竹の子
アインツがゴールを決めたことでジャドンは少し安心した。
これならヴァリーが動けない状態でも得点を稼ぐことができるからだ。
だが、そんなジャドンに迫って来る一つの影がある。
アッサだった。
アッサが木属性の魔法を使えることは、アインツからの情報で知っていた。
あいにくジャドンは火属性が使えないので、相性で優位は取れない。
「ならこっちは足止めメインで行きますかね」
ジャドンはアッサが射程内に入ったところで、魔法を放つ。
「アース・ワン!グランド・スプリンター!」
すると、地面から無数のトゲが生えて、アッサの行く道を妨害する。
無理に歩こうとすれば、トゲのダメージを受けることになり、迂回しようと思えばかなり遠回りを要求される。
なんとも嫌らしいトゲである。
「さぁ、どうするかな?」
ジャドンはアッサの出方によって、性格を把握しようとしていた。
無理に突っ込んで来る場合は短気で強引な性格、逆に迂回すれば我慢強いが臆病な性格ともとれる。
だが、アッサはどちらの行動も選ばなかった。
「ウッド・ワン!バンブー・ポール!」
アッサは身の丈の何倍もある竹の棒を作り出す。
ジャドンはアッサがその竹の棒で直接攻撃してくると思い防御の姿勢を取る。
しかし、アッサの行動は違った。
アッサは少し後ろに下がると、竹の棒を両手で持ち上げる。
そして、トゲの道に向かって勢いよく走り出した。
持ち上げていた竹の棒は重力で次第に落ちいき、先端が地面のくぼみに刺さった瞬間、大きくしなりカーブを描く。
そして次の瞬間、アッサの身体を持ち上げ、宙に投げだしたのだ。
そう、これは棒高跳びである。
アッサはトゲの道を飛び越したのだ。
これにはジャドンも驚きの表情を浮かべる。
アッサは地面に落ちる瞬間に、草のクッションを作って着地する。
そしてアッサはジャドンを無視し、水晶柱を目指して走り出した。
ジャドンはアッサを止めるべく、急いでアッサを追いかける。
「アッサくんは大胆かつ柔軟な性格のようだね」
この試合、楽に勝たせてはもらえないとジャドンは覚悟した。
AチームのCKであるクルドマンはアッサの姿を捉えた。
そして、その後ろから必死にアッサを追っているジャドンの姿も見える。
アッサを挟み撃ちにしている形だ。
「これは好機!」
クルドマンは火魔法の準備をする。
アッサが木属性メインなのは事前の情報で知っている。
だからこそのこの一撃は防げないと踏んでいた。
「ファイヤー・ツー!レーザー・ネット!」
クルドマンの放った8つの炎の弾は、それぞれが熱線を放ちながら網のようになり、アッサに襲い掛かる。
網の目は多少大きいながらも、アッサが通り抜けれる大きさではない。
炎の網はアッサを囲むようにして、徐々に距離を詰める。
だが、アッサは笑っていた。
「この網、隙間が大きく空いてますよ」
「なに!?」
アッサの言葉に、クルドマンは炎の網を確認する。
いくら子供のアッサとはいえ、通り抜けられるような隙間ではないはずだ。
だが、アッサはここで上を指さした。
「ウッド・ワン!ラピッド・バンブー!」
アッサは自分の足元から竹を生やしてそれに捕まる。
竹は勢いよく成長し、炎の網よりも高い位置にアッサを連れて行く。
そう、アッサが言っていた隙間というのは、網の上のことだった。
アッサはそこからボールを投げる仕草を見せる。
「させるか!」
クルドマンは再び炎の網をアッサに向けて放つ。
シュートコースを塞ぐ形だ。
だが、アッサはとっさの判断でシュートをやめ、体重をかけ竹を大きくしならせる。
そして、竹が元に戻る勢いを利用してアッサは飛んだ。
アッサは身体をひねりながら、足側からレーザーを超える。
レーザーはアッサの腹、そして顔面すれすれを通りすぎるがアッサは無傷だ。
炎の網を飛び越えたアッサは、空中で持っていたボールを投げ、水晶柱に当てる。
Bチームに70ポイントの点数が入った。
「マジかよ」
クルドマンは呆気に取られていた。
ここまで見事に炎の網をかわされて、ゴールされるのは初めてだったからだ。
だがそれをやってのけたアッサは、さも当然のようにガッツポーズ一つせず、自陣の水晶柱に戻るため再び走り出す。
その様子を見ていたジャドンは、自分の顔を叩いて気合を入れ直した。
「まだまだ試合は始まったばかりだ!しっかりしろ俺!」
逆転を許したAチームは、再びリードするため攻撃の手段を考える。
現在 Aチーム50:Bチーム70




