第9話
恐らく、転生したばかりか、何処からやってきたのかを尋ね、良いカモだと判断すると、自身の宿に引き込むタイプの詐欺だ。最近増えているらしい、と確かな情報源から聞いていた。
男に見える箇所だけを殊更に綺麗に整え、男に宿代を問われた際に敢えて高めに提示し、「無料で良いですよ」と儚げに笑ったのだろう。それを見、男は住み込みながら、どうにかして金を稼ぎ、提示された金額以上の金を掻き集めて、払ったのだ。
——女は、色々と手慣れている。
ジャックはもう何度目かも分からない溜息を吐く。痛め付けずにさっさと始末しておけばよかった。どうせ、この女に関わっていた奴らは、既に鴉達がどうにかしているのだから。
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「……君、結構弱いね」
ジャックは哀れむような声をかけた。これは、同情ではなく、敢えて相手を怒らせて、直接自身が手を下さずとも自滅させる為の、ただの言葉だ。
先程の嬲りと同様に、手心を加えて、手加減に手加減を重ねたのに、男は酷く消耗していた。それに対してジャックは無傷である。空が白み始めているので、もうそろそろ決着を付けたい。
背後で庇われている筈の女が、胡乱な目で男を見ている。女が此方の視線に気が付いた。敢えてにっこりと微笑みかけ、手を振る。『次は君だよ?』と圧力をかけながら。男はどうでも良いけど、君は死ぬ以外に道は無いからね。
「……っ、テメェ…」
案の定、逆上した男が再び突っ込んでくる。
「正直な子は嫌いじゃないんだけどね」
怒りで更に単純になった剣技を避け、
「直線的でつまんない」
足を引っ掛けて転ばせた。
「それに、足元がお留守だよ」
その拍子に男はテーブルに突っ込み、それは破壊されてしまった。
「……君が破壊した家具の修繕費、一体何処に請求したら良いんだろう」
哀れっぽく声を上げ、芝居掛かった動作で肩を竦める。
「っ、それは、テメェのせい、だろっ!」
男は叫ぶ。
「……叫ぶ元気は残ってるんだぁ……」
もう、うんざりしてきた。男の剣の癖はこう、使える魔法は火、水、風、土、木そして闇と光。剣に這わせる程度の魔力に、直接使えるのは大体腕の届く範囲。それ全てを覚えてしまうほど長い間、(向こうが一方的に)戦っている。
それ以外には何も芸がないし、何の面白みもないからもう殺しちゃおうか、と思考を巡らす。
ちらと女の方に目を遣ると、いつのまにかしっかりと服を着ていた。




