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出会い

みなさんはアルティメットMANAという競技をご存じだろうか?


通称アルマと呼ばれているこの競技は5対5のチーム戦で行われる。

各チームはクリスタルボールと言う特殊な魔道具にマナを込め、そのボールを相手のゴールである水晶柱に撃ちこみ、与えたダメージを競う競技である。

選手はフィールドを駆け抜け、時に戦い、相手の妨害を突破しながら水晶柱を目指す。

大衆に人気のスポーツである。


この日、都市は大いににぎわっていた。

なぜなら、今日はアルマの大きな試合が行われるからである。

その試合とは年に一度行われるケイネオス杯の決勝戦だ。

アルティメットMANAは数多くの大会が開催されるが、最も人気があるのがこのケイネオス杯である。

トーナメント形式で行われるこの大会は、全ての試合でスタジアムがほぼ満員、決勝戦にいたってはチケットの倍率が数100倍とも言われている。


そんな超高倍率のチケットを偶然にも入手できた親子がいた。

7歳のアインツ・レイカー少年とその父、リースだ。

二人は手をつなぎながらスタジアムへ向かう並木道を歩く。

スタジアムまではまだかなりの距離があるものの、今はお祭りのように出店が立ち並んでいた。

出店には応援グッズはもちろん、選手カードやユニフォーム、チームマスコットの形をしたお菓子なども売られていた。

どの出店も大勢の客でにぎわっている。

「これはグッズを買うだけでも一苦労しそうだね。」

リースは少し人ごみに疲れたような声でアインツ少年に話しかけた。

それもそのはず。

リースは元々スポーツなど今までしていなかったタイプだ。

もちろんスタジアムでの観戦も初めてである。

では、なぜ今回苦労してまでチケットを取ったかというと息子であるアインツ少年のためであった。

アインツ少年も父に似て運動が得意な方でない。

学校でも物静かで、友達もうまく作れない内気な性格だ。

そんな息子がたまたまテレビに映ったアルマの試合を見た時、釘付けになるようにテレビを見ていたのだ。

実に楽しそうに。

そんな息子を見たら、親として生で観戦させてあげたいと思うのは当然ではないだろうか?

少なくともリースはそうだった。

「アインツ、何か欲しいものはないかい?」

リースがこう聞いてもアインツ少年は首を横に振る。

どうやらアインツ少年は試合にしか興味がないようで、マスコットなどには見向きもしない。

その反応を見てリースは少し呆れた顔をしながらも、スタジアムに向かって再度歩き出した。


試合開始2時間前にも関わらず、すでにスタジアムの受付前では長蛇の列ができていた。

リースとアインツ少年はその最後尾に並ぶ。

「少し早めに来て正解だったようだね。この調子だとかなり待ちそうだけどアインツは大丈夫かい?」

アインツ少年はコクリとうなずく。

普通の子供ならこういうとき、自由気ままにはしゃいだりするものなのだが、アインツ少年は静かに列に並んでいた。

列は少しずつ前に進み、1時間ほど経ったところでレイカー親子の番が回ってくる。

「チケットを確認しますので、チケットと身分証をお出しください。」

「あっ、はい。」

受付にそういわれてリースは焦りながら鞄を漁る。

チケットの用意はしていたが、身分証が必要だとは思っていなかったからである。

幸い保険証は所持していたので、チケットを左手に持ち替えて右手で鞄の中を漁る。

「あったあった。」

リースが保険証を鞄から取り出した瞬間。

突風が吹き、持っていた1枚のチケットが飛ばされてしまった。

チケットは大空高く舞い上がり、どんどん風で流されていく。

「待って!」

突然飛ばされたチケットを見て、アインツ少年はすぐに走り出した。

「ちょっと!アインツ!待ちなさい!」

リースは手に持ったチケットと保険証を一旦鞄にしまい、急いでアインツ少年を追いかけた。


飛ばされたチケットはヒラヒラと揺れながらスタジアムの近くにいた男の前に落ちた。

「ん?なんだ?」

男はそれを拾う。

するとそれが決勝戦のチケットであることに気が付いた。

「それ僕のチケット!」

アインツ少年は走りながらそう叫んだ。

するとその男はあろうことかチケットをポケットに入れ、アインツ少年とは逆方向へ走り出したのである。

実はこの男。

落選してチケットが入手できなかったアルマファンの一人である。

どうにかチケットを入手できないかスタジアムの周辺をうろついていたところ、喉から手が出るほど欲しいチケットが目の前に飛ばされてきたのだ。

持ち逃げするといった邪な考えが浮かんでも不思議ではない。

「待って!」

アインツ少年は必死に男を追いかけるが、さすがに子供と大人。

二人の差は広がるばかりである。

男の姿がどんどん小さくなり、アインツ少年が見失いそうになったとき。

少年の横をするどい風が通り抜けた。

「少年!あとのことは私に任せろ!」

それは金髪の青年であった。

彼は風のように速かった。

少年のそばから一瞬で逃げた男まで追いつき、後ろからタックルをしてそのまま地面に押さえつける。

「さぁチケット泥棒さん!観念してもらおうか!」

「クソ!離せ!」

男は必死に逃げようとするが金髪の青年はびくともしない。

そして男が金髪の青年の顔を見ると一気に青ざめた表情になった。

その青年は男が良く知っている人物だったからである。

「ハッシェさん!」

二人の警備員が叫びながら金髪の青年に向かって走ってきた。

遅れてアインツ少年とその父リースもその場に到着する。

男は観念した様子でチケットを金髪の青年に渡し、警備員に連行された。

残った金髪の青年はアインツ少年にそのチケットを手渡す。

「少年。今度はチケット無くすんじゃないぞ。」

アインツ少年がコクッとうなずくと、金髪の青年はアインツ少年の頭をなでた。

「あとよかったら、今日の試合は僕のチームを応援してくれよ。」

金髪の青年は自分の来ている青のユニフォームを指さした。

右胸に描かれた5頭の犬。

それは決勝戦に出場するチームオルベロスのエンブレムだ。

そして今ここにいる金髪の青年は、ハッシェ・ルク。

チームオルベロスのエースストライカーである。

「本当にありがとうございました。」

リースがハッシェにお辞儀をする。

ハッシェは気にしなくていいですよという感じで手を振り、その場を後にした。

実にさわやか男だった。

「さぁアインツ。またチケットが飛ばされない内に入場を済ませよう。」

そういって踵を返す父にアインツ少年は言った。

「お父さん!僕、あの人みたいになりたい!」

運命の出会い。

この数分にも満たない出来事が、アインツ少年の人生を大きく変えたのである。


決勝戦は両チーム点を取り合うシーソーゲームだったが、最後はハッシェがゴールを決めてチームオルベロスが勝利し、ハッシェは今大会でMVPを獲得した。

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