実戦テストその三
胸騒ぎがする。これは勘だが、あいつが危機が迫っている。
頭の半分が本能で出来ていると自覚はしていないが、勘は人異常に働く。
気が付けば頭より、身体が動いていた。
「お、おい!戻るのか?!」
「あぁ…。あいつらが心配だからな」
自分が無謀で格好つけているのは十分に解っているが、ここでじっとしているのは納得できない。
自分が少年漫画の主人公で都合よく出来事を解決できると思っていないが、自分は「ヒーロー」だ。
どれだけ自分がだらしなくても、自分が決めた信念は絶対に曲げない。
「か、加藤さん!危ない!」
「自分の身を犠牲にして、酔ってるか?全然、かっこよくないぞ。ヒーロー野郎」
ミスターアタックが加藤を庇おうした瞬間に謎の男が襲う。
「ぐぁっ!」
「良いか?この世に正義の味方なんて、いないんだよ。お前らがやってる事は見世物だよ」
その冷たく、どす黒い悪意は身体が竦むほどだ。
この男も何かに怨みの感情が身体中から溢れ出している。
だが、ここで逃げるわけには行かない。確かにこの男の言う通りだ。
自分達の仕事は半分は見世物だ。自分をどれだけ世間に宣伝して支持を集められるかが重要だ。
その結果で給料が上がって行く。
このシステムに疑問を持った事はない、生まれた時からこの仕組みを見て来てそれが「常識」だからだ。
そして自分が成長してヒーローに憧れて、子供の頃からの憧れていた事をしている。
それが「常識」だからと疑った事はない、それに自分の中にある「信念」を疑う事はない。
「勝てない敵に立ち向かって、浸ってるのか?ナルシストめ…。だから、ヒーローっ言う生き物は嫌いなんだ」
「そうか?俺は嫌いじゃないけどな」
「貴様は!」
「白牙さん!戻って来たんですか?!」
「あぁ、気が変わったんでな」
何時ものように気だるく振舞うが内心ビビッている。
だがここで足が竦んで固まってたら、戻って来た意味がない。
それに今は月が出ている。
「お前…。一狼か?」
「その声は…、鴉?!お前生きてたのか?!」
「ちっ…、黒牙ずらかるぞ!」
その声で黒い二人は煙のように消えていった。




