本音の続き=ドップラー効果
音野小珠は近くを歩いている人や動物の心の声が聴こえる力を持つ。狙いを定めた標的に意識を傾ける。ただそれだけで、内部に届いてくる。(あの女の人は、心で何を思ってるんだろう)標的の女性が近付き前を横切るその間、心の声が聴こえ出す。(夕飯の献立、何にしようかな。きのうはビーフシー)前を通過した後から先がどうしても聴こえない。(まただ……いつも心の声が途中で消える)続きが気になる。心の声の全部を聴きたい。どうすれば全部を知れるのだろう。
「ホラ、小珠!妹よ。小珠も今日からお姉ちゃんね」「いも……うと……」妹の名は妥縒。出会った日から、二人は仲よし。
「じゃあね、次は……あそこのお爺さん!」「決まりね、いくわよ」「はいな!」道行くお爺さんが姉妹の前をゆっくり通る。心のアンテナをピン、とはる二人。第一の声。(明日あたり、道の駅まで歩いていー)第二の声。(ーすこ夫婦を呼んで、家で水入らー)通過する前と後の声の声が真逆の意見だ。この遊びを繰り返し、姉妹は将来表向きでは占いの店、裏の顔では人生アドバイザーとして活動を始めるのだ。