希望の光
エルは正直怖かった。
何故なら光や闇属性の変換は大量のマナを消費する。
場合によってはアインツやヴァリーがマナを枯渇させて、意識を失う恐れもあると思っていたからだ。
だからこそ、上級基本属性の存在に気づいていても、今まで口に出さなかったのである。
だが、今はアインツのピンチである。
少しでも希望があるならやってみようと、エルは腹をくくった。
「いい二人とも、今から私が光属性の魔法を試してみるけど、多分失敗する。でも、ちゃんと失敗した時の対処はするからしっかり見ておいてね。」
二人はエルの言葉にうなずく。
エルは光魔法を一度試しているが、その時は変換がうまく行かず、失敗に終わっていた。
しかも、その時エルは意識を失いかけて、膝から崩れ落ちている。
原因はマナの枯渇だった。
それほどまで光魔法はハードルが高い。
エルは深呼吸をして、心の準備をする。
エルは両腕を前に伸ばし、体内のマナを光属性に変換するイメージを作り出す。
エルの前に少しずつだがきらきら光る、光のマナが集まってきた。
だが、エルに出来るのはここまでだった。
「やっぱ無理いぃぃぃぃぃ!」
エルは両手を左右に広げて、マナの変換を解除する。
すると、先ほどまで集まっていたマナは霧のように消えていった。
エルは激しい呼吸を何度も繰り返す。
意識こそしっかり保ってはいたものの、体内のマナはかなり消費されていた。
エルは呼吸が落ち着いてから、二人に説明する。
「こんな感じで、もし無理だったら両腕を広げて、すぐにマナの変換を解除すること。二人ともいいわね」
「わかったよ。エルお姉ちゃん」
エルの様子を見ていた二人は、その危険性がよく理解できたようだ。
「じゃあ、まず俺からやるぞ。」
先に挑戦するのはヴァリーだ。
ヴァリーは意識を集中して、エルと同じように光のマナを作り出そうとする。
ヴァリー目の前には、マナのゆらめきが見えるが一向に発光する様子は見られなかった。
だが、ヴァリーは諦めず続けようとする。
その結果、ヴァリーは全身から力が抜けて倒れ込みそうになる。
エルは反射的にヴァリーの身体を支え、目の前のマナを霧散させる。
ヴァリーはエルの素早い対処でなんとか事なきを得た。
ヴァリーの挑戦は失敗に終わる。
「あんた、あれだけ無理するなって言ったのに…」
エルはヴァリーをその場に座らせる。
ヴァリーは少し放心状態になりながらも、エルにお礼を言った。
「ありがとな。今のはガチで危なかった」
エルはその様子を見て安心する。
なんとか事故は未然に防ぐことができた。
しっかりと責任を果たせた形だ。
「さぁ、次はアインツの番よ。絶対に無理しちゃダメだからね。」
「うん。わかったよ。」
アインツは岩の前に立ち、両腕を伸ばす。
その光景を心配そうにヴァリーとエル、そしてスカータは見守っていた。
アインツは一生懸命、光のイメージを浮かべる。
アインツの腕の前にマナのゆらめきが生じた。
ここまではみんなと同じ。
しかし、ここからが違った。
ゆらめきは一気に光を放ち、輝き始めたのである。
これにはヴァリーもエルも驚きを隠せない。
「アインツ!変換に成功してるよ!そのまま呪文を言って!」
エルが興奮しながら叫ぶ。
興奮するのも無理はない。
光魔法なんて書物でしか見ない都市伝説だと思っていたのだ。
それを今、アインツが実際に成功させようとしている。
アインツは光を集め、弾丸のように射出するイメージを成形する。
そして、叫んだ。
「ライト・ワン!サンライト・ショット!」
アインツの放った光の弾は、ものすごい速さで岩に衝突し、岩を爆散させる。
とんでもない威力だった。
その光景を見て、ヴァリーとエルは驚くものの、アインツが初めて魔法を使えたことが嬉しくなり、アインツに飛びついた。
「お前すげぇよ!あんなの見たの初めてだ!」
「アインツおめでとう!本当に良かったね!」
二人にもみくちゃにされながら、アインツは自分が魔法を使えたことを段々と実感していた。
そして、嬉しくなり両手を握りしめて、空へ突き上げる。
ガッツポーズだ。
そして、アインツはうれし涙を流した。
この光魔法はアインツとアルマを繋ぐ、希望の光となったのだ。
三人は抱きしめ合いながら、この喜びを実感する。
そして、そんな三人の様子を見ながら、スカータは笑みを浮かべていた。




