第17話
「……やけに転がる死体が多いな」
喧騒から離れる為に裏路地に入ったが、なんだかいつもと様子が違う、とジャックは違和感を覚える。例えば今、革靴で踏み付けた豚のような男。
「ん、彼は……確か」
ここから少し離れた区画を牛耳る組織の幹部だった筈だ。とある武器のルートを頂戴しようと下っ端に成り済まして潜入した際に、散々怒鳴り散らしていた姿を覚えていた。
「その周辺のは、部下達……かな」
幹部だった男は、まだ辛うじて姿が残っているが、周辺に転がる肉塊達は原型を留めておらず、誰だったのか、何人居たのかすら、全く判らない状態だ。
煉瓦の壁に凭れ、割れた頭蓋から脊髄液を垂らす遺体は、ついこの間に薬品製造についてやり取りをしたモグリの医者だった。白く肥った蛆が食い破った腹から溢れている。
「……何か嫌な予感がする」
足元で艶々とのたうち回る蛆を、踏み潰した。
×
少し開けた所に出ると、ジャック左の手を少し上に掲げ
「『さあ、みんな。少し手伝ってくれるかな?』」
はっきりと発音した言葉に、自身の持つ唯一の魔法を込める。魔力の乗った言葉は風に乗り、周囲に拡がっていく。ジャックの魔法、Damn Scarecrowには決まった詠唱方法は無い。ただ言葉に魔力を込めるだけで、協力してくれる『害獣』達を呼び寄せるのだ。
scarecrowの癖に、逆にその類いを呼び寄せる。案山子の姿を随分と馬鹿にしてくれるクソッタレな魔法だと思うが、情報収集には大いに役に立つので存外気に入っている。
しばらくして、複数の烏や黒猫、鼠達が現れた。つい少し前までひよっこだった動物達は随分と貫禄を持ち、新しく見る顔が沢山増えた。周囲の変化が乏しかったジャックは、動物達の入れ替わりで随分と長く時が経っているのを知る。
「ねぇ君達。今回のこのお祭りがなんだか様子がおかしい気がするんだけど……。何か、珍しいものとか変わったもの、見ていないかい?」
周囲に問えば、尻尾が二股に分かれかけている黒猫が、にゃあ、と答えた。
「……『黒髪の若い男を中心とした集団が、周辺の組織を攻撃している』?」
ジャックのその言葉を聞き、他の動物達も騒ぎ出した。どうやら、他の動物にもその集団に心当たりがあるらしい。
——そして、その集団をまとめている男は『勇者』であるらしいことを知った。




