第7話
「……本当の所、『そういうの』の良さがよく分からないんだよねぇ」
女の元に歩み寄りながら、ジャックは呟く。女の身体は切って溢れた血液や鬱血、怪我による腫れ等で見るも無残な状態だった。元の白い肌や可愛らしい顔も、全て台無しだ。
「仕事を円滑に行う為に、色々行ったことはあるけど」
輝かんばかりの豊かな長い金髪や、目の空に浮かぶ鈍色の目だけは、自身のものだ。しかし、ジャックの本当の身体は、ただの案山子だった。肉の腐った死体に、泥や藁を纏わせ、固めたような身体だった。
だから、既に生身の人間でないジャックには、生身の人間の感覚が全く以って理解できなかった。
そして、ジャックの本当の顔は、泥や藁の纏わりついた、ただの骨だ。いつもの整った顔や、その姿は本物ではない。金を払って、その為に作られている人間の皮を買い、綺麗に被っているだけだ(感覚も魔法という不思議なパワーで繋がっているので、問題が生じた事はない)。
その為に、見た目など、繕えばどうとでもなるものだと考えている。金さえ払えば、見るに耐えない醜女も、絶世の美女になる。だから、ジャックは見た目の良し悪しなど、どうでも良かった。
「さ、玩具はもう楽しませてくれないようだし……さっさと棄てちゃおうか!」
さあ仕上げだ、とばかりに、にこりと笑みを浮かべ、スーツの懐から古めかしいデザインの銃を取り出し血塗れで動かなくなった女に向けた。
——その時、
「止めろっ!」
見知らぬ男が、2人の間に割って入った。
——誰だ。……本当に、最近は不法侵入が酷くて困る。
「……この廃墟はオレの土地だよ。誰が何を言おうとも、此処ではオレのルールが罷り通る。部外者は引っ込んでくれないかな」
にっこりと笑みを浮かべて、ジャックは不法侵入者に声を掛ける。大変穏やかな声色で、優しーく声をかけているが、ジャックは現在返り血塗れだし、内心はブチ切れる寸前だった。全く以って、穏やかではない。
ジャックの言葉を無視して女の方へ駆け寄った見知らぬ男は、
「可哀想に……今、治してやるから」
と、血が服に移るのも構わずに、女をそうっと丁寧に抱き抱え、手を翳した。
『……ぅ、』
ぽぅ、と優しく灯る光が、折角、ジャックが手心を加えて手加減に手加減を重ねてじっくり嬲った女の怪我を治して行く。
何だ、この状況。意味が分からずジャックは少し頭が痛くなってきた。