苦渋
「ヴァリーくん!来たよ!」
アインツが再び公園を訪れたのは、前回のトレーニングの翌日だった。
これにはヴァリーも呆れている。
「お前さぁ…昨日ぶっ倒れたのにまだ懲りてないのかよ。」
「だって、早くヴァリーくんとトレーニングしたかったんだもん。」
そう言うアインツの足は少し震えていた。
昨日の筋肉痛がまだ残っているのだろう。
ヴァリーはため息を尽きながらも、手招きしてアインツを呼び寄せる。
アインツは喜んでヴァリーの横に座った。
「じゃあ今からハムストリングスストレッチやるから、お前も真似しな。」
「ハム?何?」
「ハムストリングス!足の筋肉痛を和らげるストレッチだよ。」
そういってヴァリーは芝生の上に寝転んだ。
そして右膝をお腹につけるように抱える。
「ほら、お前も真似してやってみな。」
「うん!わかった!」
アインツもヴァリーの真似をしながら右膝を抱える。
その姿勢を15秒ほど続けたら次は反対の膝を抱える。
「背中が丸まらないように気を付けろよ。」
「わかった!」
アインツはヴァリーの言うことを素直に聞く。
そのまま二人はしばらくストレッチを続けた。
一通りストレッチを終えた後、ヴァリーはアインツに状態を聞く。
「どうだ?少しは筋肉痛良くなったか?」
アインツは立ち上がってみる。
すると、公園に来るまでとは見違えるほど楽に歩けるようになっていた。
ジャンプしてもほとんど痛みを感じないほどに。
「ヴァリーくんすごい!めちゃめちゃ楽になったよ。」
「いや、そんなすぐに良くなるもんじゃねぇから!ジャンプしたりするのはやめろ!」
ヴァリーはアインツに注意しながらも、これなら今日もランニングすることは可能だろうと思っていた。
二人は昨日と同じように湖の周りを走り出す。
「アインツ。お前は昨日と同じで1周走り切るのが目標。ただし、今日は昨日みたいに倒れるほど無茶するなよ。」
ヴァリーの言葉にアインツはうなずく。
「大丈夫。多分今日はいける気がする。」
何がいけるのかヴァリーにはよくわからなかったが、そのまま一緒に走り出した。
しばらく走るとアインツは昨日と同じく、苦しそうな表情になってきた。
昨日の今日だ。
そう簡単にアインツの体力が増えるわけがない。
「あっ!」
アインツは足がもつれて倒れそうになるが、なんとか耐える。
しかし、その様子を見たヴァリーは、「アインツ。今日のランニングはここまでだな。」とアインツにストップをかけた。
「僕まだやれるよ!」
そういうアインツに対してヴァリーは首を横に振る。
「昨日の疲れが明らかに残ってるだろ。このまま続けたらケガするだけだぞ。それとも今無理して、今後走れなくなってもいいのか?」
ヴァリーの言葉にアインツは足を止めた。
その顔は悔しさでいっぱいだ。
ヴァリーもこうなることはなんとなくわかってはいたが、それでもアインツのことを思って今日は走るのをやめさせたのだ。
「アインツ残りは歩いて公園に戻るんだ。その後でさっきやったようにストレッチしてから身体を休めるんだぞ。」
そういってヴァリーは本来のペースで走りだした。
その速度はさっきまでとは違いかなり速いペースだ。
アインツと一緒に走っている間は、アインツに合わせてかなりペースを落としていたのだ。
それを知ったアインツは更に悔しくなって、目に涙を浮かべるのだった。




