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Aチーム

「うわぁ、すごい」

アインツは初めてジュニアチームの練習場を訪れた。

緑の芝生に覆われたフィールドは綺麗に手入れされており、多くの子供たちがフィールドの上を駆けている。

アルマの象徴でもある水晶柱も輝きを放っていた。

夢にまで見たアルマのフィールドを間近にして、アインツは大興奮している。

そんなアインツと一緒に歩いてるヴァリーは、少々恥ずかしそうにしていた。

「アインツ。あんまりはしゃぐな。俺が恥ずかしい」

あっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロしているアインツの姿は、完全に田舎から都会に来た子供そのものだった。

しばらく歩くと、受付と書かれた大きな看板が目に入る。

「あれだな。加入テストの受付は」

ヴァリーが受付前に行くと、テーブルに肘をついて暇そうにしている子供の姿があった。

それはヴァリーもよく知っているジュニアチームの先輩である。

「先輩。何してんですか?」

「みりゃわかるだろ。受付の手伝いだよ。家が近いとすぐこういうことさせられるんだから損だよな」

今日は加入テストがあるため、練習はオフの日である。

だが、ジュニアチームに所属する何人かは加入テストのお手伝い要員として、働かされていた。

こういう場合、家が近く簡単に練習場まで来られるものが選ばれやすい。

「ヴァリー、さっさと受験票出しな。チェックするからよ」

ヴァリーは先輩に促され、受験票を差し出す。

先輩は軽くチェックした後、すぐに受験票を返した。

「で、その後ろの子は?お前の友達?」

「あぁ、友達は友達ですけど、今回のテストの参加者ですよ」

それを聞いて先輩は驚く。

「まじか。その歳で魔法使えるんだな。すげぇ」

「いや、俺も使ってるじゃないですか」

「お前は別。ケイネオスさんの息子だろ?使えて当然」

そう、ヴァリーも普通の子供として考えれば十分すごいのだが、世間としてはどうしてもケイネオスの息子という看板が先について回る。

そのためヴァリーは人一倍努力しないと評価されないようになっていた。

まぁ、当の本人であるヴァリーはもう慣れてしまっているのだが。

ちなみに先輩はアインツに興味津々である。

「ねぇねぇ?君名前は?どこで魔法覚えたの?」

矢継ぎ早に質問され、アインツは少したじろぐが、用意していた受験票を差し出して、元気に自己紹介する。

「アインツ・レイカーです。魔法はエルお姉ちゃんに教わりました。よろしくお願いします」

アインツの元気のいい返事に、先輩はご満悦のようだ。

「お姉ちゃんか。あるある。上の姉弟がいると色々と覚えるのが早いよね」

そう言いながら先輩は受験票を確認して、アインツに返す。

実際は姉弟ではないのだが、説明するとややこしいので二人とも突っ込まずスルーした。

「先輩。今日は何人くらいテスト受けるんですか?」

「え?お前ら合わせて四人だけど」

「「四人!?」」

アインツとヴァリーは声を揃えて驚いた。

そんなに少ないと思っていなかったからだ。

だが、そんな二人を見て先輩はあきれた様子を見せる。

「お前らなぁ。さっきも言った通りその年齢で魔法使えるやつは普通い・な・い・の。俺が魔法を覚えたのは小四だったけど、それでも世間的には早い方なの。わかる?」

そう、アルマをプレイしている子は魔法が必須だが、そもそも普通の子は魔法を早く覚える必要がない。

勉強を好き好んでする子が少ないように、魔法を自ら学ぶ子も多くないのだ。

「じゃあ、とりあえず受付終わったから控室の方へ行ってな。看板の矢印に従って歩けばすぐだから」

先輩はシッシと二人を追い払うように手を払う。

先輩は今日ただ働きなのだ。

さっさと仕事を終わらせたいと思っているのだろう。

二人は矢印に従って歩いて行くと、控室と書かれた張り紙が張っている部屋を見つけた。

中に入るとそこにはマッシュヘアの男の子が一人、椅子に座っていた。

この子もアインツ達と同じ受験者だ。

アインツとヴァリーは空いている席へと座る。

すると男の子は振り返り、ヴァリーの方を向いた。

「お前、ヴァリー・アルゴだな?」

睨みながら話しかけてきた男の子に対して、ヴァリーも喧嘩腰に返答する。

「そうだが?なんか文句あっか?」

お互いにらみ合いをする中で、アインツだけはおろおろと取り乱していた。

先に口を開いたのは、男の子の方だった。

「俺はアルマにおいて最強を目指している。」

「それは大層立派な目標だな。で、それが俺に何の関係がある?」

二人は今にも殴り合いを始めそうな雰囲気だった。

「今、俺たちの年代で事実上最強なのはお前だろ。だから、俺は今日お前を倒しに来たんだ」

「俺は自分が最強だとは別に思っていないんだがな」

ヴァリーははた迷惑そうな感じで言った。

こういう感じの子供はジュニアチームでもいたが、大体はヴァリーのプレイを見ると、自然と大人しくなる。

「お前が思っていなくても、世間はそう思っている。だからこそ、今日ここで俺はお前を倒して、最強を証明してやる」

そういう男の子の目は、本気の目をしていた。

ヴァリーは面倒くさそうため息をつく。

「俺ばかり見てると、思わぬ相手にやられてしまうぞ。例えば、こいつとかな」

ヴァリーはアインツを指さした。

当の本人であるアインツは、状況をよく呑み込めず苦笑いをしてる。

そんなアインツを見て、男の子は鼻で笑った。

「そいつが俺を?どれだけアルマが上手いか知らないが、俺より強そうには見えないな」

「まぁ、やってみたらわかるさ。楽しみにしてろよ」

そうして二人の喧嘩腰の会話は終了した。


ほどなくして最後の受験者が部屋に入り、全員揃ったところで、今日の加入テストの説明が始まる。

説明するのはサングラスをかけたダマス監督本人だ。

「今日は集まってくれてありがとう。君たちのように将来有望な子供たちに出会えてうれしいよ」

そういうダマスの顔は表情一つ変わっていない。

本当にそう思っているか怪しいものである。

「さて、本題だが本日のテストはアルマの実践で行おうと思っている」

その言葉を聞いてアインツ以外の子は驚きを隠せなかった。

いくら実践的なテストとはいえ、実際にアルマをプレイすることになるとは思っていなかったからだ。

ただアインツだけはアルマができるとあって、ものすごく喜んでいた。

「君たちは二人ずつチームに入ってもらう。ポジションは自由に決めてくれて構わない。足りないポジションは、こちらで用意しよう」

これに対してヴァリーは手を上げて質問する。

「それって、勝ったチームの二人が合格するってことですか?」

「いや、勝敗だけで評価するつもりはないよ。もちろん大事な評価基準ではあるがね」

つまり、負けた方のチームからでも合格者が出る可能性はある。

それなら、アインツと別れて戦うことになっても問題はない。

ヴァリーはそう思った。

「チーム分けはくじ引きで行う。では、始めにアッサくん、くじを引いてくれ」

「はい!」と前に出てきたのは、先ほどのマッシュヘアの男の子だった。

アッサの引いた紙にはBと書かれている。

次にくじを引いたのはヴァリーだ。

ヴァリーはAと書かれた紙を引いた。

「つぎにアインツくん。くじを引いてくれ。」

アインツは緊張しながら前に出る。

ヴァリーと同じチームがいいなと思いながらくじを引くと、引いたくじにはAと書かれていた。

アインツの願いが通じたのか、偶然にもヴァリーと同じチームとなる。

「となるとツクオくんはBチームになるね。OK、それじゃあ二人でポジションを決めてくれ。」

アインツはヴァリーとポジションについて話し合う。

「僕、FAでいいかな?」

FAはゴールを決める最前線のポジションである。

「いいと思うぞ。1対1の成果が一番出るポジションだしな。俺はどうしようかな?」

ヴァリーはまだ自分のポジションを決めかねていた。

前衛なら他にICとWS、後衛ならVPとCKがある。

悩んだ末、ヴァリーは「今回はICにしようかな」と前衛でアインツと一緒に攻めるポジションを選んだ。

ICならアインツの動きが比較的よくわかり、サポートもしやすいと考えたからだ。

ダマス監督にその旨を伝えると、Aチームの控室へ行くよう促される。

二人は案内板に従って控室へ入ると、すでにジュニアチームの先輩たちが待っていた。

「二人ともようこそ。まずはそれぞれのポジションと得意魔法を教えてもらおうか」

彼の名はジャドン。

今回AチームでVPのポジションに付く先輩だ。

戦術担当ということもあり、まずは二人の情報を整理してから、攻め方を考えるのであろう。

まずは、ヴァリーが答える。

「ヴァリー・アルゴ。今回はICのポジションに付きます。得意魔法は一応火かな?」

「OKOK。ヴァリーは今回ICね。ガンガン攻めるのに使うけどいいかい?」

ジャドンはヴァリーの実力を知っているからこそ頼りにしてるのだ。

それに対してヴァリーは「いいですよ」と軽く答える。

ヴァリーもシュート練習はアインツとの練習を含めていっぱいやってきたのだ。

だからこその自信だろう。

次にアインツも自己紹介をする。

「アインツ・レイカーです。FAやります。得意魔法は光です」

アインツの言葉を聞いて、控室内にどよめきが起きる。

「嘘でしょ?君の年齢で?光魔法?」

驚くジャドンに対して、ヴァリーは「嘘じゃないですよ。この目で見てますから」とフォローする。

ジャドンを含め、先輩達は目で会話する。

光魔法の選手なんて今まで出会ったことがないのだ。

どのように扱うか困るのが普通である。

「ヴァリー、その子と仲良いの?」

「はい、毎日一緒に朝練するぐらいには」

それを聞いて先輩達は少し落ち着きを取り戻す。

ここにいる先輩達はすでにヴァリーの規格外な実力を目にしているのだ。

そのヴァリーが関わっている子なら不思議ではないと思えた。

ジャドンはアインツの方を向いて質問をする。

「アインツくん。君、光魔法何発ぐらい撃てるの?マナの枯渇とかしたことない?」

「え~と、光魔法だったら枯渇したことはないです。何発撃てるのかは数えてないですけど…多分10発くらい?」

アインツの返事に対してヴァリーは訂正を加える。

「いや、20発くらいはいけるだろ。少なくとも朝練中はそれくらい撃ってたし」

ジャドンは二人の話を聞いて、驚きのあまり笑いが出てしまう。

それぐらい二人の話は次元が違っていた。

ジャドンは一旦その話を自分の中で納得させた上で今回の作戦を考える。

「正直光魔法とか初めてだけど、FAとして仕事をさせるなら、一直線にゴールを目指すのがセオリーだよな」

フロントアタッカーは攻撃がメインのポジション。

どんな状況でも点を決めに行く。

その一点が求められる。

「アインツくんは得点源になるから、とにかくボールを運んでゴールしてもらう。相手の妨害とかあるだろうけど、ほぼほぼ相手をせずにゴールを決めることだけに集中して欲しい」

「はい、わかりました。」

正直、アインツは魔法の攻防について経験が浅い。

だから、この指示はアインツにとってありがたいものだった。

「ヴァリーは今回はボールを持ったおとり役。アインツくんを標的から守るというよりも、自分がゴールを決めたり、守備の目を向けさせたりすることによって、相手をかく乱させるのが目的になるかな。もちろん倒せるなら相手を倒してもらってもOK」

インタラプションクリーナーは本来FAを守るのも仕事だが、今回は攻撃よりの指示である。

それは、アインツの実力が未知数なことと、ヴァリーの実力を知っているからこその判断である。

「いいですよ。攻めるのは右サイドからでいいですかね?」

「そうだね。中央はアインツくんがいるから、少し離れたサイドからがいいね。近くにいるとまとめてやられる可能性もあるし」

二人が近くにいるとサポートや連携はしやすいのだが、その分広範囲の魔法で一気にやられる危険性は増す。

今回はリスクを分散させる戦術だ。

「よし、作戦会議はこのくらいにしよう。さぁ、みんな手を出して」

ジャドンが右手を前に出すと、それに重ねるようにして他の先輩も右手を出す。

ヴァリーとアインツも同じように右手を出し、五人が全員の手が重なったところで、ジャドンが気合を入れる。

「この試合は二人のテストではあるものの、実際のアルマの試合だ。せっかくだったら勝ちたいよね?お二人さん?」

ジャドンの言葉に二人はうなずく。

アインツに関してはこれがアルマの初戦なのだ。

勝ちたいという思いは、人一倍強いだろう。

「よし!じゃあ、この試合全力で挑め!今までの練習の成果を存分に発揮しろ!そして、勝利をこの手に掴み取れ!行くぞ!!」

「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

全員の叫び声が控室に響き渡り、Aチームの作戦会議は終了した。

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