挟み撃ち
まもなく後半戦がスタートする。
Bチームは水晶柱に手を触れながら、試合開始を待っていた。
ザラはその間に作戦の再確認を行う。
「いいかい?ハーフタイムを得て、相手はしっかりと作戦を練っているだろう。だが、こちらは70点のリードがある。序盤は焦らずに相手の出方をしっかり伺うとしよう」
Bチームの作戦指揮はザラに移行していた。
もちろんツクオがVPであることには変わりないのだが、ハーフタイム中にツクオが考えた作戦はザラにことごとく論破され、今に至る。
そのせいで、ツクオは苦虫を潰したような表情になっていた。
「ピピィー!!」とホイッスルが勢いよく鳴らされる。
後半戦のスタートである。
「では、皆の健闘を祈る」
ザラ、アッサ、シグルムの三人はボールを持って走り出す。
今回、中央のラインから攻めるのはザラである。
ザラは前半戦の経験上、自分を止められるものはAチームにいないと考えていた。
なので一番距離が短い中央のラインをザラが使用することにしたのだ。
アッサはBチームから見て左サイド、シグルムは右サイドから相手ゴールを攻める。
点数がリードしているBチームは、無理をして攻める必要はない。
実際ボールに込めたマナもザラが70ポイント、アッサとシグルムに関しては50ポイントと控えめだった。
これは攻撃してポイントを得るというよりも、相手の攻撃を潰すことに専念するため、低めに設定したのである。
ザラはAチームが負けていることから、序盤に大きく攻めて来ると考えていた。
そのため、Bチームとしてはポイントを温存して、相手のポイントを削っていく方を優先したのだ。
ザラはしばらくフィールドを走り、センターラインを越えた辺りなると違和感を感じ始める。
そろそろAチームの敵と遭遇してもおかしくない段階であるが、ザラの周囲では一切人の気配が感じられなかった。
ザラは走りながら現在の状況について思考する。
「一番攻めやすいセンターを抜いて防御は、負けているため考えにくい。だとすれば左右どちらかに戦力を偏らせる作戦か。ジャドンの考えそうなことだな」
Aチームはなんとしても点を取らないといけない状況だ。
そのため、戦力を偏らせて数的有利な場を作ろうとしていた。
だが、それは同時に他の部分でノーマークのものを作り出す。
そう、それが今のザラだった。
「他のもののフォローに行くのは…無粋だな。それにボールのマナは俺の方が多い。俺が確実にゴールを決めれば済む話だ」
ザラはフリーになったことを最大限利用するため、他を捨て相手ゴールを攻めることにした。
この判断が結果として試合を大きく左右することになる。
シグルムが右サイドからセンターラインを越えて相手陣地に突入すると、アインツの姿を見つける。
アインツもシグルムの姿を見つけ、声を上げた。
「ここは絶対に突破してやる!」
アインツはシグルムに向かって走り出した。
そんなアインツを見て、シグルムは迎撃するためフリスビーを作り出す。
アインツがシグルムより高いポイントを所持していれば、シグルムは全力でアインツを止めようと考えていたからだ。
シグルムはアインツの胸のポイントをよく確認する。
そして、シグルムは驚愕した。
アインツの胸には100ポイントの数値が浮かび上がっていたのである。
100ポイントはボールに込められるマナの上限だ。
その上限いっぱいのボールを、現在アインツは所持していた。
「馬鹿な!?いくら逆転が可能とは言え、いきなりそんな大勝負に出るとは」
100ポイントが入れば確かにAチームは逆転する。
しかし、逆にAチームが100ポイントを失ってしまえば、逆転はほぼ不可能なくらいAチームは不利になってしまう。
シグルムの決断は早かった。
「なら、ここで倒すのみ!」
シグルムはお得意のフリスビーでアインツを攻撃する。
アインツは飛んでくるフリスビーに怯まず、シグルムに向かって全速力で突っ込んでいく。
シグルムから見れば自殺行為であった。
だが、シグルムの飛ばしたフリスビーは、アインツまで残り数メートルの所で突如飛び出した岩に阻まれ弾かれる。
「何!?」
これにはシグルムも驚きを隠せない。
シグルムは状況を理解できてないまま、再びアインツに向かってフリスビーを投げた。
フリスビーはアインツに向かって勢いよく飛んでいくが、またしてもアインツの前で岩に阻まれて弾かれた。
だが、2投目をしっかり見ていたシグルムは、この岩がアインツの放った魔法でないことに気づく。
「おそらくジャドンさんが近くに隠れているに違いない」
そう思ってシグルムはあたりを見渡すが、この遮蔽物がない芝のフィールドでもジャドンの姿は見当たらない。
シグルムが焦っていると、アインツはどんどんシグルムとの距離を詰め、迫ってきていた。
シグルムは再びフリスビーを投げるが、もちろん途中で岩に阻まれる。
攻撃が上手くいかない中で、シグルムの心は自然と焦り始めた。
シグルムはアインツとの距離を離そうと後ろに下がる。
が、シグルムの背中に何かがぶつかり、シグルムは後ろへ下がれなかった。
「なんだと!?」
シグルムが後ろを振り返ると、そこには岩で作られた壁がいつの間にか存在していた。
そう、これも全てジャドンが仕組んだ罠である。
アインツが100ポイント所持していたら、必ず敵はアインツを倒しに来る。
そうしてアインツに近づいてきた敵の攻撃をジャドンが防ぐと、敵はアインツの近くにジャドンがいないかと必死にアインツの周囲を探す。
だが、それこそが罠。
じつはジャドンはアインツよりも先を走っていた。
だが、ジャドンはセンターライン付近まで来ると、芝生の上にうつぶせになり自分の身体を土で覆う。
フィールド上に隠れてシグルムを挟み撃ちする作戦だ。
しかし、これだけだとジャドンがいる部分のみ土が盛り上がるので、ジャドンを中心とした周りの芝も少しだけ盛り上がるようにする。
こうして、一見すると人が隠れていると思わないフィールドが完成した。
この状態でジャドンは必死に息をひそめる。
そして、アインツからの合図を待った。
アインツからの合図は先ほどアインツが放った言葉である。
ここは絶対に突破してやる!という言葉。
これがジャドンに送る合図であった。
敵がアインツに気を取られている隙に、ジャドンは頭だけ地面から出し、二人の立ち位置を確認する。
そして、少しずつシグルムの後ろに壁を作りながら、アインツのことを守っていたのだ。
シグルムは100ポイントという大きな餌に釣られ、背後の異変に気付くことができなかった。
大きな失敗である。
「やられた!」
シグルムは後悔するがもう遅い。
退路を断たれたシグルムは、迫りくるアインツから逃げるすべがなかった。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
至近距離から放たれるアインツの魔法。
シグルムはフリスビーで防ぐが、あまりにも距離が近すぎるため、ダメージを防ぎきれない。
しかし、シグルムが左右に逃げようとしてもジャドンが行く手を阻むように壁を作り出す。
アインツは何度もシグルムに対して、サンライト・ショットを撃ちこむ。
防ぎようのない高威力の連続攻撃。
シグルムは必死にあがくが、次々と攻撃をくらいシールド値を0にした。
これによりシグルムは5分間の退場強いられ、持っていた50ポイントも失うこととなる。
ジャドンの作戦勝ちだった。
「ジャドンさん!やりました!」
アインツはジャドンの元へ駆け寄る。
ジャドンはその姿を見て、ほっと一息ついた。
ジャドンとしても今回の作戦はかなりの賭けだった。
アインツが見つかる前にジャドンが発見されれば、その時点でこの作戦は終わっていたのだ。
だが、賭けに勝った。
それはAチームが逆転するための一筋の光となる。
「アインツくん!このまま一気に相手チームを攻めよう!今がチャンスだ!」
「はい!」
ジャドンとアインツはBチームのゴールを攻めるべく二人で走り出した。
現在 Aチーム150:Bチーム220




