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意地

黒髪の少年と待ち合わせした場所はインガル湖という大きな湖の近くの公園だった。

アインツと父リースは早朝に家を出て、公園に向かう途中である。

「ふぁあ。」と大きなあくびをリースはした。

昨日22時に寝たとは言え、リースにとってこの時間は経験したことのない早朝だ。

リースと一緒にいるアインツもリースとは別の意味で眠そうな顔をしている。

昨日リースが家に帰って黒髪の少年の話をしたら、飛び上がるようにアインツは喜んでいた。

相当嬉しかったのだろう。

その時のアインツは目が輝いていた。

だからこそ今日のことを楽しみにしすぎて寝れなかったようである。

そんな息子の姿を見たからこそ、リースは早起きしてアインツを連れて来たのだ。

自分でもつくづく親バカだなとリースは思っていた

約束の公園に着くと黒髪の少年はすでに到着していており、ジャージ姿でストレッチをしていた。

黒髪の少年はリース達に気づき、ストレッチを終えて身なりを整えた。

「本当に来るとは…よっぽど暇なんですね。」

開口一番にこの嫌味だ。

だがリースは動じない。

というよりは深く考えられないほど、眠気と戦っていた。

「君の方こそわざわざありがとね。」

「いや、俺は毎日ここでトレーニングしてるし…」

黒髪の少年はばつが悪そうに視線を逸らした。

嫌味を言ったのにお礼で返してきたリースを見て、自分の行動が急に恥ずかしくなったからだ。

リースはそんな少年の心情にはまったく気づかず、「こちらが息子のアインツ。仲良くしてやってね。」と息子の紹介をする。

アインツは少し恥ずかしそうに、「アインツ・レイカーです。よろしくお願いします。」と自己紹介をした。

黒髪の少年はアインツの方をまじまじ見てから「ヴァリー・アルゴだ。」と挨拶した。

何故まじまじと確認したかと言うと、アインツが想像したよりも弱弱しい少年だったからだ。

「お前、普段運動とかしてる?」

ヴァリーの問いにアインツは首を横に振った。

アインツはこの間のアルマの試合を見るまでは運動にまったく興味がなく、ほとんどしてこなかった。

ヴァリーは少しため息をついてから、今日のメニューを考える。

「とりあえず今日は湖の周り1周ってとこだな。ランニングで。」

ヴァリーの言葉に驚いたのは、アインツではなくリースの方だった。

「湖の周り1周だって!?大人だって歩いたら1時間近くはかかるよ!?」

「走ったら30分程度ですよ。まぁ、こいつと一緒に走ったらもう少し遅くなるかもしれませんが。」

そう言ってヴァリーはランニング前のストレッチを再開する。

アインツは見様見真似でヴァリーと同じようにストレッチを始めた。

「おっ、やる気だなお前。」

「君もアルマのプロ選手になりたいんだよね?だったら僕も頑張らないと…」

今、アインツの中ではハッシェ選手のようになりたいという夢がある。

だからこそアインツは運動が苦手でも、ヴァリーに負けたくないという気持ちが生まれていた。

二人はストレッチを終えると、湖沿いの歩道に向かって歩き出す。

「じゃあ俺たちは今から走って来るんで、おじさんはそこのベンチでも座っててよ。眠そうな顔してるのバレバレだし。」

そういってヴァリーとアインツは走り出した。

リースは呆気に取られながらも、お言葉に甘えてしばしベンチで眠ることにした。

朝5時は少し寒かったが、それよりも眠気が勝っていたようで、リースはすぐに眠りについた。

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