第11話
「——『自称勇者』?……ああ、たまに居るねぇ」
鴉の告げる情報を雑な相槌で聞き流した。元居た世界で、異世界転生に関する物語が流行っている、という内容だった筈だ。アンジェラが鼻で笑いながら語っていたのを思い出した。
「大抵が『ニホン』という国から送られてきた人間……だったよね」
「そうですねー」
ジャックは唯一無事だった埃塗れのソファに横向きに寝転がり、ラジオを垂れ流しつつ複数の新聞を読み漁っていた。他の使えない家具達は全て分解して、レイヴンに跡形も無く燃やしてもらったので最近はずっとこのカビ臭いソファで寝ている。
にへら、と微笑み、レイヴンは大仰に相槌を打つ。そして、一部違うらしい箇所を指摘した。
「彼らが言うには、発音は『↑ニ↓ホン』ではなく、『↓ニ↑ホン』らしいです」
と。
「……え?イントネーションがが違う?……まあ、そんなのどうだっていいじゃないか」
心底どうでも良い、とジャックは肘置きに乗せた長い脚を組み替える。
自称勇者の名前は『ヒカル・ナナセ』。身長は170半ばで体重が50台後半の、やや痩せ型。転生してきたのはつい半年前程で、年齢は23歳。使える魔法は七色の魔法。これといったデメリットは無いが、使用後は体力を消耗する。使用武器は背中に差した大剣のみで、魔法の通りが良いらしい。
「……ふぅん、『人当たりがそこそこに良くて好青年』、それでいて『親切でそこそこに実力も有る』と」
正義感の強い彼には、クソッタレなマホドーラは住みにくいだろうねぇ、と全く心配していない口調で溢す。
「……気になりますか?」
レイヴンは和かにジャックに問う。
「全然。……確かに邪魔以外の何でもなかったけど、彼はほぼ人間だっただろう」
申し訳程度にしか、人外的な要素がなかった。
「だったら、次のエルシャ祭り辺りで居なくなるはずだよ」
わざわざ手を下すのも億劫だ、とジャックは身体を起こして新聞を閉じた。
×
「あら?随分と広くなったわね、このオンボロ廃墟。もっと良い物件でも見つけたのかしら」
ジャックが新聞を丸めて(一度も自分は使った事のない)暖炉に放り込んだところで、ドアを叩く音が鳴った。
「入るなり随分な挨拶だねぇ」
ジャックは古びたソファに清潔な白いハンカチを敷き、そこへ訪問者を誘導する。




