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想定外

ヴァリーは敵陣に入って驚いた。

目の前にはザラともう一人の先輩が、待ち構えている。

いきなり2対1と不利な状況だ。

いくらヴァリーとは言え、先輩二人を相手して無事で済むとは考えにくい。

そこでヴァリーの足は止まった。

ヴァリーは二人の出方を知るため、少し後退する。

このままヴァリーを追って来るなら、後方にいる仲間と合流して迎撃するといった手段も取れるからだ。

だが、相手は動かない。

あくまでも自陣フィールド内でヴァリーを迎え撃つつもりだろう。

ヴァリーはジャドンに状況を説明して、指示をもらうことにした。

「ジャドン先輩。右サイドの方は相手が二人待ち構えています。どうしたらいいですか?」

「その二人はボール持ってる?持ってない?」

ヴァリーは先ほどもボールを持っていないことを確認していたが、今一度確認する。

やはり二人はボールを持っておらず、右胸に数字も浮かんでいない。

「両方ともボール持ってないですね。妨害役だと思います」

ジャドンは少し考えて違和感に気づく。

ヴァリーが攻めているのは右サイド。

普通は相手の守りが手薄になる場所である。

何故なら、アルマにおいて中央から攻めるのが水晶柱までの最短距離。

そのため、守りは中央に集中するものなのだ。

それが、今回はいきなり右サイドに二人の守りである。

ヴァリーを警戒していたとしても、あまりにも守りが多すぎる。

「まさか!?相手はいきなり1-4で挑んでいるのか!?」

1-4は攻撃一人に対して防御四人の超守備的布陣である。

実際の試合でも使われることはあるが、それは得点差がかなり開いた試合であり、こんな序盤で使われる布陣ではない。

だが、中央の守りを考えると、この布陣しか考えられないのも事実。

「1-4ならいきなり70ポイントのマナで攻めてくるのもうなずける。攻め手が一人なら大きくポイントを使うしかないからね」

ジャドンは作戦を考える。

「ヴァリーはこのまま距離を取った状態で相手をけん制してくれないか?」

「けん制でいいんですか?俺ボール持ってますけど」

そう、普通ボールを持った選手は相手ゴールへ向かわないと損である。

何故ならボールの所持はリスクが高いからだ。

ボールを失ってしまえば、その分マナが失われてしまう。

使用できるマナが限られているアルマで、マナを失うということはかなりの痛手なのだ。

しかし、それでもジャドンはヴァリーをけん制役に使おうとしていた。

「ヴァリーくんの前に二人いるということは、おとり役として十分役割を果たしている。その分こちらは別の部分で数的有利になるのだから、そこからしっかり攻めればいい」

そう、ジャドンはヴァリーが敵を引き付けている間に、アインツを中心として相手を攻めることを考えていた。

ヴァリーもそれを理解し、今はおとり役に徹することにする。

ヴァリーは相手との距離を保った状態で攻撃魔法を放つ。

「ファイヤー・ワン!バーニング・ショット!」

ヴァリーの放った炎の弾は、相手選手に当たらずに爆散する。

だが、それはヴァリーも想定していた。

これはあくまでもけん制なのだ。

すると、相手もヴァリーへ攻撃魔法を飛ばしてくる。

放たれたのは風の魔法だ。

ヴァリーはそれを難なく避ける。

お互いに距離を離れた状態の攻防だ。

なかなか魔法を直撃させるのは難しいだろう。

だが、もし油断して直撃でもすれば、シールド値が削られ一時退場する可能性が高くなる。

お互いに意識をしながら行動するしかないのだ。

そういう意味でのけん制である。

ヴァリーはここでしばらくおとり役に徹することとなった。


ヴァリーがおとり役をしている頃、アインツは敵陣の中央へ迫っていた。

そこで待ち構えている一人の男の子がいる。

ツクオだ。

ツクオは全て計画通りだと言わんばかりに、自信満々でアインツの前に立っていた。

何故ならツクオはAチームの中でアインツが最弱だと思っている。

そのアインツがFAとして攻めてきてくれることほど、嬉しいことはないとツクオは思っていた。

ツクオはアインツがどの属性の魔法を撃ってきてもいいように、レベル2の水魔法の準備をする。

マナの消費量が多いのが難点ではあるが、レベル2の魔法ならレベル1の魔法を完全に防ぐことができる。

相性が悪くても相殺、相性が良ければそのままアインツにダメージが与えられる。

そして、最初の一撃さえ防げれば、後は相性のいいレベル1の魔法で攻めればいい。

そう考えていた。

だが、アインツの最初の一撃はツクオが想定していたどの属性とも違った。

「ライト・ワン!サンライト・ショット!」

「!?光魔法だって!?」

ツクオは光魔法が来ることなどまったく想定していなかった。

そのせいで魔法の発動が遅れ、光の弾が直撃する。

ツクオは吹き飛ばされて、シールド値が1000から500まで一気に削られた。

「くそ!なんでこんなやつが光魔法を!?」

ツクオは体勢を立て直し、アインツに向かってレベル2の水魔法を放つ。

「ウォーター・ツー!スプラッシュ・バースト!」

ツクオの放った無数の水弾がアインツを襲う。

だがアインツは怯まず、再びサンライト・ショットを放つ。

アインツの放った光の弾は、いくつかの水弾を飲み込んで再びツクオに襲い掛かる。

「ひぃ!?」

ツクオは再びサンライト・ショットを受け、シールド値が500から300まで削られる。

対してアインツも水弾の一部を食らったが、それでもシールド値はまだ800残っている。

あまりにもツクオには分が悪い状態だ。

「僕は…こんなところで退場するわけにはいかないんだ…」

評価を気にするツクオは、アインツから離れて距離をおく。

だがそれは、守備役としてはあってはならない行動だ。

結果、ツクオはBチーム内の信用を大きく失うこととなる。

アインツはツクオが何もしてこないと判断し、再び相手水晶柱に向かって走り出した。


アインツはついに相手水晶柱の前まで到着する。

そんなアインツの前に立ち塞がるのは、相手のクリスタルキーパーであるジェットだ。

ジェットは先ほどのアインツとツクオの攻防をしっかり見ていた。

そのため光魔法に対する心構えは出来ている。

アインツはまずジェットに対してけん制の意味も込め攻撃魔法を放つ。

「ライト・ワン!サンライト・ショット!」

それに対してジェットは風魔法で応戦する。

「ウインド・ツー!ストーム・リフレクション!」

ジェットの放った魔法は風の障壁。

相手の魔法を防ぐだけではなく、跳ね返すことができる魔法だ。

普通なら。

だが、アインツの放った光の弾は一部貫通してジェットにダメージを与える。

「ちっ!」

ジェットはシールド値を削られ800となる。

だが、アインツも無事では済まなかった。

反射された光のかけらを受け、シールド値が800から600となる。

お互いにシールド値を200削られた形だ。

しかし、こうなると一気に不利になるのはアインツだった。

アインツはまだサンライト・ショットしか攻撃魔法を覚えていない。

今のようにストーム・リフレクションで防がれれば、先に退場することになるのはアインツの方である。

先ほどツクオに削られた200のシールド値が大きな痛手となっていた。

アインツは必死に頭で考える。

そして、一つの賭けに出た。

「ライト・ワン!サンライト・ショット!」

再びアインツは光の弾を放つ。

「無駄だ!」

ジェットは先ほどと同じようにストーム・リフレクションで光の弾を防ぐ。

ジェットは貫通した光の弾でダメージを受けるが、それはアインツも同じ。

そう思っていた。

だが、アインツは違った。

「ライト・ワン!サンライト・ショット!」

アインツは連続でサンライト・ショットを放ったのだ。

アインツの放った光の弾は、反射してきた光のかけらを飲み込んでジェットに迫る。

ジェットは急いでストーム・リフレクションを出そうと思ったが、マナの変換が間に合わず再び光の弾を身体で受ける。

それもそのはず。

ジェットが使っているのはレベル2の魔法。

それに対してアインツはレベル1の魔法を使っている。

レベル1とレベル2では必要なマナの量が違うため、レベル2の方が魔法の発動速度が遅くなるのだ。

それがアインツの狙いだった。

連続で光の弾を受けたジェットは体勢を崩す。

そこをアインツは逃さなかった。

アインツはすぐさま走り出して飛び上がる。

「いっけぇ!!シャイニング・シュート!!」

アインツの放ったジャンプシュートは、光のマナに包まれてきらきら輝いていた。

ジェットは一生懸命に腕を伸ばして、ボールをはじき出そうとするが届かない。

そのまま輝くボールは水晶柱に当たって大きく跳ね上がる。

先制点はAチームだった。

「よし!!」

アインツは小さくガッツポーズをすると、すぐに踵を返して自陣の水晶柱目指して走り出す。

そう、まだ試合は始まったばかりだ。

アインツは次の攻撃に向けて、ボールを取りに戻るのである。

現在 Aチーム50:Bチーム0

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