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要塞

アインツとケニーは現在フィールドの外にいた。

二人はシールド値が0となり、ペナルティで5分間の退場を強制されている。

アインツは先ほどの無謀な攻撃について反省していた。

「すみません。僕のせいでケニーさんまで退場することになって」

アインツはケニーに謝るが、ケニーはあまり気にしていない様子だった。

「まぁまぁ、アインツくんはよく頑張っているよ。シグルムは強い相手だしネ」

ケニーは危機的状況であるにも関わらず、敵であるシグルムのことを話すとき少し嬉しそうな顔をしていた。

そんなケニーをアインツは不思議そうに見る。

「ケニーさんってシグルムさんとは仲いいんですね」

「そうだネ。シグルムは同い年で同じポジションを昔から争っていたからネ」

そういうケニーは少し昔のことを思い出した。

それは、ケニーとシグルムがジュニアチームに入って間もない時だった。

シグルムは昔から魔法の扱いと駆け引きが上手く、先輩達相手にも引けと取らないプレイをしていた。

それに対してケニーはなかなか成果を出せず、チームではお荷物のように扱われていた。

ケニーにとっては苦い過去である。

「シグルムはネ、昔から本当に強かった。僕はそんなシグルムと自分を比べてて、ずっと落ち込んでたんだよネ」

今の明るいケニーからは想像がつかない姿だ。

だが昔のケニーに対して、アインツは自分と重なる部分を感じていた。

アインツもヴァリーに追いつこうと必死に頑張っているが、いつもヴァリーはアインツの先にいる。

ケニーと境遇が似ていたのだ。

「でもネ。僕が元気ないときにはいつもシグルムがそばに来て励ましてくれたんだ。お前がいるからこそ俺は強くなれる。だからお前ももっと強くなれるってネ」

ケニーは嬉しそうに語る。

シグルムはケニーのことをライバルとして認めており、ケニーもシグルムのライバルとして恥じないように努力を続けてきた。

その結果二人はここまで強くなったのである。

「だからアインツくんも諦めたらダメだよ。まだ君はアルマを始めたばかりなんだ、これからの頑張りでいくらでも成長できるさ。頑張るネ」

ケニーはアインツを自分なりの言葉で励ましていた。

そんなケニーにアインツは心打たれる。

「ありがとうございます!僕もヴァリーに追いつけるよう精一杯頑張ります!」

この時、落ち込んだアインツはいなくなっていた。

アインツは必死に前を向き、ヴァリーと肩を並べられるよう精一杯プレイすることだけを考える。

そんなアインツの前向きさはこれからの武器になると、ケニーはひそかに思っていた。


アッサとザラが敵陣を駆け抜けていくと、目の前には信じられない光景が広がっていた。

綺麗に整った大地にいくつもそびえたつ細長い塔。

それはまるで要塞のようであった。

「こいつは驚いたね。ジャドンとヴァリーが合わさるとこんなことができるのか」

ザラは目の前の光景に驚きながらも、冷静に分析を開始する。

細い塔は高い部分が道で繋がっており、塔から塔へと移動することも可能な構造だ。

「おそらくこれは奇襲を可能にするための塔だろうね。塔の影に隠れたり、塔の上から動きを見たりして、俺達を不利な状況に陥らせようとしているんだ。実にいやらしい塔だよ」

ザラはこの塔の対策を考える。

ザラの鳥は自動追尾のため、このように遮蔽物が多い場面では真価を発揮しづらい。

それに対して、アッサは植物を自在に伸ばすことで塔の上にも登ることはできるし、相手の動きを妨害することも不可能ではなかった。

「アッサくん。この塔の上に登ることはできるかい?」

「それくらい朝飯前ですよ。ちょっと上の様子を見てきます」

アッサはいつものように竹を伸ばして上に登る。

アッサが塔よりも高い位置に登った瞬間、アッサは塔の上に隠れていたヴァリーと目が合った。

ヴァリーはすでにアッサを攻撃する準備を整えている。

「ファイヤー・ワン!バーニング・ショット!」

ヴァリーの一撃がアッサを襲う。

アッサはとっさに草のクッションを前に出し、ヴァリーの一撃を防ごうとするが、防ぎきれずシールド値が250から150へと削られた。

そして、バランスを崩したアッサは、下に向かって落ちていく。

「アッサくん!」

そんなアッサを助けるために、ザラはトンビを作り出しアッサを空中でキャッチさせる。

アッサはゆっくり地面に降ろされた。

なんとかアッサは無事であるものの、ただでさえ減っているシールド値を今減らされたのは、かなり痛いとザラは感じていた。

ザラはここで決断を迫られる。

アッサを守りながら進むか、アッサを囮にして自分がゴールを決めに行くか。

どちらにせよ楽な道ではない。

どちらを選ぶかザラが悩んでいると、アッサはここで声を上げた。

「ザラさん!俺がヴァリーを引き付けますから先に行ってください!」

ザラはアッサの提案に驚くが、アッサの目を見てここはヴァリーと戦わせてあげるべきだと考えた。

それは、試合の勝ち負け云々ではなく、アッサの成長に必要なことだと感じたからだ。

「わかったよアッサくん。だが、シールド値では君の方が圧倒的不利なことを忘れないようにね」

ザラはそう言い残すと、塔の間を走り抜けていった。

アッサのシールド値は現在150。

それに対してヴァリーのシールド値は未だに無傷の1000である。

普通に撃ち合いをすれば、アッサがあっさりやられてしまう状況であった。

だが、この不利な状況でもアッサはヴァリーに挑むつもりである。

それはアッサが最強を目指す上で、必ず越えなければいけない壁であったからだ。

アッサはヴァリーを倒すための作戦を考える。

ヴァリーは塔の上に登っているため、直接攻撃することはできない。

しかし、アッサが上に登ろうとすると、その隙を狙われて撃ち落とされてしまう。

「だったら、ヴァリーが魔法を放った瞬間を狙うしかない」

アッサは新たな竹を1つ作り出し、それに草のクッションをくっつける。

そして、その竹を伸ばし塔の上までクッションを運ぶ。

すると、その草のクッションはヴァリーによって撃ち落とされる。

アッサはその瞬間を逃さなかった。

「ウッド・ワン!ラピッド・バンブー!」

アッサは再び竹を伸ばし、今度は自分の身体を塔の上まで運ぶ。

ヴァリーは先ほど魔法を放ったことにより、自分の居場所をアッサに知られていた。

アッサは塔の上まで登り、ヴァリーを見つけた瞬間魔法を放つ。

「ウッド・ワン!バンブー・ポール!」

アッサの伸ばした竹の棒はヴァリーに向かって伸びる。

「ちっ!」

ヴァリーはとっさに回避する。

しかし、その間にアッサは塔の上に着地した。

アッサとヴァリーは塔の上でお互いににらみ合う。

これでアッサの地形的不利はなくなった。

アッサは生み出した竹の棒を片腕でくるくる回して棒術のように構える。

それに対してヴァリーは火のマナを作り出し、いつでも魔法を放つ準備をしていた。

勝負は一瞬である。

アッサは持っていた竹の棒をヴァリーに向けて突き出した。

ヴァリーはそれを紙一重でかわす。

だが、アッサの突きは止まらない。

連続して繰り出される突きは、ヴァリーに魔法を放つ暇を与えない。

ヴァリーはなんとか距離を離そうとするが、ここは塔の上。

後ろに下がればすぐに塔から落ちてしまう。

ヴァリーに逃げ場はなかった。

「どうした!お前の力はそんなものか!」

アッサは攻撃する手をやめない。

ヴァリーは防戦一方であった。

「このままじゃ埒が明かないな」

アッサの攻撃を避けながらヴァリーはタイミングを計る。

そして、アッサが渾身の一撃を突き出してきたとき、ヴァリーは賭けに出た。

「今だ!」

ヴァリーはその攻撃をあえて避けず、身体に受ける。

当然シールド値は1000から700へと削られた。

だがその代わり、ヴァリーは身体に食い込んだ棒を掴んでアッサの攻撃を止めることに成功する。

「なに!?」

アッサが驚いていると、ヴァリーはにやりと笑い右腕を前に突き出した。

右手にはすでに火のマナが十分に溜まっている。

「これで終わりだ!ファイヤー・ワン!バーニング・ショット!」

ヴァリーの放った炎の球はアッサに直撃し、アッサのシールド値を0にする。

それと同時にアッサの持っていたボールの80ポイントは消滅した。

ヴァリーの勝利である。

アッサはその場で膝をつき、悔しそうな表情を浮かべた。

そして、ヴァリーも苦しそうな表情を浮かべて、その場に腰を下ろす。

シールド値自体はまだ残っているものの、攻撃を受けたダメージは身体に残っていた。

無理をした代償である。

二人はしばらく無言のまま向かい合って座っていた。

しばしの沈黙の後、先に口を開いたのはアッサだ。

「負けたよ。やっぱ噂通り強いなお前」

だが、そんなアッサに対してヴァリーはこう口を開く。

「今のは同じシールド値じゃ無理な戦法だった。これで勝ったとしても本当の勝利じゃねぇよ」

ヴァリーとしても自分が苦戦したのはよく理解していた。

だからこそ出た言葉である。

ヴァリーは先へ行ったザラを追いかけようとするが、足がもつれてうまく立つことができない。

そんなヴァリーを見てアッサは言った。

「今更行ってもザラさんには追い付けないと思うぞ」

アッサの言う通り、先に行ったザラに追いつくのはもう無理なくらい時間が経っていた。

ヴァリーもそのことは理解している。

だが、それでもヴァリーはザラを追いかけようと、塔の下へ降りて走り出す。

そんなヴァリーの姿を見て、アッサは最強への道が険しいことを改めて実感した。

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