尾行
ラーメン屋ほいほい軒に訪れた後日の事だ、珍しく白牙が低い声色で口を開いた。
「部長、昨日のガキの事だが」
「はい?」
「どうも、怪しい」
「やっぱりですか、私も同じ事を考えてました」
「お前も感じか…」
「はい、血の臭いが少し」
「何?臭い?まさか、部長…。その事は後で良い」
「あぁ、あのガキがあの店に通い始めたのは事件が起き始めた時期と重なる」
「それって、あの子が犯人って事になるますよ?!」
「いや、部長。まだ、犯人って確定したわけじゃない」
「それじゃ、どうするんですか?尾行でもするんですか?」
「そのつもりだ。ついでにミスターにも報告しておく」
いきなりの発言で少しばかり驚いたが、自分の胸のでもあの少年が犯人ではないか微かと思っている。
でも、今は断定出来る証拠は無い。
驚く所はそこでない、あの少年が黒い狼になり怪人を襲い続ける理由が解らない。
上司は復讐と推測しているが、自分の子供くらいの少年がそんな行動に出るのかが想像出来ない。
ただ、自分が平和ぼけをしているだけかもしれないが「子供」が「復讐」何て悲しすぎる。
これは自分の同情で独りよがりの感情だ。一番良いのはあの少年が犯人では無い事だ。
「それで、その少年の特徴は?」
「目に掛かる程度の黒髪と特徴の無い服装だ、今はそれしか解らない」
「そうか…。その少年はあの店に何時頃現れる?」
「そうだな、夕方の方が確実だな」
「良し、その少年を尾行。証拠を掴み次第、身柄を確保だ」
「了解」
立ち去ろうとした時だ。
「加藤君」
「はい?何でしょう?」
「試作機の方がどうだね?」
「あ~、相川ががんばってるので大丈夫だと思います。私は何もしていなんいので」
「そうか、なら良かった。それと、近い内に試験的に実戦データを取ろうと思っている。それまで、無茶をしないように」
「それって…」
その言葉を聞いた時は宙にも舞いそうな気持ちになった。自分もヒーローの仲間入りが出来る。
「部長行くぞ」
「はい!」
夕方になり、何時もの商店街を歩く。やはり、事件の影響で人通りは少ない。
この光景を見ていると、寂しくもなるが感傷に浸っている場合ではない。
今日の目的は黒い狼と思われるあの少年を尾行する事だ。願わくば、勘が外れますように。
「いらっしゃい!何だ白ちゃんか…」
昨日と同じ挨拶をすると、言葉を返す。
「店長、今日はあのガキは来たか?」
「いや、今日はまだ来てないな。それがどうかしたか?」
「来てないなら、良い。とりあず、半ラーメン二つ」
「おいおい、この店で揉め事起こすなよ?お前がそれを頼む時は何かある時だ」
「大丈夫だ、店には迷惑はかけない」
「店長さん、迷惑をお掛けします」
「あんた達の仕事は危ない事は知ってるが、あんま無茶すんなんよ」
客が少ない店内で会話をしていると、扉が開く。
「いらっしゃい」
その声に釣られ、その方向を見ると少年が現れた。
「ラーメン大盛りセット…」
「はいよ!」
少年は注文を口にすると、ただ黙って座っている。
その時だ、丁度テレビのニュースで事件の報道が流れている。
『ただいま、現場に来ています!見てください、この警官の数と犯行現場!
この警官の数は事件の凶悪さを現しています!』
レポーターは大げさに視聴者を煽る。今、全国で一番の話題の事件なのだから当たり前か。
本人が嫌でも現場に行かなくてはいけないが、テレビを見ている限りレポーターは報道している自分に酔っているように見える。
この見かたは捻くれているかもしれないが、少なからず優越感はあるはずだ。
「はい、お待ちど!大盛りセットね!」
少年は礼儀正しく、手を合わせる。
普通に食べて、あっという間に完食して。
「何時もありがとね!」
少年は会計を済ませ、店を出る。
「俺達も行くか…。店長、金はここに置いておくぞ」
「まいど、怪我すんなよ」
「ご馳走様でした」
店を出ると少年はさらに商店街に向かって歩いている。
二人は気配と臭いに気づかれない距離を保ちながら、尾行していく。
「いったい、どこに向かってるんですかね?」
「俺も知らん。ただ、昨日より血の臭いがきつくなってる」
二人が物陰に隠れながら、会話をしていると姿が消える。
「どこに行きやがった!」
慌てて、周りを見るが姿が見えない。完全に目標を見失ってしまった。
「俺に何の用だ?」
後ろから、冷たく鋭い視線が二人に突き刺さる。
「何?!」
距離は二メートル位離れている、向こうもこちらを警戒している。
「刑事ではなさそうだが。何故、俺をつけていた?答えろ」
「なぜ、俺達が刑事ではないと解った?」
「質問をしているのは俺だ」
「しょうがない。俺達は株式会社ヒーローのものだ」
「そうか…」
「はっきり言おう。現在、捜索中の殺人事件の最重要参考人でお前が上がってる。
大人しく投稿すれば、悪いようにはしない」
「投降?すると思うか?」
いきなり目が険しくなり、殺気が肌に刺さる。
両者が睨み合い。殺し合いが始まろうとした時だ、電話の着信音がなる。
「もしもし。解った」
電話を取った、その右手の爪は真っ黒な事に気づいた。
その瞬間、少年は煙のように姿を消した。




