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疾風

今回の試合は一進一退の攻防となる。

どっちが勝ってもおかしくない、手に汗握る熱戦であった。

しかし、後半残り10分となったところで、フェネクスが連続でゴールを決め、80ポイントほどリードする展開となる。

オルベロスは逆転するために、上限いっぱい100マナを込めたボールをハッシェに託す。

試合画面を見ていた三人も、ここが最後の勝負どころだと理解できた。

「さぁ、ここからオルベロスがチーム一丸となって攻めるぞ。二人ともよく見とけ。」

「頑張れ!ハッシェ選手!」

アインツは必死にハッシェ選手の応援をする。


今回、戦いの舞台となっているスタジアムのフィールドは草原だ。

小さな丘はあるものの、身を隠すような場所はほとんどない。

攻撃するには不利な状況だ。

そんな中、ハッシェはボールを持ち、敵の水晶柱に向けて一直線に走り始めた。

それに続いて、オルベロスのICとWSもハッシェを守るように、両サイドから走り出す。

何がなんでもハッシェを妨害から守り、ゴールを決めさせるという気概が見て取れた。


まず、初めに動いたのは相手チームのFAだ。

ハッシェの進行を妨害するように立ち塞がり、攻撃魔法の準備を始める。

だが、ハッシェはそれに怯まず突撃する。

そして、二人の距離が残り数mとなったその時、ハッシェに向かって攻撃魔法が放たれた。

「ファイヤー・スリー!テトラファイヤー!」

レベル3の火の魔法がハッシェを襲う。

四方向から迫って来る炎に逃げ道はない。

しかし、ハッシェはここで意外な行動を取る。

「ウィンド・ツー!トルネードシールド!」

風魔法、それも低いレベルの魔法で攻撃を防ごうとしたのだ。

本来、火の魔法に対して風の魔法はあまりいい対処法とは言えない。

何故なら、風は火の勢いを増すからだ。

では、なぜハッシェはここで風魔法を使ったのか?

その答えは、二つの魔法が衝突した時に分かった。

ハッシェの放った竜巻が四つの炎を巻き込み、大きな炎の渦を作り出す。

そして、その炎の渦は大爆発を引き起こした。

予想外の出来事に相手のFAは爆発で吹き飛ばされる。

そして同じくハッシェも吹き飛ばされるが、ハッシェはその準備ができていた。

ハッシェは爆風を利用して空高く飛んだのだ。

「すごい!」

アインツは思わず声を上げた。

ハッシェの得意とする魔法は風魔法だ。

普段から風の力をよく理解しているからこそできた芸当である。

結果ハッシェのシールド値は1000から700程度まで削られたものの、相手の妨害を1つ退け、ゴールまで大きく前進することとなった。

ハッシェは地面を転がりながら勢いを殺して着地する。

そして、すぐさま相手の水晶柱を目指し走り出した。


次に現れたのは相手のWSである。

強力な魔法の準備をし、遠くからハッシェを狙っていた。

そして、ハッシェが射程内に入った瞬間、その魔法を解き放つ!

「アース・フォー!グランド・レーザー・スパイク!」

レベル4の土の魔法は、大地を隆起させ、巨大なトゲの柱をいくつも作り出す。

そして、それはハッシェに向かって突き出した。

だが、そのトゲがハッシェを貫く前に、無数に生えた植物がトゲの進行を止める。

これはハッシェの魔法ではなく、オルベロスのWSの魔法だ。

WSは相手の行動を予想し、ハッシェを守ったのだ。

ハッシェはその場を走り抜け、そしてお互いのWSは魔法を撃ち合いながら1対1の戦いとなる。


次に相手のVPがハッシェの前に立ち塞がる。

相手はハッシェが進む道を凍らせて待ち構えていた。

氷は水と風の複合魔法で、使いこなすのが難しい高等魔法である。

それをこれだけ広範囲に展開するのはかなりのマナを消費したことだろう。

だが、氷のフィールドでは自由にハッシェは動くことができない。

足止めするにしても、ボールを奪うにしても有効な手段だと考えたのだ。

だが、肝心のハッシェは走りを止めず、氷のフィールドに向かって突っ込んで来る。

その姿を確認した相手のVPは、ハッシェを迎え撃つ迎撃態勢を取った。

しかし、ここでハッシェが予想外の行動を取る。

持っていたボールを天高く蹴り上げたのだ。

これには相手VPも意表を突かれる。

ボールを奪えばその時点でほぼ勝利確定になるが、天高く舞ったボールを取るには、魔法で自分の身体を浮遊させるか、ボールまで届く細長いものを魔法で生成するしかない。

だが、すぐにそんな魔法が使えるほど、魔法とは単純なものではない。

今試合で使われている魔法もあらかじめ幾度となく練習し、改良して得たものなのだ。

だからこそVPはボールを取る方法を考えるのに思考を奪われた。

その隙を狙って攻撃してきたのが、オルベロスのICである。

ICは氷のフィールドの手前から、スナイパーのように相手のVPを水の魔法で狙い打った。

その意表を突いた攻撃は相手VPに直撃し、よろめかせる。

シールド値は300となり、もう一度攻撃魔法を直撃させれば、退場させることができる状況に追い詰めた。

そこを逃すハッシェではない。

ハッシェは氷のフィールドをスライディングで滑りながら猛スピードで相手VPへ迫っていた。

そして、ゼロ距離になったところで渾身の一撃を放つ。

「ウインド・スリー!クロス・スラッシュ!」

十字になった風の刃が相手VPを捉え、吹き飛ばす。

相手VPはシールド値が0になり、強制退場となった。

ハッシェは先ほど蹴り上げたボールが落ちてきたところをしっかりとキャッチし、水晶柱へ向かってさらに走る。

もう水晶柱は目の前まで迫っていた。


水晶柱の前では相手のCKであるゴルザが待ち構えていた。

ゴルザは右手に大きな盾を持つ大柄の男である。

ゴルザはハッシェと幾度となく対決して、勝ち負けを繰り返してきた因縁の相手だ。

だからこそ今日の試合も気合が入っている。

ハッシェが突撃しているのが見えてからゴルザは吼えた。

「ハッシェ!お前は俺が止める!そして、俺達チームフェネクスが今日は勝つ!」

その言葉を聞いてハッシェは少し笑みを浮かべこう言い返した。

「いいや、僕らは負けない。どんな困難もチームオルベロスのみんながいれば乗り越えられると僕は信じている!」

そう、ハッシェはここまで一人で来たのではない。

仲間たちの援護があって初めて実現したチャンスなのだ。

だからこそ、ハッシェはここで負けるわけにはいかないと気合が入っていた。

二人の距離が次第に近くなり、お互いが攻撃魔法の射程距離に入った瞬間、二人は同時に吼える。

「「勝負!」」

まずハッシェから動いた。

「ウインド・ツー!ワイルド・ショット!」

ハッシェは右腕を前に突き出し、風の球を撃ちだす。

風の球はものすごい勢いでゴルザを襲うが、ゴルザは右手の盾でなんなくその球をはじいた。

「相変わらずその盾ずるくない?」

ハッシェの言葉をゴルザは鼻で笑う。

「試合中魔法で作ったものなら鎧でも盾でもなんでもOKなのがアルマのルールだろう。悔しいなら貴様も金の魔法を覚えればいい。」

そう、アルマでは試合中の魔法で生成されたものは剣でも鎧でも使用していいことになっている。

もちろん、金の魔法は生成に時間がかかるというので攻撃的なポジションには向かないが、CKのように位置をほとんど移動しなくていいポジションでは度々使われる。

「さて、ハッシェ。これで終わりとは言わないよな?」

安い挑発に対してハッシェは「もちろん。まだまだ撃たせてもらうよ!」と答え、同じように風の球を何度も撃ちだす。

しかし、ゴルザは全ての球を綺麗に盾ではじき防いだ。

はたから見れば、何度も同じ攻撃を繰り返しているハッシェはとても愚かで無策のように見えていただろう。

しかし、次の瞬間ハッシェは動く。

風の球を何度か撃ちだした次の瞬間、自分が左手に持っていたボールを風の球に包んで蹴ったのだ。

「なんだと!?」

これにはゴルザも驚いた。

普通ならボールをキャッチで取る場面ではある。

しかし、数多くの風の球を盾で防いでいたときに、不意を突かれてシュートを撃たれたのだ。

ゴルザはついそのシュートを盾で弾いてしまう。

ボールは盾に弾かれて、天高く舞い上がる。

これこそがハッシェの狙いだった。

「ウインド・アッパーはドライブ回転が加わったシュートだ。盾で受け止めれば回転で上に打ちあがる。」

そう言ってハッシェは走り出し、上空へジャンプした。そして、自分の頭よりも上にあるボールを蹴りだそうと身体を縦に回転させる。

それはまるでサッカーのオーバーヘッドキックだった。

「食らえ!ハイ・ウインド・ストライク!」

ハッシェの放ったシュートは勢いよく水晶柱へ衝突し、水晶柱はその衝撃で振動する。

その瞬間、スタジアムは熱狂に包まれた。

ハッシェの所属するチームオルベロスが逆転したのだ。

そして、試合はそのまま終了となり、チームオルベロスがギリギリの勝利を収めるのであった。

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