投石
Aチームのヴァリーは右サイドから攻めていた。
それはザラがこちらに来ると想定してのことだ。
しかし、実際に現れた敵はアッサだった。
ヴァリーはどうしたものかと考える。
ヴァリーは前半もアッサと戦ったが、その時はシールド値のリードで勝たせてもらったようなものだった。
今回は後半戦に入ったばかりで、お互いのシールド値は1000へとリセットされている。
つまり、条件は五分でヴァリーが有利というわけではない。
しかも、アッサとヴァリーが持っているボールは同じ50ポイントである。
攻めるにしても守るにしても、単純に勝利した側が有利になるというわけだ。
もちろん、ここで勝負を避けて相手ゴールに向かうという手もある。
だからこそ、ヴァリーは悩んでいた。
そんなヴァリーに対して、アッサも勝負を仕掛けるべきか悩んでいる。
アッサは前半戦でヴァリーに負けた。
もちろん、シールド値が低かったという理由はあるが、実際に戦ってみてヴァリーは手ごわい相手だということはわかっていた。
ここでしっかり止めることができればいいものの、もし負けてしまえばそれこそ相手に流れを持って行かれる可能性がある。
アッサとしてもヴァリーを攻めるには少し躊躇いがあった。
二人は距離を取ったまま、お互いににらみ合う。
緊張した時間がしばらく流れた後、行動を起こしたのはヴァリーであった。
ヴァリーはアッサに向かって突撃を開始する。
そんなヴァリーに対してアッサは妨害魔法をまず放つ。
「ウッド・ワン!ロード・ヴァインズ!」
地面からつるがいくつも飛び出し、ヴァリーの行く手を妨害する。
だが、ヴァリーはそのつるの生えた地面に向け、火の魔法を放った。
「ファイヤー・ワン!バーニング・ショット!」
火球はつるの生えた地面に当たると、爆発を起こしつるを燃やす。
ヴァリーはまだ火が完全に消えてない中、足場になるくらい低い塔を作り出し、炎を海を超える。
そんなヴァリーに対して、アッサは竹の棒を作り出し横に薙ぎ払う。
ヴァリーはその攻撃をジャンプで避け、すかさずアッサに向かって攻撃を仕掛けた。
「ファイヤー・ワン!バーニング・ショット!」
だが、アッサもそれは読んでいる。
「ウッド・ワン!グラス・クッション!」
アッサは草のクッションを作り出し、ヴァリーの火球をなんなく防ぐ。
そして、ヴァリーとの距離を保つため後ろに下がった。
同じ様にヴァリーもその場に止まって追撃をしない。
それは何度攻撃してもアッサに防がれるとわかっていたからだ。
二人はお互い前半戦で手の内を見せたことにより、攻撃が通りにくくなっていた。
ヴァリーは改めて攻め方を考える。
「一発狙いの一撃は通らない。しかも、ここを素通りさせてもらえるほど甘くはないか」
こうなった場合、お互いにけん制しながら隙を待つしかないのだが、今はAチームが負けている状態。
時間が経てば不利になるのはヴァリーの方だった。
ヴァリーは自分が今できることを必死に考える。
ヴァリーが今使える魔法は火と土である。
火の魔法は攻撃として使えるがレベル1までなのでアッサに防がれやすい。
土の魔法はレベル2が使えるが、それはあくまでも塔を建てるなど補助的な役割である。
岩を飛ばすなどの攻撃魔法は覚えていなかった。
その中でアッサを追い詰める手段をヴァリーは考えていた。
火と土の相性を考えた末に、ヴァリーは一つのアイデアを生み出す。
「いっちょやってみるか」
ヴァリーは自分の足元に塔を作り出し、アッサに対して高所を取った。
アッサはヴァリーの意図が読めず、ある程度の距離を保ったまま、ヴァリーの様子を伺う。
ヴァリーは塔の上から片手に収まるくらいの石を取り出し、それを思いっきりアッサに向けて投げた。
「はぁ!?」
まさかのパワープレイに驚きながらもアッサは投石を回避する。
シールドがあるから大丈夫とはいえ、普通に当たるとそこそこなケガをするサイズだ。
それをヴァリーは次々にアッサに向けて投げる。
アッサは投石の雨を避けたり防いだりしながら無傷でやり過ごす。
ヴァリーの攻撃はしばらく続き、気が付けばアッサの周りは石だらけになっていた。
あまりにも続くヴァリーの単純な攻撃にアッサはイライラを募らせる。
「降りてこいヴァリー!そんな攻撃じゃ俺に一切ダメージを与えられないぞ!」
そんなアッサの様子を見て、ヴァリーもそろそろ頃合いだと思った。
「こっちも投石程度でお前にダメージを与えられると思ってないさ」
ヴァリーはようやく投石を止めて、アッサに向けて火の魔法を放つ。
「ファイヤー・ワン!バーニング・ショット!」
ヴァリーの放った火球はアッサに向けて飛んでいく。
いや、正確にはアッサの周りに散らばった石ころに向かって火球は飛んで行った。
アッサが避けた火球は石ころに当たった瞬間、大きく炎を上げる。
「なんだと!?」
アッサは炎を見て瞬時に後ろに飛ぶ。
かろうじてダメージは受けなかったが、炎は周りの石ころにも連鎖し、あっという間にアッサを囲むようにして炎の壁になった。
これがヴァリーの本当の狙いである。
「その石には原油が多く含まれている。よく燃えるぜ」
ヴァリーが建てた塔は井戸のように中が空洞で、地中深くにある原油を含んだ石を運んで来ていた。
ヴァリーはその石をアッサに投げつけていたのである。
アッサは周囲を炎に囲まれて身動きが取れないようになっていた。
ヴァリーはその間に塔から飛び降り、アッサを追撃せずそのまま敵陣に向けて走り出す。
「おい!待て!勝負しろ!」
身動きが取れないアッサが叫ぶが、ヴァリーは足を止めない。
「俺はお前の相手をしてるほど、暇じゃないんだよ」
ヴァリーはそう言って、この場を後にした。
ここでアッサを倒さないのには理由がある。
ヴァリーは出来る限りアインツ達と同時に攻撃を仕掛けたかったからだ。
そのため、ここで時間をかけてタイミングがズレることは避けたかった。
相手のマナを減らすよりも、得点を決めることを優先したのだ。
こうしてヴァリーはアッサの妨害を突破し、アインツ達との合流を目指す。
相手ゴールをみんなで一斉に攻めるために。




