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第1話「俺」

 ◆


 自分が何でこんな性格なのか正直よく分からない。


 物心ついた時から俺は他人と同じことをするのが死ぬほど嫌いだった。


 皆が右と言えば左に行きたくなる。


 流行りものと聞けば虫唾が走る。


「これが常識」と言われれば、その常識とやらをぶち壊したくなる。


 小学校の時、クラスで人気のアニメがあった。


 皆が夢中になって話している。


 俺も実は見ていて、正直面白いと思っていた。


 でも──


「あんなの何が面白いの?」


 そう言ってしまった。


 クラスメイトたちは呆れた顔をして、俺から離れていった。


 当たり前だ。


 中学の時、修学旅行の班決めがあった。


 仲良しグループで固まろうとする皆を見て、俺は手を挙げた。


「一人でもいいですか?」


 当然却下された。


 でも、無理やり入れられた班でも俺は徹底的に和を乱した。


 なんでそんなことをするのか? 


 自分でも分からない。


 ただ皆と同じように振る舞うことがどうしようもなく気持ち悪いんだ。


 別に注目されたいわけじゃない。


 特別でありたいわけでもない。


 ただ流れに乗ることができない。


 乗りたくない。


 乗ったら負けだと思ってしまう。


 そもそも勝ち負けなんかないのに。


 父さんにも母さんにも、何度も言われた。


「春斗、もっと素直になりなさい」


「友達を大切にしなさい」


「協調性を持ちなさい」


 分かってる。


 頭では分かってるんだ。


 友達がいた方が楽しいだろう。


 皆と仲良くした方が生きやすいだろう。


 素直になった方が幸せだろう。


 でも、できない。


 体が、心が、拒否する──まるで、同調することでアレルギー反応を起こすみたいに。


 高校受験の時もそうだった。


 担任に勧められた高校があった。


 俺の成績なら十分合格圏内。通いやすくて、進学実績も良い。


 クラスメイトの多くもそこを受験する。


 だから俺は全く別の高校を選んだ。


 少し遠くて誰も行かないような高校を。


「なんでわざわざそんな……」


 母さんは困惑していた。


 俺も説明できなかった。


 ただ、皆と同じ道を歩くのが嫌だった。


 それだけだ。


 結果その高校でも上手くいかなかった。


 一年の冬、些細なことでクラスメイトと衝突した。


 いや、些細じゃなかったのかもしれない。


 俺の態度が皆の我慢の限界を超えたんだろう。


 完全に孤立した。


 まあそれとは関係ないが、親の転勤で俺は転校することになった。


 新しい高校。


 新しい環境。


 でも、俺は変われないだろう。


 変わりたいとは思う。


 時々、無性に。


 教室で楽しそうに話している同級生たちを見ると、胸の奥がチクリと痛む。


 ああいう風に自然に人と関われたらどんなに楽だろう。


 でも次の瞬間には思ってしまう。


『群れて何が楽しいんだ?』


『くだらない話で盛り上がって、バカじゃないのか?』


 そんな自分が嫌になる。


 でも、止められない。


 これはもう病気みたいなものだ。


『逆張り病』とでも言うべきか。


 治療法は分からない。


 というか、治す気があるのかも怪しい。


 だって皆と同じになるくらいなら──孤独な方がマシだと、今でも思ってしまうから。


 明日からまた新しい学校だ。


 県立東雲高校。


 きっとまた同じことの繰り返しだろう。


 孤立して、浮いて、問題を起こして。


 分かってる。全部分かってる。


 でも俺はきっとまた逆張りをする。


 皆が右と言えば左に行く。


 病気なんだ、俺は。


 頭がおかしいのかもしれない。


 お、大人になりたい!!!!


 でも無理!!!



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