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分かれ道

アインツはベンチの上で目を覚ます。

ここはフィールドの脇にあるAチームの待機所だった。

アインツはボーとしたまま身体を起こすと、それに気づいたヴァリーが慌てて駆け寄る。

同じようにヴァリーの周りにいたAチームのメンバーも続々とアインツの側に集まってきた。

まだ状況を理解できてないアインツが首を捻っていると、ヴァリーが心配した様子でアインツに声をかける。

「大丈夫か?アインツ。ずっと目を覚まさないから心配したぞ」

ヴァリーの言葉でようやくアインツは何があったのか思い出した。

試合の最後で一斉攻撃を受けたアインツは、試合終了後に力尽きて意識を失ったのだ。

「お前が寝てる間に試合後の挨拶とか全部終ったぞ。Bチームの面々はもうほとんど帰っちまった」

「そうなんだ」

アインツが辺りを見渡すと、フィールドの整備をしている人がちらほら見えるだけで、試合を観戦していたほとんどの人はいなくなっていた。

そんなアインツに対してケニーは口を開く。

「アインツくん、おめでとう。初試合初勝利だネ」

その言葉を聞いてアインツは、この試合に勝利したことをようやく思い出す。

それと同時に、アインツの中で喜びの感情がじわじわと湧き上がってきた。

アルマの練習を一所懸命続けてきた結果がようやく形となったのだ。

そんなアインツの様子を優しく見守るAチームのメンバー達。

アインツはみんなの姿を見て、改めてこのチームで戦えて良かったと思った。

「みなさん。本当にありがとうございます」

頭を下げてお礼を言うアインツに対して、みんなは笑みを見せた。

その中でもジャドンは特に嬉しそうだ。

「こちらこそありがとう。アインツくんのおかげで本当にいい試合ができたよ。あのザラに一泡吹かせることができたしね」

とジャドンはいたずらな笑みを浮かべる。

隣にいるクルドマンも満足気に頷いていた。

「俺は最初からお前はやるやつだと思ってたぞ、アインツ」

そんな調子のいいことを言ってるクルドマンをジャドンは肘で小突く。

二人は本当に楽しそうであった。

これが試合後の余韻というやつだろう。

Aチームのメンバーが楽しそうに話していると、そこにとある人物が現れる。

「おめでとう、Aチームの諸君」

現れたのはこのジュニアチームの監督であるダマスだ。

その姿を見たAチームのメンバーはみな一斉に姿勢を正す。

もちろんヴァリーとアインツもだ。

しかし、ダマスはそんな様子を気にも留めず、話を続けた。

「とてもいい試合を見せて貰ったよ。特にヴァリーとアインツくんは一年生と思えない動きだったね」

「「ありがとうございます」」

二人は一斉にお礼を言うと、ダマスは満足そうに頷いた。

「今回の合否だけど、三日後にはそれぞれのお家に郵送するから、忘れずに確認するようにね」

「「はい!」」

二人の返事を聞くと、ダマスは上機嫌でその場を後にする。

ダマスが去った後、一同は一斉に息を吐き姿勢を崩した。

アインツは未だにドキドキしている。

「すごく緊張した~」

「でも、アインツも褒められてただろ?これは脈ありってことなんじゃないか?」

ヴァリーが言ってるのはもちろん合否の結果である。

監督から褒められる言葉があったということは、少なからずアピールが成功していたと言えるだろう。

そんな中ジャドンは手を叩いてみんなの注目を集める。

「さぁ監督からも釘を刺されたことだし、今日はこれでお開きにしようか。あんまり長居すると怒られるぞ」

ジャドンの言葉でみんなは控室に戻り、荷物の整理を始める。

アインツとヴァリーも荷物をまとめ、帰る準備を整えた。

最後にアインツはみんなに挨拶をする。

「今日は本当にありがとうございました。みなさんと試合できて楽しかったです」

そんなアインツにジャドンも言葉を返す。

「二人が正式にチームの一員となることを楽しみにしているよ」

ジャドンの言葉にケニーも続く。

「早くまた二人と一緒に試合がしたいネ」

そんなケニーの言葉にアインツは嬉しそうに返事を返した。

「ぜひ!また試合しましょう!」

こうしてヴァリーとアインツはAチームのみんなと別れ、スタジアムの通路を通りながら帰り道へ向かう。

すると、スタジアムの出入り口で待っている男の姿を見つけた。

それはザラだ。

「やぁ、二人ともお疲れ様。とてもいい試合だったよ」

ザラは笑顔でそういった。

その表情に悔しさはなく、負けたチームとは思えないほどに清々しい。

そんなザラに対してアインツも挨拶を返す。

「ザラさんも本当にありがとうございました。本当に手強くて、ザラさん凄いなって思いました」

そんなアインツの言葉を聞いてザラは大笑いをする。

「それは負けたチームの相手に言う言葉ではないだろう?もしかして、嫌味かな?」

「あ、そんな意図は全然なくってですね…」

アインツがしどろもどろになっている様子をザラは楽しそうに見ている。

ヴァリーは少し呆れた様子で二人の間に割って入った。

「アインツのことをからかうのはやめてくださいよ。ザラ先輩のことだから何か目的があってここに来たんでしょ?」

「正解。ヴァリーはやっぱり賢いね」

ザラは少しだけ真剣な表情になり、二人に向かってこう言った。

「君たちは本当に素晴らしい選手になれるよ。これからもっともっと強くなってね」

その言葉に二人は嬉しそうな表情を浮かべる。

敵だったとは言え、ジュニアチームのエースであるザラからの褒め言葉だ。

自分たちの努力が認められた気がしただろう。

だが、ザラはその後に思わぬ言葉を口にする。

「だけど、道は一つじゃない。どんな事があっても、自分を信じて前に進むことを忘れずにね」

ザラの言葉に二人は首を傾げて疑問符を浮かべる。

ザラの言葉の意図がわからなかったからだ。

だが、ザラはそれ以上のことを口にせず、後ろを振り返りその場を後にする。

残された二人はお互いに顔を見合わせながら、言葉の意味を考えた。

「どういう意味だろうね?ヴァリーくん」

「わからねぇ。やっぱあの人の思考はまったく読めないよ」

二人は少しモヤモヤした気持ちのまま家へと帰る。

だが、ザラの言葉の意味に気づくのは、そう遠くない未来であった。


三日後、二人のもとに封筒が届く。

それは合否結果が書かれた封筒だ。

二人はその封筒をすぐには開かずに、いつも朝練していた公園へ持っていく。

そして、アインツとヴァリー、エルの三人が集まる中、二人は一斉にその封筒を開封した。

その結果を見て三人は驚きを隠せない。

ヴァリーの封筒には合格証明書が入っていたものの、アインツの封筒にはそれがない。

アインツは不合格であった。

三人の中に重たい空気が流れる。

そんな中、口を開いたのはヴァリーだった。

「なんでだよ…あんなに結果を出したアインツが不合格なんておかしいだろ…」

実際アインツは試合で何度もゴールを決め、敵を倒した。

もちろん自身がやられたりもしたが、それ以上に活躍をしていたはずだ。

だからこそ、ヴァリーはこの結果を予想していなかったのである。

だが、当の本人であるアインツは、この結果を納得するように受け入れる。

「仕方ないよ。僕の実力不足だったんだから…また一から頑張ってみるよ」

しかし、そういうアインツの目にはいつ泣き出してもおかしくないくらい、涙が溜まっていた。

それでもアインツは泣かずにヴァリーに対して「おめでとう」と言葉を送る。

そんなアインツの姿を見て、エルもヴァリーに「おめでとう」と言葉を送った。

ヴァリーは未だに納得できなかったものの、アインツの姿を見て言葉を飲み込む。

こうして、アインツとヴァリー、二人の道は大きく違えることとなる。

ザラが言った言葉の通り。

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