ヌヴェル02 奇蹟の古時計
「これが、100年動き続けた古時計ですか?」
私は、町の広報誌の記者。グッドマン家の居間に置かれた大きなノッポの古時計の前にいる。
町の広報誌は、他愛のない出来事を取り上げては、ほのぼのとした情報を町民に届けている。
今日は、グッドマン家の当主デニーグッドマンと一緒に100年生き続けた古時計の取材にやってきた。
時計の側面には、「この時計が、愛するデニーとともに、100年生き続けますように」と書かれている。
執事「私の先々代が執事のとき、グッドマン様がお生まれになり、そのとき、この時計がやってきたのです」
私 「やってきた?買ってきたではなく?」
執事「ええ、やってきたのです。先々代が書いていたグッドマン史記がありますが、そこに“やってきた”と書かれています」
童謡“大きな古時計”を彷彿とさせる歴史を持つこの時計。確か童謡では、“買ってきた”はずだったが。
私 「それから、当主が生きられた100年の間、この時計は動いていたんですね。で、当主が亡くなられた時期に合わせるかのように、動きが止まった」
執事「いえ、まだ動いています」
私 「あーはいはい、ですね。確かに動いてる。当主が亡くなられたのは、2年とちょっと前ですよね?じゃあ、102年とちょっと動いていると?」
執事「2年と24日前です、亡くなられたのは」
私 「では、時計が長生きしているのか」
執事「グッドマン史記を見ますと、グッドマン様は、2年と25日、海外で暮らされており、その間この時計を休ませていたということが書かれています」
私 「ということは、その期間分、動き続けているということかな?」
執事「そのようです。なんといいますか、時効のような」
私 「では、明日もう一度来させてもらおうかな。時計の動きが止まるかどうか、これは面白い記事になりそうだ」
執事「私も期待しているのです。不謹慎ですが」
私 「やはり、時計の動きが止まるか、どうか?」
執事「いえ、どこへ帰っていくのかと・・・」




