表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Vogelscheuche  作者: 月乃宮 夜見
クソッタレな案山子
7/39

第6話

扨々(さてさて)、オレの住処を穢した罰を、」

『——!』


 ジャックの言葉を遮り、女は叫ぶように語り掛けた。


「——今、何て言った?」


ジャックは口元に笑みを携えたまま、目を細める。それを好機と見たらしく、青ざめたままであったが、女は再び口を開く。


「……なるほど、『やらせてあげるから、見逃して』ってコトだね?」


女は必死にジャックの足元に縋り付いた。


「——その顔、可愛いし……ねぇ」


ジャックは女と目線が近くなるようにしゃがみ、女の顔を見る。


「うーん……確かに最近は忙し過ぎて、『そういうこと』もあんまりなかったからねぇ」


 そっと手を伸ばし、柔らかく白い頬に長い指を這わせた。そうすると、女はうっとりした表情で見上げ、ジャックの鈍色の視線と交わった。


ジャックは頬を摩った手をそのまま髪の方へ滑らせ、


『っ!』


頭頂部の髪を、強く掴んだ。


「莫迦な事を言うんじゃないよ?」


驚きで歪む女の顔に、自身の顔を寄せ低く答える。仄暗い鈍色の目が、女を射抜いた。


「誰が、君みたいなアバズレを相手にしたいと思うかなぁ?」


女の髪を掴んだままジャックは身を起こし、女を引き摺り上げる。


「まあ、確かに君はそこいらの花売りよりは、いい顔はしているよ。……でもねぇ、顔なんて、金さえ払えば如何とでもなるんだよ」


青ざめる女は謝罪の言葉を吐く。


謝罪(そんなの)なんて、どうでもいいんだよ」


暴力(いま)が一番楽しいからね、とジャックは愉悦に歪む顔を隠す事もせずに掴む手を少し持ち上げる。


「その顔、二度と褒められないぐらいに、ぐちゃぐちゃに潰してあげる、よ」


勢いをつけ、ジャックは女を顔から床に叩きつけた。この廃墟の床は板張りの板が完全に腐っており、全く使えないので基礎の石が剥き出しになっている。


『——ぁっ、』


強く床に叩きつけられた衝撃で、女の体が跳ねる。何かが折れた音が聞こえた。


「そうすれば、二度と襲われることもなくなるんじゃないか。オレってなーんて親切なんだろう!」


 ジャックは芝居がかった動作で手を広げ、オレってば優しいよねぇ? と転がる女に笑いかける。


「さあさあ、もっと鳴いてみせてよ」


 最中の時みたいにさ、と、喘ぐ女の腹に容赦なく蹴りを叩き込む。


『ぁ、がっ!』


口の端から泡を吹く女はそのまま転がり、壁に背を強かに打ち付けた。


「まだまだ足りないんだよ、オレをもっと楽しませて、ほら」


 女を乱雑に掴み、床に放り投げる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ