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無者戦記  作者: モっさん
第一章 新しい世界
6/7

間話 父の行方

 その男の名はヴィディア・フェイトリスという。

 畑仕事に精を出し、真面目に働き妻と子を養う、どこにでも居そうな一人の父親だった。

 ある日、いつものように仕事から帰ると、家には妻の亡骸と黒い装束に身を包んだ二人の男の死体が転がり、息子は消えていた。


 男はただ、呆然と立ち尽くしていた。


 二、三時間ほどだった後、男は突然剣を手に取り、指輪を左手の薬指に嵌め込んだ。

 その指輪には、全てを吸い込む様な深い緑色の小さな宝石が一つ留められていた。


 その様相は、二、三時間前の父親の姿では無かった。


 顔には青筋が立ち、剣を握る腕には血管が浮かび上がり、その突き刺すような鋭い視線は目の前のある男を捉えていた。


「おいおい、そんな怖い顔すんなよ。

 俺たち、昔は"仲間"だっただろ?」

 黒い装束を見に纏った男が陽気に話す。


「何故リディアを殺した?ヴィクターはどこだ?」

 ヴィディアは声を荒げる。


「リディア?……ああ、お前の奥さんね。

 忘れちまったのか?俺たちには規則(ルール)があっただろ?

 人を消す時は家族全員消す規則(ルール)。今日は、お前さんが消される番だってことだよ。ガキの方は邪魔が入って殺れなかったがな」


 男がヴィディアの方へ歩き始める。


「俺を狙う理由はないはずだ!」


「あんま怒鳴るなよ、似合わねえぞ。狙う理由?そんなもん知るかよ。俺は"あの御方"にやれと言われればやるし、やるなと言われれば何もしないさ」

 

 刹那、男がヴィディアの方向に踏み込み、剣を鞘から抜刀した。

 

 鋭い剣戟が響き、斬撃が家を切り裂く。


 十数回ほど、互いの剣が交わり、弾き合った頃、ヴィディアの影から別の黒い装束の男が飛び出し、背後から短剣をヴィディアの胸部に突き刺そうとする。

 しかし、ヴィディアは後ろを見ることなく、無駄のない動きでその男の首を蹴り飛ばす。

 そして、仲間だった男の左肩に一撃を加える。


 感域拡張の"賜物"持ち、想像以上に手強い……

 一度引くべきか……


「空間よ、歪め、転移(ディメンシフト)


 男は逃げた。


 父は、妻を埋葬した。

 そして、復讐の旅に出た。

 子を探すことはしなかった。

 それが、子の危険につながると知っていたから。


 

 

 


 


 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 


 


 


 

 



 

ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

週に2から3話ほど投稿していく予定です。

リアクションや感想などをしてくれると嬉しいです☺️


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