に一筋の汗が流れ、シャドーの掛け声で二人は攻撃を仕掛ける。
「それで?私の足を止めた所で何になる?」
三人はいったい何が起きたのか理解が追い付かなかった。
人間。誰でも、人が消えれば唖然とするのは当たり前の話だ。
それが今、起きたのだ。この世界がいくら超能力で溢れているとは言え、瞬間移動が出来る人間は稀だ。
「はっ!」
「今度は誰だっ!」
「自己紹介が遅れました、僕は株式会社ヒーロー所属アタックスーツです」
「貴様はA市支部の四強だと…」
「はい、僕は確かに四強です」
この会話の間に打ち合いをしていたが、サイコは平然と交わしている。
「俺もいるぞっ!」
「何っ?!」
「サイコ?!」
白牙が勢い良く、殴りつけるが間一髪の所でサイコは交わす。
「まさか、白牙!?」
数年ぶりに再会を果たす。




