海がくれた出会い
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【バッツ】―「おい、ロキ!見ろ!船だ!」
【ロキ 】―「なんだって!?」
バッツに言われて、ロキはすぐに立ち上がった。ロキは、船べりで塩をつくっている最中だった。
バッツはあれからも魚をたくさん釣ったが、船上で火は使えないから、刺し身しか調理法はなかった。しかし、刺し身をそのまま食べたのではあまりに味気ない。
だからわたしたちは、海水を乾かして塩を作っているのだ。船べりを海水で濡らし、そして乾いて浮かび上がってくる塩をこつこつと回収する。地味な作業だったが、船上ではあまりに暇が余ってるので、こんなことでも何もしないよりましだった。
ロキは水平線に目を凝らした。その日の空は晴れ渡り、雲一つないきれいな群青色に染まっていた。空気も乾燥していて、潮風がとても心地いい。そんな午後、水平線のはるか向こうに、船がぽつんと現れたのだ。
船との距離は、最初は10マイルほどだったろうか。船の船上には大きな三角帆がはためいている。あの船は近くで見たら一体どれぐらいの大きさなのだろうか。
船は、段々とこちらに近づいてくる。
【アル 】―「わあ、船だ!やっと誰かに会えるよ!」
いつのまにかロキの隣に立っていたアルは、船を見て無邪気にそう言った。しかし、ロキは必ずしも気が晴れたわけではなかった。
【ロキ 】―「そうだな。ただ、中に乗ってるのが善人だといいけどな……」
【アル 】―「え?どういうこと?」
【カイン】―「うん……もしかしたら、海賊が乗ってるかもしれない」
【アル 】―「海賊……?」
(イラスト 022 01)
アルはその言葉を聞き、あらためて船を見つめた。
旅で会う人間たちが、みな善人とは限らない。もし戦いとなったならば、ロキたちはアルやメーベルを守らなければならない。問題は、彼らが何も武器らしいものを持っていないということなのだ。ロキたちはこの点について、旅をはじめてから三日目の晩に話し合った。
話し合いの結果、彼らは自分たちで武器をつくることにした。彼らは船の羽目板を何枚か剥がして、それを削り槍を作った。正直、あまり頼りない槍ではあったけど、なにないよりはマシだろう。その槍は、向こうからは見えぬよう船べりの陰に置かれていた。
【バッツ】―「アル、お前はもう船室に入ってろ。」
バッツがそう言われ、アルは船室へ向かった。
ロキたちは待った。向こうの船はこちらと段々と距離を詰め、やがて船の細かい様子なども見えるようになった。しかし、不思議なことにいまだ甲板に人影は見えなかった。
怪しい。相手は襲撃するつもりかもしてない。そう思い、彼らは槍を各々の手にもつ。
とうとう、船は距離10フィートもないほどに接近した。相変わらず甲板には人気がなく、不気味だった。バッツは向こうの船に飛び移ってやろうと、船べりの上に立ち上がった。
るとバッツは、ロキたちを振り返って叫んだ。
【バッツ】―「おい、中で人が倒れてるぞ!」
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ロキたちは、向こうの船に飛び移った。
甲板には、ひとりの男と三人の女が倒れている。彼らは全員ひどくやせ細り、ぴくりとも動かなかった。
【バッツ】―「おい、おまえたち、大丈夫か!」
ロキは男を助け起こし、声をかけた。
男は、ゆっくりと目を見開いた。彼の頬はげっそりとこけ、唇は乾いて割れ、目は虚ろだった。彼は、震える手でロキの腕を掴むと、なにか言おうとした。
【アル】―「ロキ、そのひとたちどうしたの?」
振り返ると、アルがそこいた。いつの間にか船室から出て様子を見に来たのだ。
【バッツ】―「アル、お前は船室に入ってろ!」
バッツが叫ぶと、アルは船室に向かって走っていった。そのとき、男がなにか声を出した。バッツは男の口元に耳を近づけた。
【男】―「……は……」
【バッツ】―「どうした?」
【男】―「は……はら……へった」
男はそういうと、ふたたびがっくりとうなだれた。ロキたちは思わず顔を見合わせた。
どうやらこの船の乗員たちは、腹をすかせて倒れてしまったらしい。
【ロキ】―「はら減ったって言われてもね……どうしたもんかな……」
ロキはそういいつつ頭をかいていると、背後からとことこと誰かが近づいてくる音がした。振り返ると、アルがふたたび甲板に出てきていた。ロキが注意しよう口を開いたとき、アルが、船室を指さしながら言った。
【アル】―「ロキ、船室に食事が用意されてるよ!」
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ガシャガシャ!ぐァつぐァつぐァつ!カチャカチャカチャ!
食べ物をのどにかき込む咀嚼音と、食器をカチャカチャとと鳴らす音が、せまくて薄暗い船室に響く。
四人の旅人たちは、ひとことも喋らず、一心不乱に食事を腹の中に詰め込む。
四人のうちの男が、コップいっぱいの水をグビグビと飲み干すと、ぷは~と息をついて、口元を拭った。男は短い金髪に、眉尻が上がった太い眉をした、男らしい男だった。彼は言った。
【男】―「あ~うまい!いや~おまえら、助かったぜ!」
【バッツ】―「そうかそうか、うまいか。おかわりはた~んとあるぜ。お前ら、好きなだけ食えや」
【ロキ】―「なんでお前が偉そうなんだよ」
ロキはつっこみを入れつつ、鳥の骨付き肉を前歯でこすり、しゃぶっている。
アルに言われて船室に入ると、そこには大皿に山と盛られた鳥の肉とパンの山、そして大きなびんに一杯の水が用意されていたのだ。これは、あの船の連中に食事をさせろということだろう。ロキたちはそおう解釈し、彼らを船に招いたのだった。
【黒いカチューシャの女】―「ごめんなさいね、これあなた達の食事なんでしょ?」
【ロキ】―「いや、おれたちは食べたばかりだから、遠慮しないで」
【赤い髪留めの女】―「じゃあお言葉に甘えて!ありがと~!」
そういうと、赤い髪飾りをした女は、ガツガツと食べ始めた。そこには、おしとやかさのかけらもない。まるで野生児のように、両手に肉を掴んで口いっぱいに肉を詰め込んでいた。
彼女の容姿は変わっていた。彼女は、はっきりとしたオッドアイだ。左目は剥いたぶどうのような緑色で、右目はルビーのように真紅だ。道で会えば思わず二度見してしうような、変わった見た目をしている。
一方で、他の二人の女はおしとやかに食事をしていた。
ひとりは短い茶髪に黒いカチューシャをつけた女だった。ツンととがったこぶりな鼻に、緑色の瞳を持っている。細く長い指に、黒いタイツに包まれた長い脚。一言でいうと、彼女は凛とした女性だ。
もう一人の女性は、淡い金髪に白いカチューシャをつけた。髪の長い女だった。彼女は、目を伏せながら食事をしている。彼女は、可憐な聖女という出で立ちだった。
【金髪の女】―「ありがとうね、助けてくれて。あなたたちがいなかったら、わたしたちはもう死んでたわ」
【ロキ】―「まあ気にするな。」
【金髪の女】―「実は昨日、すごい大きな船とすれ違ったの。わたしたちは大声で助けを求めたんだけど、無視されちゃって……」
【ロキ】―「もしかしたら、気づかれなかったんじゃないか?」
【金髪の女】―「そんなことありえないわ。だって真っ昼間だったもの。それに、向こうは船べりからこっちのこと見下ろしてたし」
【メーベル】―「それはひどいわね。だって、普通海ではお互いに助け合うものでしょう?」
【黒いカチューシャの女】―「そうなのよ。ましてあの人たちも王女の巡礼に同行する同志でしょうに、あんなに冷たいなんて」
女たちが互いに愚痴を言い合っている間、ロキは、テーブルに置かれた肉の大皿の下に、なにか手紙が挟まっているのを見つけた。
ロキはそれを引っ張り出し、中身を読んだ。そして、声を上げて読みはじめた。
【ロキ】―「『アナ、ライラ、ニーア、そしてレオナルドよ。長い旅路、大儀なことであった。君たちもまた神に選ばれた人間として、我々がこの船に引き合わせたのだ。
この船は、これから南に進路を取り、キスパーという島に向かう。その島において、君たちはサウザーという男を探せ。サウザーは、王女の巡礼の旅において、非常に重要な役割を果たす。
君たちの役割は、ロードランまでサウザーを導くことである』」
ロキは手紙をたたみ、顔を上げた。彼らはみな、ロキを見つめていた。ロキは言った。
【ロキ】―「いまのは君たちの名前であってるか?」
【金髪の女】―「……ええ」
【ロキ】―「おれたちは、神に選ばれた使徒だ。この船で目覚めて、それ以前の記憶はない。その飯も水も、全部神様が擁ししてくれたものだ。おれたちは、手紙の内容に従うつもりだ。サウザーを探すのに、協力してくれるか?」
四人は顔を見合わせたあと、頷いた。
彼女たちは、いまの話にどう反応したものか考えている。もちろん、食事を振る舞われている立場で、失礼な態度をとるわけにもいかないだろう。まあ、とりあえず粗相のないように振る舞いたいと考えているに違いない。
メーベルが立ち上がり、背中の首ひもを解いた。
え、ちょっとちょっと……
【赤い髪留めの女】―「信じるわ。わたしたちも、ぜひあなた達のたびに同行させてちょうだい」
【金髪の女】―「自己紹介するわね。わたしはニーア。この茶髪がライラで、このがさつなのがアナ。そして男の子はレオナルドよ。ところでいいのかしら、こんなに食べさせてもらっても」
【バッツ】―「ああいいぜ。減るもんじゃねえし、好きなだけ食えや」
【アナ】―「あはは、減るもんじゃないって(*゜▽゜)」
【バッツ】―「いやほんとだぜ?お前たちが食ってるメシは、全部神様が用意してくれたんだ」
【アナ】―「なるほど。信じる」
アナはそう言うと、再び皿の肉を頬張りはじめる。この娘は、あまりものを考えるタイプではなさそうだった。それはレオナルドも同じだ。ニーアはというと、肉を指先でつまんでクルクルと回しながら見ている。ライラは無表情で肉を噛んでいる。
彼女たちは、いまの話にどう反応したものか考えている。もちろん、食事を振る舞われている立場で、失礼な態度をとるわけにもいかないだろう。まあ、とりあえず粗相のないように振る舞いたいと考えているに違いない。
もちろん信じるわ。だってわたしたちは、そのためにたびにでたんだから
【レオナルド】―「あ゙~小便」
【ニーア】―「いちいち言わんでよろしい」
レオナルドは立ち上がると、扉を開けた。そして一歩甲板に踏み出して、足を止めた。彼は言った。
【レオナルド】―「誰かいる」
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みな、船室から出て甲板に立った。
甲板の前後は、船の中央に立つ横帆に遮られている。そのマストの下のしたから覗く向こう側に、誰かが立っている足が見える。
【ライラ】―「誰だ!」
ライラは叫んだ。
しかしロキたちは、それが誰だかわかった。彼らは甲板を横切り、マストの横木を身をかがめてくぐる。ロキたちがそうしたのを見て、ライラたちもまたマストの向こう側に出た。そして、その先を見て、彼らは固まった。
舳先には、天使が立っていた。
真昼の日差しの中で見る彼女は、美しい。
【バッツ】―「久しぶりだな」
バッツがそう言うと、天使はわずかに微笑んだ。そして言った。
【天使】―「バッツよ、貴様にわずかでも神を疑うこころがあるか」
【バッツ】―「いや、ねえよ」
バッツは答えた。彼はあいかわらずどこか喧嘩腰だったが、顎を引いて天使を見るその目も、反感に光っているわけではない。彼は、この世界に再び生まれ落ち、こころのまま神を疑い、そして短い旅の中で、神を受けいれた。彼は本心しか語らない男だ。
天使はライラたちに向き直り、話しかけた。
【天使】―「アナ、ライラ、ニーア、そしてレオナルド。長い旅路であったろう。大儀なことであった。貴様たちもまた、選ばれた人間だ。わたしが、貴様らをこの船に引き合わせたのだ」
天使はそう言うと、今度はロキにむかって話しかけた。
【天使】―「この船は、これから南に進路を取り、キスパーという島に向かう。その島において、サウザーという男を探し出すのだ。サウザーは、王女の巡礼の旅において、非常に重要な役割を果たす。貴様らはサウザーとともに東へ向かへ。そして、ロードランまで彼を導くのだ」
天使はそうい終えると、翼をはためかせた。一瞬、あたりがまばゆい光に包まれたかと思うと、もうそこに天使の姿はなかった。
アナが口を開いた
「いまのは一体……」
【】―「」
そこには、天使がいた
貴様らは選ばれた
これからこの船は南のサーカス島に向かう
そこできさまらはサウザーという名の男を拾うのだ
サウザー
よしわかった!任せておけ
ああ、頼んだ
おお帆が勝手に方向転換をはじめる
そおして、南に向かった
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ようやく、彼らは島にたどり着いた
灰の魔術
正でも負でもない魔術
ニーアは、そんな
bツに
【ロキ】―「疑わないのか?」
【】―「命の恩人を疑うわけないじゃない。それに、わたしたちだって人には信じられない理由でたびに出た」
【ロキ】―「ふーん。なんで?
【】―「そ。神は神でも、
「死神?」
ദ്ദി ( ,,⩌︿⩌,,)
おれたちは、死神に追われてるの」
皿の下に、何かが挟まっているのが見えた。
「ちょっと悪ぃ
そういって皿をどける
「また手紙カ
ああ
そのものたちを連れて、サウザーを探せ
悪ぃ、おれたち進路を変えなきゃいけねえみたいだおれたちは、そのサルディーニャ島ってところによらなくちゃいけなくなった」
「全然構わねえよ。むしろ、そのサウザーってやつを探すの、ぜひ手伝わせてくれ」
【】―「」【】―「」
【】―「」
【】―「」
【】―「」