決着
アインツとヴァリーはザラを撃破し、相手ゴールに向かって必死に走っていた。
ザラ達との戦いでかなりの時間を取られたため、試合終了までの残り時間はあとわずかだ。
このわずかな時間にアインツかヴァリーがゴールを決めなければ、Aチームは負けてしまう。
二人は先ほどダメージが残る中、急いでゴールを目指していた。
そんな中ヴァリーには一つの疑問が浮かんでくる。
「さっきの戦いでアッサがいなかったな。ということはあいつ守備にいるのか?」
ヴァリーの不安の種はアッサの存在である。
先ほどの戦いでアッサは攻撃に参加していなかった。
そうなるとゴール前で相手の妨害をしてくる可能性が高い。
「もし、相手が三人だとするとまともに相手すればこちらの分が悪いな。それに残り時間が少ないから相手を倒す暇もない」
「速攻でシュートを狙うしかないね。なかなか大変だなぁ」
「これもザラ先輩の作戦なんだろうな。最後の最後まで楽をさせてくれない人だ」
二人はゴール前での攻め方を考えながら、相手ゴールに向けて走る。
そして、残り時間が3分となったところで、ようやく相手ゴールが見えてきた。
相手のゴール前ではジェット、ツクオ、アッサの三人が待ち構えている。
ザラがやられたこともあり、三人はにらみつけるようにアインツ達を警戒していた。
特にアッサはここで二人を倒すことを強く意識している。
「俺はここでお前たちを倒さなければいけない!最強になるために!」
アッサは二人に向かって駆けだした。
それに対して、アインツとヴァリーは二手に分かれ、左右からアッサを迎え撃つ。
アッサがまずターゲットに選んだのはヴァリーだ。
「ウッド・ワン!ロード・ヴァインズ!」
ヴァリーの前方をつるで満たし、走りを妨害する。
だが、ヴァリーは走る勢いを落とさない。
「アース・ツー!ロック・タワー!」
ヴァリーは地面から短い塔を一定間隔で出し、それを足場としながら飛び進んでいく。
だが、アッサはそれを予想していた。
アッサは次なる一手を打つ。
「ツクオ!出番だ!」
アッサの合図でツクオは動く。
「ウォーター・ツー!スプラッシュ・バースト!」
ツクオは上空に向かって無数の水弾を放つ。
その水弾は上空ではじけ、雨の様に水を降らせた。
ヴァリーは水に濡れながらツクオの行動に疑問を持つ。
「なんで上空に魔法を撃ったんだ?直撃じゃないとダメージは出ないはず」
ヴァリーの言う通り、たとえ魔法で発生したものでも、雨のように弱い衝撃であればダメージは受けない。
しかし、ツクオが雨を降らせたのには理由がある。
ヴァリーは自分の足元で起きた変化によって、その理由を知った。
「大量のつるが伸びてきた!?」
先ほどアッサが放ったつるは、雨によって成長が促され、地面の芝が見えなくなる育つ。
そして、ヴァリーが足場にしている塔の上まで、つるは伸びてヴァリーの動きを妨害をした。
「くそっ!こんなつる焼き払ってやる!」
ヴァリーはつるに向けて火弾を放つ。
火弾を受けたつるは一気に燃え上がるように思えたが、燃え方は鈍くなかなか燃え広がらない。
その光景を見てアッサは作戦が成功したことを確信した。
「そのつるはツクオの雨で大量の水分を得ている。いくらお前の火弾でも簡単には燃やせないぞ」
アッサの言う通りヴァリーはつるの処理に手間取り、なかなか前へは進めない。
その間にアッサは次のターゲットであるアインツの位置を確認する。
今アインツはゴールである水晶柱に向かっているが、ゴール前にはジェット、そしてツクオも構えている。
アインツはまずツクオに向かって攻撃を仕掛けた。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
アインツの放った光の弾をツクオは回避し、反対に攻撃を仕掛ける。
「ウォーター・ツー!スプラッシュ・バースト!」
だが、アインツはその水弾を光の十字架で防ぐ。
それを見たツクオは、アインツに対して怒りを露わにした。
「どうしてお前はいつも僕の邪魔をするんだ!」
ツクオはこの試合で幾度となくアインツに妨害され、うらみが募っていた。
しかし、アインツはそんなツクオに怯むことはなく、試合に勝利することだけを考えてゴールを目指す。
「ここで相手をしていても、時間がかかるだけだ。どうにかして先へ進まないと」
アインツはツクオを避けてゴールを決める方法を考えていた。
しかし、今のアインツにできることと言えば、砂煙を出して身を隠しながら進むことぐらいである。
一度ツクオ達相手に使っている手ではあるが、何もしないよりはマシと考えアインツは行動を起こす。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
アインツは自分の足元に光の弾を放ち、砂煙を起こす。
アインツは砂煙の中に姿を隠したまま、進行方向を右に変えツクオを迂回するルートを通る。
しかし、ツクオは対策をすでに考えていた。
「その手は通用しない!ウォーター・ツー!スプラッシュ・バースト!」
ツクオは先ほどと同じように水弾を上空へ放ち、人工の雨を降らせる。
その雨は砂煙を地面に落とし、アインツの姿をさらした。
アインツの姿を確認したツクオは、アインツに向けて攻撃を行う。
「お前はここで終わるんだよ!アインツ!」
無数の水弾がアインツを襲う。
アインツは光の十字架で水弾を防ぎながら、さらに前へと進む。
ゴールへと徐々に近づいてはいるが、ツクオの攻撃が激しくシュートする暇が無い。
しかも、ゴール前にはジェットが構えている。
ジェットの隙を作らなければ、アインツがいくらシュートをしたとしてもゴールすることは難しい。
アインツの置かれている状況はかなり厳しいものであった。
しかし、アインツは一か八かの賭けに出る。
「これでどうだ!?シャイン・クルス!!」
今までは攻撃に使用していなかった光の十字架を、今回はツクオに向かって放つ。
「何だとぉ!?」
予想外の攻撃にツクオは慌てて無数の水弾を放つが、光の十字架は水弾を受けてもなおツクオに向かって勢いよく飛んでいく。
「やられる!?」
ツクオは慌てて頭を抱えたままその場にしゃがみ込む。
ツクオに直撃するかと思われて光の十字架は、ツクオに当たる直前で勢いが落ち、地面に突き刺さった。
ここが光の十字架の射程範囲である。
ツクオはギリギリであるが、射程外にいたためなんとか攻撃を受けずに助かった。
しかし、ツクオがしゃがみ込んだ隙にアインツは一気にゴールへ突き進む。
ゴール前ではすでにジェットが構えていた。
この状態ではシュートが決まることはないだろう。
しかし、今回はジェットを倒す暇がない。
そこで、アインツはできる限りジェットの守備を妨害するための策に移る。
「ライト・ワン!シャイン・クルス!」
アインツは光の十字架をジェットから少し離れた位置を狙って突き刺す。
アインツはゴールに向かって走りながらそれを繰り返していた。
しかし、ジェットもアインツの行動の意味を察する。
「この十字架でこちらの動きを妨害するつもりか?それならば…ウインド・ツー!ストーム・リフレクション!」
ジェットは風の障壁で十字架を少しずつ押し出していく。
十字架は地面をえぐりながら少しずつその場から動き出す。
これによりジェットの行動範囲は多少広がった。
しかし、十字架がジェットの動きを妨害しているのも事実。
アインツは構わずシュートに向けて次の準備を行う。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
アインツの放った光の弾がジェットに襲いかかる。
しかし、ジェットは守備に特化した風の障壁で対応する。
「ウインド・ツー!ストーム・リフレクション!」
ジェットの障壁により、光の弾の威力は軽減される。
ジェットはダメージをわずかに受けるが、光の弾の一部はアインツへ跳ね返された。
だが、それはアインツもわかっている。
アインツは跳ね返ってくる光の弾を、突撃しながら光の十字架で防御する。
そして、勢いそのままにジェットに向けてジャンプシュートを放つ体勢に移る。
ジェットは先程のダメージで体勢が崩れていた。
ここが最大のチャンスである。
「いっけぇ!!!」
アインツが足に力を込めてジャンプしようとしたその時である。
アインツは濡れた芝に足を滑らせる。
渾身の力でジャンプしようとしたことが、今回は裏目に出てしまったのだ。
「しまった!」
すでにシュートの体勢に入っていたアインツはボールを落としてしまう
そして、ボールは芝を滑るようにジェットの足元へ転がった。
ジェットはそのボールを拾い上げる。
「どうやら運はこちらに味方したようだな」
ジェットの言う通り、アインツがミスをしたのは偶然である。
しかし、この芝が濡れていたのはツクオの雨が原因だった。
アインツの妨害を必死に行ったBチームがこの結果を引き寄せたのだ。
アインツはボールを失ったことにショックを隠せずにいた。
だが、そんなアインツにヴァリーの叫び声が届く。
「まだ終わっちゃいねぇぞ!!アインツ!!」
そう、ヴァリーの持っているボールは未だ健在である。
アインツがボールを失ったとはいえ、ヴァリーがゴールすればAチームは逆転可能なのだ。
しかし、ヴァリーは今アッサによって身動きを封じられている。
このままではヴァリーはゴールを決めることができない。
残り時間は後わずか。
その時、アインツは叫んだ。
「うおおおおおおお!!!」
アインツの咆哮を聞いて、Bチームのメンバーは皆驚きの表情を浮かべる。
しかし、アインツの表情を見て、すぐに気持ちを切り替えた。
まず行動を起こしたのはアッサだ。
「ツクオ!今すぐそいつを倒せ!」
アッサの叫びを聞いて、ツクオは反射的に水弾を放つ。
しかし、アインツはその水弾を光の十字架で防ぎながら、今度はヴァリーのいる方向へ走り出した。
アインツはヴァリーの足止めをしているアッサを狙うつもりだ。
それに対してアッサはヴァリーの足止めを続けるか、アインツを先に倒すかを悩む。
しかし、一直線に向かってくるアインツを無視できるはずもなく、アッサは必然的に後者を選んだ。
アッサとしては以前負けた借りを返す絶好の機会ではある。
「ウッド・ワン!ラピッド・バンブー!」
アッサは掴んだ竹を急速に成長させて、一気にアインツの元へと飛ぶ。
そして、アインツに向かって上から竹の棒を振り下ろす。
しかし、そんなアッサに対してもアインツは冷静に対処した。
「ライト・ワン!シャイン・クルス!」
アインツは自分の目の前に光の十字架を作り出し、アッサの攻撃を防ぐ。
そして、逆にアッサに対して渾身の一撃を放った。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
至近距離からの攻撃。
だが、アッサはそれを予想し草のクッションで防ぐ。
光の弾は草のクッションに阻まれたが、アインツの一撃はアッサの予想以上に重かった。
光の弾は草のクッションごとアッサの身体を押し上げ、そして爆散する。
アッサはわずかにダメージを受けながら、後ろに吹き飛ばされた。
「くそっ!」
アッサがアインツに気を取られている隙にヴァリーが動く。
「アース・ツー!ロック・タワー!」
ヴァリーは動けない自分ではなく、アインツの足元に石の塔を作り出す。
石の塔に持ち上げられたアインツは地面にいるアッサとかなり距離が離れていた。
それを確認するとヴァリーは行動を起こす。
「受け取れ!!アインツ!!」
ヴァリーは自分が持っているボールを投げたのだ。
アインツはそのボールを塔の上で受け取る。
ヴァリーは動けない自分の代わりにアインツにボールを託したのだ。
このボールはAチーム最後のボールである。
これを決めればAチームは勝利し、奪われれば敗北する。
それだけ重要なボールだった。
アインツはヴァリーに向かって頷くと、すぐに塔を降りて再びゴールへ向かう。
しかし、正面にはツクオ、背後にはアッサ、そしてゴール前ではジェットが待ち構えている状態である。
ここをアインツは抜けてゴールをしなければいけなかった。
「必ず突破してみせる!」
アインツはまず光の弾を地面に放ち、砂煙で自分の姿を隠す。
だが、ツクオはすでにその対策を知っている。
「何度やっても同じだ!ウォーター・ツー!スプラッシュ・バースト!」
ツクオの放った水弾は雨となり砂煙を取り除く。
砂煙から姿を表したアインツは、驚くことにその場を一切移動していなかった。
そのかわりアインツの右手には光のマナが集まっている。
そう、アインツは砂煙を利用してツクオの隙を作ったのだ。
ツクオは砂煙を取り除くために魔法を放ったため、すぐに魔法を放つことはできない。
対してアインツは砂煙の中で必死に光のマナを作り出していた。
だからこそアインツはすぐに魔法を放つことができるのである。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
アインツの放った光の弾はツクオの身体に当たり、ツクオを吹き飛ばす。
これによりアインツの進路はクリアになったが、その間にアッサはアインツへ攻撃できる距離に近づいていた。
アッサは手に持った竹の棒でアインツを薙ぎ払おうとする。
「絶対に先に行かせない!」
そんなアッサの一撃を光の十字架で防ぐアインツ。
アインツもここは負けられない気持ちでいっぱいだ。
この試合、アインツは仲間の助けを多く受けてここに立っている。
ケニー、ジャドン、クルドマン、そしてヴァリー。
そんな仲間たちがいたからこそ、このチャンスは生まれたのである。
アインツはそんな仲間の思いに報いるため、ここでゴールを決めるしかないのだ。
「どけぇぇぇぇぇ!!!」
アインツはアッサに向かって突撃し、右腕をアッサの身体へと伸ばす。
そして、零距離から光の弾を放った。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
アインツによる零距離攻撃はアッサも防ぎようがない。
光の弾は至近距離で爆発し、アッサの身体とアインツ自身を吹き飛ばす。
アインツは手に持ったボールを絶対に離さないと言う意志で、ボールを身体で抱えながら地面を転がった。
シールドで守られてるとはいえ、アインツの身体は至る所で痛みが走る。
しかし、アインツは負けなかった。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
アインツはその痛みに耐えながらもその場に立ち上がる。
そして、最後の力を振り絞りジェットのいるゴールを目指し、再び走り始めたのである。
そんなアインツを追いかけるのは、さきほどダメージを受けたツクオとアッサである。
気がつけばアインツはジェット、ツクオ、アッサの三人に三方を囲まれる状態になっていた。
だが、アインツはゴールへ向かって一直線に走る。
そして、ジェットがいるゴール前でアインツは勢いよく飛び上がった。
いつものジャンプシュートの体勢である。
それを見た三人は一斉にアインツに向かって魔法を放つ。
「ウインド・ツー!ストーム・リフレクション!」
「ウォーター・ツー!スプラッシュ・バースト!」
「ウッド・ワン!ラピッド・バンブー!」
ジェットは壁の障壁を作り、ツクオは無数の水弾を放ち、アッサは竹の槍をアインツに向けて伸ばす。
アインツはこの絶体絶命の状況の中でボールを投げた。
ゴールではなく、上空に向かって。
「「「なんだと!?」」」
三人が驚く中、一人の男がそのボールを目掛けて飛び上がった。
そう、ヴァリーである。
三人がアインツに気を取られている間にヴァリーはアッサの足止め地帯を突破する。
そして、アインツに向かって全力で走っていた。
ヴァリーはアインツがシュートの体勢に入った瞬間に、アインツの意図に気づき石の塔を階段状にしながら上空に駆け上がる。
そして、上空に上がったボール目掛けて飛び上がったのだ。
「後は頼んだよ。ヴァリーくん」
アインツは三人の攻撃を受けてその場に倒れる。
「任せろ!絶対に決める!」
ヴァリーは身体を弓のようにしならせ、腕を振り上げながらそのボールを打つ。
それはまるでバレーボールのスパイクのようであった。
「いっけぇ!!」
ヴァリーの放ったスパイクは、ジェットの障壁の更に上から水晶柱に突き刺さる。
その瞬間、Aチームに100ポイントが加算され逆転した。
「よっしゃあぁぁぁ!!!」
ヴァリーの叫び声と共に「ピピィー!!」と試合終了のホイッスルが鳴る。
Aチームが時間ギリギリの中、なんとか勝利を掴み取ったのだ。
ヴァリーは大急ぎで倒れているアインツの元へ行く。
アインツは疲れ切った様子ではあるが、なんとか意識を保っていた。
「アインツ勝ったぞ!俺達の勝利だ!」
「ヴァリーくん。本当にありがとね」
アインツはそう言うと力なく意識を失う。
ヴァリーはそんなアインツに肩を貸して、フィールドの外へと連れ出した。
フィールドの中ではツクオが大泣きしながら地面を叩いていた。
「ちくしょう!ちくしょう!」
ツクオはアインツを止められなかったことが本気で悔しかった。
ツクオがずっと地面を叩いていると、アッサがツクオの腕を掴んで止める。
「もうやめろ。俺達は全力を出して負けた。それが全てだ。受け入れろ」
アッサは自分の力が足りないことをこの試合で理解した。
アインツやヴァリーと会い、自分よりも強いやつがいることを理解した。
でも、そんなアッサを見てツクオは泣きながら叫んだ。
「じゃあなんでお前はそんなに泣いてるんだよ!」
そう、ツクオの腕を止めたアッサもまた涙を流していた。
頭では負けた理由を理解していても、悔しい感情が抑えられるわけではない。
だが、アッサはこの悔しさを糧に前へ進もうとしていた。
自分が目指す最強への道を。
試合終了
Aチーム430:Bチーム360




