詩: はみ出しが個性だった
掲載日:2026/03/04
わたしは大学のサークルで
エリック・クラプトンのフレーズを
指先に血がにじむまで
何度も何度もなぞりました
完璧に真似できたと思っても
必ずどこかがずれていました
音の出だしが少しだけ遅れ
ビブラートがわずかに浅く
リズムの呼吸がほんの少し違います
「まだまだだなあ」
そう思っていたのに
ある日 セミプロの先輩が笑って言いました
「そこだよ。
その“ずれ”が、お前の声なんだ」
わたしは初めて気づきました
無理に個性を探さなくていい
自分が憧れた音の中に
自分だけの影が
いつのまにか差し込んでいたことに
わたしは一流の音を真似し続けています
完璧を求めるためではなく
はみ出す部分に出会うために
その“はみ出し”こそが
いつか誰かの心を震わせるわたしの個性




