覚醒する光
現在Aチームは30点差で負けている。
そしてAチームの残りマナは170ポイント。
Bチームの残りマナ210ポイントと比べても少ない。
つまり、Aチームが勝利するには、Bチームの攻撃を少なくとも1回は妨害し、尚且つゴールを決めないといけないということだ。
かなり厳しい条件である。
しかし、逆に考えればAチームが勝利する可能性はまだ残っていた。
最後の希望を胸にAチームはマナの配分を考える。
そしてジャドンの考えた作戦は意外なものであった。
「残りのマナを全て、ヴァリーとアインツくんで分配する。ヴァリーが100ポイント、アインツくんが70ポイントだ」
二人はその作戦を聞いて息を飲む。
この試合を左右する最終ポイント、それが決まるかどうか二人にかかっているのだ。
ヴァリーはジャドンにこの作戦に至った経緯を聞く。
「どうして、俺とアインツなんですか?ジャドン先輩の方が経験も技術も上だと思うんですけど…」
ヴァリーは冷静に自分の実力を判断して、ジャドンの方が適任だと思っていた。
実際ヴァリーはともかく、アインツに関しては明らかに使える魔法の種類が少ない。
ジャドンの方が臨機応変に対応できるとヴァリーは考えていた。
だが、ジャドンがこのような作戦にしたのには理由がある。
「俺はここで守備に戻る。だから攻撃役を任せるのはケニーだ」
ジャドンはこの最終局面で再びケニーを攻撃役に戻そうとしたのだ。
ケニーはスリングショットを両手で撃つ関係で、ボールを持つことができない。
だから、アインツとヴァリーにボールを任せようと思ったのだ。
ジャドンの作戦を聞いて、ヴァリーは納得する。
元々攻撃役のケニーに防御役のジャドン。
それぞれ適切なポジションにいた方が、全力を発揮することができるはずである。
それが理解できたからこそ、ヴァリーはこの作戦を受け入れた。
そして、アインツもジャドンを信頼してボールを受け取る。
「必ずゴールを決めてみせます」
アインツは今、このチームで勝ちたいと強く願っていた。
初めてのアルマの試合、初めて共に戦う仲間、このチームで勝ちたいと。
アインツのボールを持つ手に力が入る。
それは武者震いにも似た感覚だった。
そんなアインツの様子を見てヴァリーも察する。
ヴァリーはアインツの肩に手を置くと、お互い顔を向き合って激励する。
「この試合必ず勝とうぜ」
「うん!絶対勝つよ」
そんな二人を先輩達は温かく見守っていた。
こうして三人で攻めることになったAチームだが、今回の作戦ではボールを持ってないケニーが先行し、アインツとヴァリーがその後を付いて行きながら両サイドを警戒していた。
今回三人が攻めているのは中央のラインである。
なぜ中央から攻めるかというと、それは敵に遭遇しやすいからである。
Aチームが勝利するためには、敵を倒すことも重要になって来る。
だからこそ、敵に遭遇しやすい中央のラインを選択したのだ。
しばらく走っていると、先行しているケニーがセンターライン付近で待つザラの姿を見つける。
ザラの周囲に仲間はいない。
「いくらなんでも一人で不用心すぎるネ。二人とも、奇襲がないか両サイドを警戒するネ」
「「了解!」」
三人は周囲を警戒しながら、徐々にザラへ近づく。
一方のザラは余裕そうな表情で三人が来るのを待っていた。
ザラからすると、ここでAチームのボールを失わせればそれで勝利確定。
ここで三人を迎え撃つことは、むしろ好機である。
ザラはタイミングをみて合図を出す。
「さぁ!楽しもうか!最後の戦いを!」
ザラの声に反応して、サイドの芝に潜んでいたシグルムは三人へ攻撃を仕掛ける。
「ウインド・ワン!ダンシング・ディスク!」
シグルムの飛ばしたフリスビー二枚はアインツに向かって飛んでいく。
だが、奇襲を警戒していたアインツとヴァリーは、すぐさまそれに反応する。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
「ファイヤー・ワン!バーニング・ショット!」
二人はシグルムのフリスビーを撃ち落とす。
二人の素早い行動に、敵であるシグルムも関心していた。
「なかなかよい反応速度だ。ここでの出し惜しみは逆に失礼というもの」
シグルムは次に四枚のフリスビーを回転しながら連続で投げる。
その攻撃をアインツとヴァリーは二人で撃ち落としていった。
その様子を見て安心するケニーと笑みを浮かべるザラ。
ザラはケニーがボールを持っていないことを確認する。
「ジャドンらしい作戦だな。最後の花は将来有望な少年達に譲ろうというわけか」
「いい作戦だよネ。ザラさんがここでやられてくれれば、作戦成功ばんばんざいなんだけど」
そんなケニーに対してザラは声を出して笑う。
「全力を出してくる相手に手加減をするなど無粋だな。それに俺は負けるのが嫌いでね。全力で倒させてもらうよ」
ザラはケニーとの会話を終えると、いつものようにシマエナガを三羽作り出しケニーに突撃させる。
ケニーはそれをスリングショットでどんどん撃ち落としていった。
ここまでは互角、問題はザラのタラリア・ウイングだ。
スピード強化されたザラに近づかれると、ケニーは一気に不利になる。
それがわかっているからこそ、ケニーはザラの行動をずっと警戒していた。
しかし、ザラはここでタラリア・ウイングを使わない。
むしろ、どんどんシマエナガやトンビを量産していた。
「どういうことネ?これだけ出せばマナの消費は激しいはずなのに…」
ケニーはザラの狙いに気づかないまま、全力で鳥を撃ち落としていく。
しかし、しばらく経つと物量で上回るザラの鳥がどんどん三人を上空から囲んでいく。
ザラはその様子を見て次の行動に移った。
「頃合いだな。シグルム、あれをやるぞ!」
「御意!」
ザラの声に応じたシグルムは、フリスビーを大量に投げ始める。
しかし、今までと違ってシグルムの投げたフリスビーはアインツ達に向かわずに、上空の鳥達目掛けて飛んでいく。
それを見てケニーはすぐさま二人に指示を出す。
「シグルムの狙いがズレることはないネ。アインツくん!ヴァリー!上空に注意するネ!」
「「了解」」
二人はケニーの指示通り上空を警戒する。
すると、シグルムの投げたフリスビーはザラの鳥達に当たると勢いよく弾き飛ばされ反射する。
それはまるでピンボールの玉のように、あちこちに跳ね返りながら予測不可能な動きをしていた。
「あまりにも早い動きで狙いが定まらないネ」
ケニーをはじめ、アインツとヴァリーもフリスビーを撃ち落とすのは難しい状況だった。
そんな中、一個のフリスビーが急にアインツに向かって飛び出す。
アインツはそのフリスビーを後ろに下がってなんとか回避した。
しかし、次の瞬間ヴァリーの叫び声が聞こえる。
「アインツ!後ろだ!」
アインツが振り返ると、シグルムの投げたフリスビーが二枚、アインツに向かって飛んでいく。
アインツはすぐにサンライト・ショットで応戦するが撃ち落とせたのは一枚のみ。
もう一枚のフリスビーはアインツの肩を直撃した。
「しまった!」
アインツはシールド値を700に減らす。
その様子を見てザラは満足気であった。
「突発的なアイデアであったが、上空と横からの同時攻撃はなかなか有効なようだな」
ザラが作り出したのは、時間差による同時攻撃である。
ザラの作り出した鳥たちが、シグルムのフリスビーを反射させ、攻撃のタイミングを遅らせる。
そして、上空のフリスビーが飛び出すタイミングに合わせてシグルムが再びフリスビーを投げる。
こうすることで、違う角度からの同時攻撃を可能としたのだ。
ザラがずっと鳥を生み出し続けたのはこのためである。
シグルムは更にフリスビーを上空へ撃ちだす。
こうなってくると三人にはどこから攻撃が来るのかわからない。
ケニーは必死に対策を考える。
「ヴァリーのタワーって言うのは、どのくらい攻撃を防げるネ?」
「横からの攻撃は大体防げますけど、上から来るやつは無理ですね」
それを聞いてケニーは覚悟を決めた。
「ヴァリー、僕をタワーで上空に連れて行ってくれないか?上の鳥達を先にどうにかするネ」
ケニーの狙いはザラの生み出した鳥達だった。
フリスビーを反射するには、ザラの鳥達が必須である。
そのため、ザラの鳥を先に倒せば、フリスビーによる攻撃をある程度防げると考えたのだ。
「いいですけど、タワーの上だと逃げ場がないですからね。気を付けてくださいよ」
ヴァリーの言葉にケニーは頷いて返事を返す。
それを見て、ヴァリーも覚悟を決めた。
「アース・ツー!ロック・タワー!」
ヴァリーはケニーの足元から塔を作り出し、ケニーを上空へ持ち上げる。
上空ではフリスビーが激しく飛び交っている状態だが、ケニーは鳥達を中心にスリングショットで狙い撃つ。
「ターゲットが近くなった分、当たりやすくなったネ」
だが、ここが危険地帯であることにはかわりがない。
ケニーは飛び交うフリスビーを回避しながら、鳥を撃ち落としていく。
それを見てヴァリーとアインツも動く。
上空からの攻撃が緩んだ隙に、シグルムへ突撃を仕掛けたのだ。
「アインツ!出来る限りシグルムさんへ直接攻撃するぞ!そうすれば上空へフリスビーは送られない」
「わかった!どんどん撃ちこむよ!」
ヴァリーとアインツは走りながら、シグルムに向けて魔法を放つ。
シグルムはフリスビーを使ってその攻撃を防ぐが、次から次に飛んでくる二人の攻撃に徐々に防御が間に合わなくなってきた。
「この二人、確実に魔法を撃つ速度が上がっている!」
シグルムの言う通り、この試合の中でアインツとヴァリーは魔法を発動する早さがかなり上がっていた。
それは試合に勝ちたいという強い思いからである。
先輩達との戦いの中で、半ば強制的に引き上げられた二人の能力は、試合前とは比べ物にならないほど成長していた。
シグルムを追い詰めるほどに。
シグルムは二人の猛攻を受けてシールド値を300まで減らす。
「あと少しだアインツ!」
「いっけぇ!!!」
二人は更に魔法を放つ勢いを増していく。
だが、そんな二人の背後からとてつもなく大きい爆発音が響き渡る。
二人が後ろを振り返ると、崩れ倒れていく石の塔とその上から落下してくるケニーの姿があった。
「あぶない!」
アインツは思わずケニーの所へ走り出す。
そして、間一髪落ちて来るケニーを身体で受け止めることに成功した。
「アインツくん。ありがとうネ」
「ケニーさん。一体何が…」
アインツが崩れ行く塔を見ていると、土煙が舞い上る中、こちらを見ているザラの姿を確認した。
ザラは塔の一部分に攻撃を集中させ、無理やり石の塔を倒したのだ。
その結果、ケニーの攻撃は途中で中断され、上空には今もまだ鳥とフリスビーがいくつか残っている状態だった。
ザラはケニーとアインツに対して、今までと違い多少焦った雰囲気を見せる。
「なかなか手こずらせてくれるね。さすがにここまでしないといけなくなるとは思わなかったよ」
ザラはヴァリーの作った石の塔を崩すのに、更に大量のマナを消費した。
そうしなければ、現在の有利な状況をひっくり返され、シグルムがやられてしまう可能性があったからだ。
「だが、塔を崩した成果はあったようだね。ケニーを倒すには至らなかったが、おかげでアインツくんが釣れた。これでシグルムはヴァリーと心置きなく1対1で戦うことができる」
アインツがケニーを助けに飛び出した結果、ヴァリーは今シグルムと1対1で戦っている。
先ほどまではアインツと二人でシグルムを押していたが、現在はヴァリーが若干押され気味で少しずつダメージを受けていた。
今すぐにでもアインツは助けに行きたかったが、目の前にいるザラという強敵がそれを許してくれない。
アインツにできることはただ一つ。
ここでザラと戦うことである。
アインツの判断は早かった。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
アインツはザラに向けて渾身の一撃を放つ。
しかし、ザラはそれをシマエナガで簡単に防いだ。
「アインツくん、それは甘いよ。私のシマエナガは一度に三羽作り出すことができる。君の魔法がいくら速くても攻撃を当てることはできないよ」
ザラの言う通り、アインツの攻撃はザラまで届かない。
だが、ここにはケニーもいる。
二人ならもしかするとザラに攻撃が届くかもしれない。
そう思っていた。
だが、二人がザラへ攻撃を始める前に上空で異変が発生する。
ザラの鳥が次々に爆発を始めたのだ。
そして、その爆発の勢いを乗せたフリスビーが雨のように二人に降り注ぐ。
「ディスク・レインとでも呼ぶべきかな?ボーっとしてると一気にシールド値を削られるよ?」
「くそ!」
アインツは狙いを上空のフリスビーに変えて、魔法を放つ。
同じ様にケニーもスリングショットを使って撃ち落としていくが、それでも撃ち落とせなかったフリスビーがいくつか二人に降り注ぐ。
「アインツくん!危ない!」
ケニーはギリギリまでアインツを庇いながら、フリスビーを撃ち落としていく。
しかし、全てを撃ち落とすことはできずに、ケニーはシールド値を300まで削られる。
「ケニーさん!」
アインツはケニーの身体を支える。
上空のフリスビーはなくなったものの、すでにアインツとケニーはかなりのダメージを受けていた。
それに対して未だにザラは無傷である。
「そろそろ終わりにしようか」
ザラはシマエナガを生み出し、アインツ達に向かって飛ばす。
アインツとケニーはそれを必死に防ぎながら、なんとかザラを攻略できる方法を考える。
そして、アインツは一つのアイデアを思いつく。
「ケニーさん!少しの間防御をお願いします!」
「アインツくん?わかった。やってみるネ」
ケニーはアインツに言われた通り一人でシマエナガを撃ち落としていく。
その様子にザラは異変を感じる。
「どうした?一体何を考えている?」
ザラの攻撃を必死に耐えているケニーに対して、アインツは動かない。
だが、アインツの右手には光り輝くマナが集まっている。
アインツが何かしようとしているのは確かだった。
ザラはアインツが何か企んでいると思い、それを防ぐため次の行動に出る。
「ウインド・ツー!タラリア・ウイング!」
ザラは足首から翼を生やす。
これを使えばザラの脚力は強化され、一瞬でアインツに近づける。
ザラはそう考えた。
しかし、ザラが動くよりも先に動いたのはアインツの方だった。
「いまだ!ライト・ワン!サンライト・ショット!」
アインツはザラの目の前の地面に向けて、サンライト・ショットを放つ。
ザラの足元で爆発が起こり、その爆風がタラリア・ウイングに直撃する。
「何!?」
突然の爆風で足元から浮かされたザラはバランスを崩す。
「ケニーさん!今です!」
「わかってるネ!」
ケニーはザラに向けて渾身のスリングショットを放つ。
バランスを崩したザラはそれを防げず、シールド値を700に削られる。
ザラはこの試合で始めてダメージを受けた。
そんなザラの表情は焦りと喜びが入り混じった複雑な表情をしていた。
ここにきてアインツの成長が恐ろしくもあり、楽しみでもあったからだ。
「アインツくん。君は本当に楽しませてくれるね」
ザラはユニフォームに付いた砂ぼこりを払いながら、崩れた身なりを整える。
あまりにも余裕そうなその振舞いから、アインツ達は攻撃を躊躇う。
ザラは深く息を吸うと、足に力を入れた。
「次はこちらの番だな」
ザラは超加速して一気にアインツ達に襲い掛かる。
アインツとケニーはそんなザラに向けて同時に魔法を放つ。
だが、二人の攻撃をザラはハードルを越えるようにうまくジャンプしてかわす。
そして、ケニーとすれ違い様に横からシマエナガを突撃させる。
ケニーは吹き飛ばされ、シールド値が0となった。
「ケニーさん!」
アインツは倒れたケニーに駆け寄る。
ケニーはアインツの顔を見ると、アインツの手を掴んでこう言った。
「あとは頼んだネ」
そしてケニーは意識を失う。
ザラはケニーを倒したことを確認すると、また余裕の笑みを浮かべる。
「まずは一人」
ザラは人差し指を立て、アインツにアピールをする。
アインツの中で怒りの感情が沸々と湧き上がる。
だが、それと同時にアインツはザラへの攻略法を考えていた。
ザラは超加速でこちらに近づいてくる。
それを防がなければ、アインツは勝てない。
だが、アインツのサンライト・ショットでは、一時的な足止めしかできなかった。
「何か!もっと足止めできるような何か!何かが欲しい!」
アインツがそう願っていると、右手に集めた光のマナがいつもとは違う輝きを放ち始める。
アインツはその変化に驚くが、迫りくるザラに対してやぶれかぶれで魔法を放った。
「どうにかなれ!」
アインツの放った魔法はいつもの光の弾ではなく、光の十字架になってザラに向かって飛んでいく。
「何ぃ!?」
突然の出来事に動揺が隠せないザラは急ブレーキをかける。
アインツの投げた十字架はザラの目の前の地面に突き刺さった。
「なんだこれは?」
ザラは恐る恐るその光の十字架に触ってみる。
光は異常なまでに熱く、ザラはすぐに手を引っ込める。
「新たな魔法か。でもそんなもの使えるとは聞いてないぞ」
ザラはアインツの方を向く。
当の本人であるアインツも、その光景に驚いた表情を見せていた。
そう、これはアインツも知らない魔法。
アインツの強い思いが魔法に変化をもたらせたのだ。
ザラは十字架を避けて再びアインツに近づこうとするが、アインツはまたもや光の十字架を放ちザラの行く手を妨害する。
「できる!僕にもできるぞ!」
「なんなんだ!その力は!」
ザラはアインツへシマエナガを放つが、アインツの放った十字架はそのシマエナガを全て焼き払う。
サンライト・ショットとは違い、光の十字架はその場に一定時間残るようだ。
そのおかげでアインツはザラの攻撃を防げるようになった。
これにはさすがのザラも焦りの色をみせる。
「何かないのか!?この十字架の弱点は!?」
ザラは自分ができることを一通り試してみる。
まず、シマエナガの攻撃は十字架に防がれた。
そして、タラリア・ウイングによる超加速も、手前に十字架を出されることで進行ルートを塞がれる。
「だったらこれはどうだ!」
ザラはトンビを生み出す。
トンビはアインツを上空から狙う。
これに対してアインツはサンライト・ショットでトンビを撃ち落とす。
そこでザラは気が付いた。
「そうか!射程か!」
アインツの出す十字架は短い距離しか飛ばせない。
そのため、トンビのように離れた敵を攻撃するのには向いていないのだ。
それに気づいたザラはシグルムを呼ぶ。
「シグルム!もう一度ディスク・レインをするぞ!」
ザラの声に気づいたシグルムは、ヴァリーの相手をやめてザラに駆け寄る。
ザラは大空に鳥を放ち、アインツの上を旋回させる。
そして、シグルムはその空間にフリスビーを投げ、再びピンボールのように跳ねさせた。
アインツは上空の鳥を撃ち落としていくが、次々と追加される鳥達を相手に手数が足りない。
ある程度の数が揃ったところで、ザラは再び行動を起こした。
「これで終わりだ!ディスク・レイン!」
ザラは鳥を爆破させ、フリスビーをアインツに向かって一気に飛ばす。
四方八方からアインツに迫るフリスビー。
アインツに逃げ道はない。
アインツが少しでも多く、フリスビーを撃ち落とそうとしたその時、アインツの耳に叫び声が聞こえた。
「飛べ!アインツ!」
叫んだのはヴァリーだった。
ヴァリーに言われた通り、アインツは飛び上がる。
すると、地面から石の塔が飛び出し、アインツを乗せて急上昇する。
アインツはギリギリのところでフリスビーの攻撃を回避したのだ。
そして、逆に高所をとったアインツは、ザラを攻めるなら今だと思い攻撃を行う。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
「なめるなよ!」
ザラはシマエナガを出して、アインツの攻撃を防ぐ。
防御では手数の多いザラの方が上だ。
だが、そんなザラにも弱点があった。
それは、油断である。
「後ろがおろそかになってるぜ。ザラ先輩」
「なんだと!?」
ザラのすぐ後ろにはヴァリーが構えていた。
ヴァリーは石の塔を作った後、すぐにザラを攻撃できるよう走っていた。
アインツはそれを知っていたからこそ、注目を集めるため攻撃をしたのだ。
ヴァリーの右手には赤く輝く火のマナが十二分に作り出されていた。
「食らえ!ファイヤー・ワン!バーニング・ショット!」
ザラの背中に火弾が突き刺さり、大爆発を起こす。
「ザラ様!」
シグルムは怒り混じりにヴァリーへ攻撃を仕掛ける。
ヴァリーはそれを避けながら徐々にザラから距離を取った。
ヴァリーの攻撃を受けたことで、ザラのシールド値は400となる。
追い詰められたザラは、改めてアインツとヴァリーが末恐ろしい存在だと認識した。
「本当に君たちには驚かされるばかりだよ。だが、まだここで負けるわけにはいかない」
ザラはタラリア・ウイングを出し、塔の上のアインツを狙って三角飛びをする。
塔の上であれば逃げ場はないと判断したからだ。
そんなザラに対してアインツは光の弾で攻撃を仕掛けるが、ザラはシマエナガで完全に防御する。
ヴァリーはアインツを助けようとするが、シグルムに阻まれて身動きが取れない。
そうこうしてるうちにザラは塔を完全に登り、アインツよりも更に高い上空へと蹴り上がる。
「これで終わりだ。ウインド・ツー!アサルト・バーズ!」
アインツに向けて三羽のシマエナガが襲い掛かる。
だが、アインツには策があった。
「ライト・ワン!シャイン・クルス!」
アインツは光の十字架を自分の目の前に作り出す。
ザラのシマエナガは次々とアインツの作り出した光の十字架に当たり爆散していく。
もちろん、この間にアインツは爆風によるダメージを受け、シールド値は400まで削られる。
しかし、ザラに隙ができた瞬間をアインツは逃さない。
アインツの左手にはボールではなく光のマナが集まっている。
そう、アインツはボールを塔の上に置き、左手にも光のマナを集めていたのだ。
ザラはアインツを倒すことに必死でその事実に気づかなかった。
アインツは左手を前に突き出し、ザラへ渾身の魔法を放つ。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
アインツの放った不意の一撃はザラの腹部を貫き、ザラを撃ち落とす。
しかし、ザラのシールド値はまだ100残っている。
アインツはザラを追撃するべく、再びボールを持ち塔から飛び降りる。
シグルムはザラが落ちてくるのを見た瞬間、ザラの落下地点へと駆け寄る。
同じくヴァリーもそのシグルムを追いかけた。
ザラは落下しながらも、タラリア・ウイングを使い落下速度を落とそうとする。
しかし、そんなザラに襲い掛かってきたのはアインツだった。
アインツは着地のことなど一切考えず、ザラに向かって落下していく。
そして、態勢が悪い状態ながら再び魔法を放った。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
アインツの放った光の弾がザラに襲い掛かる。
これが直撃すればザラのシールド値は0となる。
しかし、実際はそうならなかった。
ザラとサンライト・ショットの間にシグルムが割って入る。
それは、まるで主君を守る家来のように、シグルムは身体を張ってザラを守ったのだ。
「あとは頼みました。ザラ様」
光の弾がシグルムの身体を貫く。
シグルムはこれによりシールド値が0となった。
ザラは倒れたシグルムを抱えて、地面に着地する。
そして、アインツは光の十字架を塔に突き刺して、それを掴んで地面に激突するのを避ける。
光の十字架はアインツが触る場合のみ熱くならず普通に持つことができた。
これはアインツが無意識のうちに、行っていたことである。
アインツが地面に着地すると、すぐにヴァリーがそばに駆け寄って来た。
「アインツ?その魔法は?」
ヴァリーはアインツの新しい魔法を見るのが初めてだった。
「僕にもよくわからないんだ。気が付けば使えるようになってて…」
シャイン・クルスはアインツの強い思いが反映されて生み出された魔法である。
そのため、直感的に魔法の使い方はわかるものの、原理を説明するのは難しかった。
だが、ヴァリーはそれで納得をする。
「わかった。今はザラ先輩を倒すことを優先しよう」
ヴァリーはすぐに頭を切り替え、ザラを倒すことに集中する。
シグルムを倒したことにより、残る障害はザラ一人となった。
さすがのザラもこの状況は想定外である。
「ほんと君たちは恐ろしい存在だよ。だが、ここで負けるわけにはいかない!」
ザラはこの状況でも引く気はない。
それはザラのプライドが許さなかった。
ザラはアインツ達に対して先制攻撃を仕掛ける。
「ウインド・ツー!アサルト・バーズ!」
三羽のシマエナガがアインツ達を襲う。
だが、アインツは冷静だ。
「ここは僕に任せて!ライト・ワン!シャイン・クルス!」
アインツの放った十字架はシマエナガを一気に倒す。
だが、その隙にザラは超加速でヴァリーに近づき攻撃を仕掛ける。
「この距離なら防げまい!ウインド・ツー!アサルト・バーズ!」
ザラはヴァリーの至近距離でシマエナガを放つ。
それを見たアインツはザラへ攻撃を仕掛けようとするが間に合わない。
「ヴァリー!!」
アインツが叫んだのとほぼ同時に、ヴァリーの身体が吹き飛んだ。
アインツはヴァリーがやられたものと思い、怒りに任せてザラを攻めようとしたが、ザラの表情を見て冷静さを取り戻す。
何故ならザラは驚きと悔しさが入り混じったような表情をしていたからだ。
吹き飛ばされたヴァリーはその場で立ち上がる。
ヴァリーはやられてはいなかった。
ヴァリーはザラが超加速で近づいてくることを読んでいたのだ。
その上でザラが接近してきた瞬間に、地面から石の塔を斜めに作り出し、自らの身体を後ろに押し出したのだ。
そうすることでザラの攻撃を塔で防ぎつつ、距離を取ることに成功した。
そして、これによりアインツとヴァリーがザラを挟み撃ちする形ができあがる。
「アインツ!今だ!」
「わかった!これで決める!」
二人に挟まれたことでザラは逃げ道がなくなる。
例えどちらかを優先して攻撃したとしても、自らの敗北は逃れられなかった。
「それならば!片方を道連れにする!」
そして、ザラがターゲットに選んだのは、近いアインツの方だった。
ザラはシマエナガを防がれないようアインツの至近距離に近づこうとする。
そんなザラに対してアインツはすぐさま十字架を作り出した。
「ライト・ワン!シャイン・クルス!」
アインツの放った光の十字架はザラの行く手を阻む。
しかし、ザラは今回に限っては止まることをしなかった。
「うおおおおおおおおお!」
ザラはダメージ覚悟で十字架を踏みつけ、飛び上がる。
ザラのシールド値は削れるが、まだ0にはなっていない。
飛びあがったザラは上からアインツに襲い掛かる。
「ウインド・ツー!アサルト・バーズ!」
ザラの攻撃に対して、アインツも引かず前進することでシマエナガの突撃をかわそうとする。
アインツの身体にシマエナガがかすり、シールド値をわずかに削るがアインツは無事だ。
そして、魔法を放った直後のザラに対してアインツは攻撃を仕掛ける。
「いっけぇ!ライト・ワン!サンライト・ショット!」
「しまったぁぁぁぁ!」
ザラの胸にアインツの攻撃が直撃する。
ザラが吹き飛ばされた方角には、すでにヴァリーが待ち構えている。
ヴァリーは右手にありったけの火のマナを作り出していた。
「こいつでとどめだ!ファイヤー・ワン!バーニング・ショット!」
ヴァリーの放った火弾はザラの背中に直撃し、ザラのシールド値を0にする。
ザラはその場に仰向けに倒れこんだ。
これによりザラとシグルムが持っていたポイントは失われる。
アインツはその場でガッツポーズをした。
「よかった!勝てて本当に良かった」
アインツからするとかなりプレッシャーがかかる中での戦いだった。
そんなアインツの肩を叩き、褒めたたえるのはヴァリーである。
「アインツほんとよくがんばったぞ!まさかザラ先輩を倒せるなんて思ってなかったからな」
ザラを倒したことでAチームは勝利へ大きく前進した。
しかし、まだ終わりではない。
Aチームが逆転するには、アインツかヴァリーがゴールを決めないといけないのだ。
「後は僕たちがゴールを決めるだけだよ!仲間のためにも絶対このボールをゴールに決めなきゃ!」
「そうだな。この戦い必ず勝利するぞ!」
アインツとヴァリーは再びゴールに向かって走り出す。
Aチームの勝利のために。
現在 Aチーム330:Bチーム360




