団結
ハーフタイムに入り、各チームはベンチで休憩しながら後半戦の戦略を考える。
Aチームのベンチではアインツがドリンクをみんなに渡し、必死に鼓舞していた。
「お疲れ様です!後半も頑張りましょう!」
アインツは自分が足を引っ張っていることを自覚している。
だからこそ、ベンチで少しでもみんなのためになれるよう頑張っていた。
必死なアインツの姿を見て、他のメンバーはより一層この試合で勝ちたいと意識する。
ジャドンは後半戦の作戦を考えるため、情報の整理を始めた。
「さて、前半戦が終わったが、何か気づきがあれば情報を共有しよう。まず俺からだ」
ジャドンが対戦した相手はザラとアッサだ。
その二人についてジャドンは意見を述べる。
「まずザラに関してだが、本当に隙がない。鳥による攻撃は自動追尾だし、身体強化の魔法も持っていた。実にやりづらい相手だ。他にザラと対戦して気づいたことはあるか?」
するとヴァリーは手を上げる。
「自分もザラさんと対戦しましたが、結構効果的だったのは塔による防御ですね。少なくともあの白い鳥はよく防げました」
「なるほどね。それならザラの相手はヴァリーが適任かもしれない」
次にアッサについてジャドンは意見を述べる。
「アッサくんに関しては正直見くびってたよ。彼は木の魔法に精通していて、その使い方も非常に上手かった。攻守のバランスがいいのも厄介だね」
ジャドンはアッサとの対戦を振り返る。
アッサをあと一歩の所まで追い詰めていたが、ザラの介入もありアッサを倒すことはできなかった。
「他にアッサくんに関して気づいたことはないか?」
すると再びヴァリーが手を上げる。
実際にアッサと対戦したヴァリーは、アッサの手ごわさをよく理解していた。
「あいつは竹を使って高所に移動したり、棒術のように近接攻撃をしてきたり、草のクッションで防御もしてきました。確かに攻守共に優れていると思います。ただ、気になることが一つだけあるんです」
みんなは一斉にヴァリーの方を向く。
「あいつ、多分レベル1の魔法しか使えないと思います」
そのヴァリーの話を聞いて、ジャドンは自分の記憶を辿る。
アッサとの対戦を思い出してみても、確かにレベル1の魔法しか使っていなかったように思えた。
「なるほど。ヴァリー、貴重な情報をありがとう。レベル1の魔法しか使えないなら、木と相性がいい土で攻めるとか、レベル2の魔法で攻めれば戦いを有利に進められるかもしれないね」
次にシグルムについてはケニーが説明をする。
シグルムは遠距離からの攻撃が得意であるが、その分攻撃の威力は低い。
防御魔法があればそれほど脅威ではないとケニーはいう。
ただ、ここで一つ見つかった問題点をジャドンは指摘する。
「問題は攻撃役の中で防御魔法を使えるものがいないという所だね。アインツくんも確かそうだよね?」
ジャドンの言葉にアインツはうなずく。
「僕が今使えるのはサンライト・ショットだけです。それ以外の魔法はまだ使えません」
アインツがサンライト・ショットしか使えないのには理由がある。
それはこの国に光魔法を使えるものがほとんどいないため、基本的な魔法ですら参考資料が存在しないことにある。
そのため、アインツとエルは手探りで光魔法の研究を進めていた。
だが、魔法の研究というのはかなり時間がかかる。
結果アインツはこの加入テストまでに新たな魔法を覚えることはできなかったのだ。
そんなアインツにジャドンはアドバイスを送る。
「サンライト・ショットは威力重視の近距離魔法にあたる。そのため、遠距離魔法とは相性がものすごく悪い」
ジャドンの言う通りアインツはシグルムと対戦したときやりづらさを感じていた。
「だけど、近距離魔法も使いようだよ。アイデア一つで色んな効果を発揮できるはずだ、アインツくん」
「使いよう…ですか?ちょっと考えてみます」
アインツはジャドンのアドバイスを受け、色んな使い方を一生懸命考え始める。
もちろんすぐにいいアイデアが浮かぶわけではないが、考えることでアインツにできることが増える場合もあるだろう。
成長とはそういうものである。
次にツクオについて考える。
ツクオは水の範囲攻撃魔法をメインとしている。
「範囲攻撃魔法は避けづらく複数の人間に攻撃できるのが特徴だ。ただ威力自体は低いので、防御魔法で防ぐのが一番の対策だな。ただ、ツクオくんが使うのはレベル2なので完全に防ぐのは難しい。アインツくんのように相打ち覚悟で挑むことも必要になってくるだろう」
最後にジェットだ。
ジェットは風の障壁を作り出し相手の攻撃魔法を防ぐことができる。
しかも、その魔法は相手の攻撃を反射する。
「ジェットの防御魔法を貫通させるには威力重視の魔法が必要だね。それこそアインツくんの近距離魔法が一番輝く場面だと思うよ」
実際アインツのサンライト・ショットは障壁の一部を貫通していた。
さらに、攻撃速度の面でもアインツが上回っている。
ジェットの対策はアインツが適切であると言えるだろう。
全員の情報が出そろったところで、ジャドンは思い切った作戦を皆に伝えた。
「後半戦は俺とケニーがポジションを入れ替える。攻撃役が俺とヴァリーそしてアインツくんの三人になり、防御役をケニーとクルドマンに任せることにする」
その配置変更の意味をクルドマンは聞いた。
「ケニーになると守りは薄くなるが、何故このような配置にした?」
そのクルドマンの質問に対して、ジャドンは簡単に理由を説明する。
「一つは相手への対策。相手は威力が低い範囲魔法や遠距離魔法を多く使う。だから防御魔法が得意な俺が攻撃役にいた方が都合がいい。アインツくんを守ることもできるしね」
ジャドンはアインツの欠点である防御面を補うことによって、得意な攻撃面が活かせる場を作ろうと考えていた。
「もう一つはケニーだ。ケニーのスリングショットは両手を使うため、ボールを所持することができないんだ。使えるポイントが増える後半戦では三つのボールで攻めることが基本となる。だからケニーはボールを持たないでいい防御役になって欲しいんだ」
そう、これがケニー最大の欠点である。
ケニーは攻撃役であるにも関わらずボールを持つことができない。
そのため、後半戦ではポジションの入れ替えが必須となる。
「僕が足手まといと言われる理由の一つネ。ボールを持てない攻撃役ほど使いづらい選手はいないでしょ」
そんなケニーに対してジャドンは首を横に振って否定をする。
「ケニーがいなければこの試合もっと点差が広がっていたかもしれないんだ。それに俺が前に出ないといけなくなった今では、守備をしっかり経験しているケニーがいることで安心感が増しているよ。実に頼もしい」
「そういってもらえると嬉しいネ」
実際ケニーは守備の面でも活躍できる選手である。
威力の高い遠距離攻撃は命中率が低いとは言え、相手選手には脅威となる。
プレッシャーのかかるゴール前では、より効果が期待できる力だ。
だからこそジャドンは安心してケニーにゴール前を任せられるのである。
全員が作戦について納得したところで、ジャドンは後半戦に向け再びみんなを鼓舞する。
「それじゃ、後半戦もみんな頑張っていくよ。お互いに苦手な部分を補いながらチーム力で勝利を目指そう!それが俺達Aチームだ!」
「「はい!」」
ジャドンを中心にAチームはみな心を一つにする。
共通の目標である勝利のために。
現在 Aチーム150:Bチーム220




