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乙女ゲーム世界もの

転生したから傍観しょうと思ってたらヒロイン不在のお知らせ

作者: 花ゆき

 サクッと言っちゃうと、前世の記憶もってます。ちょうどアパートのお隣さんを見て、思い出しました。彼は鈴木青葉。えっと……、前世でプレイした乙女ゲームの登場人物です。鈴木さんが越してくると親から聞いてたけども、この鈴木かよ! 


 切れ長の目に、凍えそうな雰囲気、まさに彼です。前世ではお気に入りのキャラだった。好きなルートは別キャラだったけども。


 うん、分かってる。こんな話聞いてもアイタタだよね。でも私にとったら、またイベント見られるんじゃないかとワクワクしちゃってさ。私、佐藤ひなたは、傍観することに決めました! イケメンは遠くで見るにかぎるね!


 ヒロインの皆本陽香ちゃんが春吹高校に入学した時、物語は始まる。




 そう思ってた時期もありました。入学式、青葉くんとぶつかるイベントもなし、ナンパされてるサポートキャラをかばうイベントもなかった。おかしくないか……?


 そして生徒名簿を調べて、私は震えるのである。ヒロイン、入学してない! 嘘でしょ。物語が始まらない!


 がっくり肩を落としながら帰宅していると、桜川女子の制服を着たヒロインちゃんを見かけた。あぁ、逃げちゃったのね。気持ちは分からんでもない。むしろ、分かりすぎて転校したい。


 攻略対象が人外な学園なんて、怖すぎる。バッドエンドになってしまったら、監禁されたり、下手したらずっと一緒に生きるために仮死状態にされたり、人外にされたり、殺されたりしてしまう。ヒロインと攻略対象との恋愛模様を楽しみに入学したのに、もはやそれがないとなっては無理無理。



 それなのに、家に入ろうとしたら彼に声をかけられました。


「あっ、ひなたちゃん。ひさしぶりだね」

「ひ、ひさしぶり。鈴木くん」

「あれー? おっかしいなぁ。僕らお隣さんだよね? 小さい頃は青葉くんって呼んでたよね? 青葉って呼べよ」


 壁に囲われるようにして、見下ろされる。

 ひぃぃぃ! すごまないでください! あなたがすごむのはヒロインです!

 屈しないヒロインに惹かれていくのが、本来の筋書きで……!


「ねぇ、ひなた? 呼んで、あ・お・ばって」


 耳に吹きこまないで下さい! 甘い声禁止! 孕んでしまう!


「あお……ば、くん」

「うん。よくできました。せっかく君を追いかけて同じ高校に入ったのに、冷たいからさ。ショック受けちゃった」


 追いかけ……て、ですと!?


「暖めてくれる? 暖めてくれるよね。ひなたのせいだし」

「どうして、ただ隣ってだけじゃない」

「なら、どうしてひなたは僕を監視してたのかな。気になるから近寄ろうとすると、君は距離をおくし。だから、気になって。君のこと観察してたら、好きになっちゃった」


 背筋がゾッとした。私のしてきたことが、すべて裏目に出ている。


「暖めて」



 彼に無理やり抱かれました。最中に荒ぶった彼が吹雪をおこしたときは、死を覚悟しました。気づけば彼女の座についてました。はい、攻略対象は人外ですから、彼は雪男です。最悪の場合バッドエンドになると、ずっと一緒にいようねと凍りづけにされて仮死状態にされます。


 あれ? おかしいな。


「ひなた? 何考えてるの。僕のことだけ考えてて。さもないと、氷漬けにするよ」

「青葉くんのこと考えてたんだよ」

 

 ろくでもない言葉が聞こえてきたので、あえて媚びるようなことを言って護身します。すると、前世では見覚えのある画面が出てきました。


▼ 鈴木 青葉を攻略しました!


 あれ? どうしてこうなった?




 私は失念していた。攻略対象ごとに、主人公の名前を変えられるシステムだったことを。そのうちの一人、鈴木青葉は、雪男であるために暖かいものに惹かれる。だから彼攻略時の、ヒロインのデフォルトネームは皆本『陽』香。しかし、私が佐藤『ひなた』という名前だったばかりに、ヒロインが変わってしまったようだ。ポップアップ画面があらわれたことで、気づいてしまった。


 嘘でしょー!? 


 脳内で名前の由来――生まれた日がいい天気だったから、『ひなた』って名づけたのよ――と母の声がよぎる。


 しかも、私はヒロインと鈴木青葉の観察を楽しむつもりでいたので、攻略対象は彼しか会っていない。お隣さんだから、会ったのは仕方ない。


 彼はヒロインが他の男と知り合うのも、話すのも好まない。よって彼を攻略するとしたら、一学期中は彼以外とは合わないようにしなければならない。狙って行動したわけでもないのに青葉ルートに入ってしまった。その上、高校に入るまでの好感度も加算されたようで、短期攻略までしてしまったようです。そんな馬鹿な。

まさかのヒロインがいないという乙女ゲームものを書いてみたくて、書きました。 描写漏れがあったので、加筆しました。

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