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注意!
この小説は下記の現在作者が連載中の小説の番外編です。
「bird servant」
http://ncode.syosetu.com/n7211bh/
読んでも読まなくても多分話はわかります。
・最初に言っておきます、バットエンドです
・暗い描写、少し病む描写が入るかもです
以上がOKの方は本文へどうぞ。
私の目の前の机には黒のノートパソコンと散らばったメモ用紙、その横には山のように積み上がった書籍の数々。手を動かすたびにかすかに震えるこの本の山もそろそろ整頓せねばならない、一段落したら少し手をつけるとしよう。
自身で打ちこむ単調なタイピングの音と背中から窓越しに射す日差しだけがこの部屋を満たしていた。
自己紹介が遅れた。私の名は『佐々木よしかず』である。
なんで名前がひらがななのかという意見が聞こえてきそうだが、これはペンネームだ。いわゆる偽名というものである。
本名は笹木義一。名字は漢字は違うが読みは多少アクセントは変わるが同じ「ささき」。名前は「よしかず」ではなく「ぎいち」と読む。いたって普通の名前だ。
そして『佐々木よしかず』は今をときめくミステリ―作家である。自分で言うのも何だが、マスメディアや周囲の人物らが掲げる一般見解を述べているだけだ。実際に出版する本はいつも売り切れ、何度も重版がかかる。奇抜なトリックとユーモアあふれる推理、それが人気に火を付けたらしい。私個人はただ好きなもの、書きたいものを忘れぬうちにつらつら書いているだけなのだが。
だが、この頃どこか物足りないのである。
私は現在、いつものように俺は執筆活動に勤しんでいた。
現在画面の中にいる探偵は関係者を集め、まさに謎解きの最中だ。
アイデアは浮かぶ。
言葉が出ず、筆が進まない。ということはまったくない。
仕事をこなし締め切りもきちんと守っている。というより一度も原稿を落としたことはないし、催促をされるほど遅れたこともない。スランプではないと思うのだが、書いていて何かが物足りない。そんな気持ちを抱えたまま、書き下ろしを頼まれていた小説のクライマックスを書き進める。
「何だろうなァ……」
思わず独り言が出てしまった。
まったく、このわだかまりは何なんだろうか。考えても考えても見えてこない。これこそ自分の作品の探偵に解いて欲しい謎である。
そんなことを思っているうちに小説の中では事件が解決してしまった。自分の悩みと比べてなんとあっけないことか。
きっと今自分はつまらない、とばかりの表情をしているに違いない。
「義一さん」
軽いノックと共に自分の呼ぶ声が聞こえ、顔を画面から離す。もちろん誰かなんて思うこともない。
「悠子。何か用か」
妻の悠子である。腰ほどある長い髪を軽く邪魔にならない程度にまとめ、柔らかな色合いのワンピースを着こなしていた。
悠子は私が仕事中の時は気を使って顔を覗かせない、だからこういう時は電話や来客の知らせに来た時だけだ。
「義一さんに会いたいという女性が……作品を見てほしいそうです」
「作品を?」
案の定、来客のようだ。それも今時珍しい持ちこみ。
持ち込みというものが別段希少なわけではない。本来は出版社を相手にするもので、昔ならざらにあったろうが現在で作家に直接というのはほとんど聞かない。
「お前のことだから客間には通したんだろう?」
「はい。……いけなかったでしょうか」
「いや、手間かけてすまないな。もうすぐ小説が書き終わる、すぐに行くよ」
「ではそのように伝えてきますね。すみませんが私は今から出かけますので、あと宜しくお願いします」
普段より明るい色合いだと思ったらそういうことか。何処に行くのかと問いかけると「義一さんの担当の方と御一緒に書籍店に行ってきます」と返って来た。大方、今書いている小説が発売された際何処に並べてもらうかの交渉に行くのだろう。
悠子は失礼しますと一言付け加えて、最初と同じく音があまりしないようにやわらかく扉を閉めた。
ふうと息を吐く。悠子のことではない。来客のほうに不満がある。
いくら自分が仕事が早いと言っても、暇ではないし都合というものがある。せめて連絡の一つでも入れてから来てほしかった。
仕方なくすばやく次回に続く言葉を書き執筆を終え、重たい腰をあげた。
はじめましての方、はじめまして真琴と申します。
他作品でお会いの方はごめんなさい、懲りずにまたやらかしました。
今回は最初に書いてありますよう、おそらく暗いお話になります。明るくなくてすみません……。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
またこの番外編掲載中は「bird servant」の更新は(ぶっちゃけ今でも停滞中なのですが)、ストップさせていただきます。ご迷惑おかけします。