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キックオーバー  作者: 埴輪庭


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第13話「甘々」

 ◆


 クリスマスイブの告白の翌日。


 冬休みは26日からということで、学校全体に浮かれた気分が広がっている。


 が、春斗と美香は変わらず図書室で勉強していた。


 宿題を片付けているのである。


 それはそれとして、以前とは違う点がいくつかあった。


「坂登君、ここ教えて」


「ん? ああ、これは……」


 二人の距離が、明らかに近い。


 肩が触れ合うくらいの距離で、問題集を覗き込んでいる。


「なるほど、そういうことか」


「理解早いな」


「だって、坂登君の教え方上手だもん」


 美香の素直な褒め言葉に、春斗は照れくさそうに顔を背けた。


「別に、普通だろ」


「また照れてる」


「照れてない」


 そんなやり取りをしていると、図書室のドアが開いた。


「あ、いたいた!」


 入ってきたのは、クラスメイトたち数人だった。


「おい坂登! 佐伯さんと付き合い始めたってマジ?」


 直球な質問に、春斗は眉をひそめた。


「なんで知ってんだよ」


「そりゃ分かるって。急に仲直りして、しかもめっちゃラブラブじゃん」


「ラブラブって……」


 春斗は否定しようとしたが、美香が口を開いた。


「はい、付き合ってます」


 堂々とした宣言に、クラスメイトたちは歓声を上げた。


「やっぱり!」


「おめでとう!」


「坂登も隅に置けないなー」


 春斗は居心地悪そうに身を縮めた。


 こういう注目は苦手だ。


「うるさい。勉強の邪魔だから出てけ」


「相変わらずだなー」


 クラスメイトたちは笑いながら出て行った。


 最後に一人が振り返る。


「でも、良かったな。坂登も佐伯さんも」


 ドアが閉まり、再び二人きりになった。


「恥ずかしかった……」


 春斗がぼやく。


 美香はクスクスと笑った。


「でも、隠す必要ないでしょ?」


「それは……まあ」


 春斗は言葉を濁した。


 正直、まだ恋人という関係に慣れていない。


 でも美香と一緒にいられることは、素直に嬉しかった。


「ねえ、坂登君」


「ん?」


「私たち、同じ大学目指そうね」


 美香の提案に、春斗は少し考えてから答えた。


「……分かった」


「本当? 約束だよ」


「ああ」


 小指を差し出してくる美香。


 春斗は苦笑しながら、指切りをした。


 年が明けて、1月。


 共通テストまで、あと少し。


 春斗と美香は、より一層勉強に励んでいた。


「坂登君、最近すごく集中してるね」


「当たり前だろ。約束したんだから」


 春斗の真剣な横顔を見て、美香は嬉しそうに微笑んだ。


「私も頑張る」


 そんな妙に甘い空気を漂わせながら、2人は受験勉強に取り組んだ。


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