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空飛ぶ絵筆

作者: 藤乃花

空を染めてるアキアカネ


夕闇迫る遊歩道を、勤務を終えたサチさんはゆっくりと歩く。


工場勤めのサチさんからは、今日の日の『疲れ』の匂いが仄かに漂っていた。 


労働勤務時間朝9時~夕方5時、週五日勤務のサチさんにとって、この帰宅時間がささやかな幸せ時間である。


(空が紅い……辛かった今日が終わる。

だけど、明日もまた、工場の仕事……繰り返しの日々がしんどい)


疲れがたまった顔で夕焼け空を眺めながら歩いていると、赤トンボが一匹空を泳ぐのが見えた。


人間の疲れなど知ったことかと悠々自適に飛ぶ赤トンボが、サチさんはに羨ましく思える。


(いいなあ……トンボは、羽根があるモノは飛べるから、いいなあ……)


まあ、飛べるからと云っても、完全に良いのかどうかは置いておいて、兎に角今のサチさんは何処か遠くへ逃げたい……と思っていたのだ。


(疲れた、しんどい……一体いつまでこんな生活続くんだろ)


ー働くのが嫌なら、見合いでもしなさい。

ホラ、この人なんか良いわよ、ワイン会社の代表取締役、結婚したら好きなように贅沢出来るわよ‼ー


母が持ってくるのは、どれも経済的に恵まれた人のお見合い写真ばかりだ。


道理と云えば道理だが、サチさんはやはり、金銭等ではなく気持ちがあっての結婚を望んでいる。


(他の生き物は、息が合えば結ばれる……羨ましい)


赤トンボを見詰めるサチさんの目には、紅く染まる世界が夢のように映っている。


ふと、赤トンボの尻尾(?)の先が、サチさんには空を染めているように見えた。


(空を染めてる?

トンボが尻尾の先から、夕焼けの色を出してるみたい……!)


思わずサチさんの手がズボンのポケットから端末を取り出し、赤トンボを撮影していた。


夕焼け空を飛ぶ赤トンボの動画をサイトにアップし、短いながらも書き込みを添えた。


『赤トンボ*尻尾の筆で*空を塗る』


(この俳句、何処かの歌人さんが見付けてくれたら良いなあ)


等と、そんな気持ちを抱きながら、サチさんは暫くの間夕焼け空を飛ぶ『空絵師』の姿を視界に留めていた。
















大昔、藤乃がとある公募に投稿し、落選した俳句を物語にしてみました


赤トンボの尻尾(?)が筆に見えたので、なんとなく書いたものです


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