『第6回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品集
「なあプール行こうぜ」 は?今12月なんですけど?
「なあ水姫、プール行こうぜ」
放課後、いきなりそんなことを言われて戸惑う。
クリスマスも再来週に迫っている年の瀬、この師走にプール? 何を言っているんだこの男は。
「あのね、今は夏じゃないんだよ? たしかについこの間まで暑かった気がするけど」
そういえば先月までは半袖でも過ごせそうなほど暑い日もあったっけ。なんだか季節感がおかしくなっているのは理解できるけど、それにしたって限度がある。
「そんなのわかってるよ、でもさ、冬だからこそプールだと思わない? 水姫だって真冬にアイス食べるの好きじゃん?」
「まあ……言われてみればたしかに。でもこの辺に冬でもやってるプールなんてあったっけ?」
「ふふふ、実はさ商店街の福引でホテルの宿泊券当たったんだよ。そのホテルにアクアガーデンっていう年中無休の屋内プールがあって、噴水ショーとかあるんだってさ。五名様まで行けるんだけど、家四人家族じゃん? 良かったら一緒にどうかなって?」
マジで!! 行く!! って飛びつきそうになってグッとこらえる。
こいつ――――海斗は幼馴染だ。家族ぐるみの付き合いで何度も泊まりに行ったことはあるし、そこは今更なのだが――――
私も花の女子高生だし? もう少しその……意識して欲しいんだけど!?
でもまあ……あまり意識されても困るけど、安い女と思われるのはね!!
「ふ、ふーん……それで何時行く予定なの? 私も暇じゃないから」
「今週の土日、どうせ暇だろ?」
「失礼ね、暇じゃないわよ!!」
「そっか、じゃあ次の機会に。あ~あ、せっかく豪華ディナービュッフェ付きなのに残念だな、お前の好きなローストビーフ食べ放題もあったのに」
「待ちなさいよ!! 行かないなんて言ってないでしょ!!」
「でも予定あるんだろ?」
「……仕方ないからスケジュール調整してあげるわよ」
「マジで? 良かった!!」
ちょ、その嬉しそうな顔反則でしょ……そんなに私と一緒に行けるのが――――
「いやあ妹が絶対水姫を連れてこいってうるさいからさ。マジ助かった――――ぐえ」
黙って腹パンを決める。コイツは少しは苦しめばいいんだよ。
でもプールか、水着どうしようかな。
「イテテ……なんで急に殴るんだよ?」
「別に……それより海斗、水着なんだけどワンピースとビキニどっちが良いかな?」
恥ずかしいけど、海斗がどうしてもって言うならビキニでも
「ワンピースで」
「何でよ?」
「妹がワンピースだから」
「このシスコン野郎!!」
「ぐえ!?」