変態
その日、アインツの通う小学校ではマラソン大会が行われていた。
各学年が順番に走る中、2階からその光景を眺める女の子達。
その中にエル・カッツェはいた。
エルは長くふんわりとしたピンク髪で、大きな目をしたかわいらしい女の子である。
エルは退屈そうにその光景を見ていた。
そんなエルとは対称的に隣にいる友達は、マラソン大会を楽しんでいる。
「ねぇねぇ!エル!見てよ!あの男の子すごく速いよ!」
エルは興味がまったくなかった。
足の速い男の子など、エルの好みとはまったく違うからだ。
エルはもっと控えめな大人しい感じの子が好みなのだ。
だが、そのマラソン大会で先頭を走っている男の子を見てエルは自分の目を疑った。
「え?アインツ?」
そう、それはエルがもっとも愛してやまないアインツの姿だったからだ。
「どうしたの?またいじめられたの?」
エルの目の前には泣いている小さな男の子がいた。
それは5歳のアインツである。
エルはアインツの隣人で小さい頃からよく面倒をみていた。
家族ぐるみで仲が良く、エルもアインツも一人っ子であったため、二人の関係は本当の姉弟のようだった。
「エルお姉ちゃん。」
そういってアインツはエルの胸に飛び込んでくる。
エルはそんなアインツを優しく抱きしめながらこんなことを思っていた。
(あ~もうかわいいかわいいかわいいぃ。なんて愛らしいのかしら。一生このまま抱きしめていたい。持って帰りたい。)
そう、エルは変態だった。
アインツのように大人しく、精神的に弱っている子が大好きなのだ。
ヴァリーに出会う前のアインツは本当に気弱でいじめられっ子であった。
エルは度々落ち込んで帰って来るアインツを見つけては、慰めてあげていた。
あくまでも私利私欲ではあるが。
アインツが小学生になってから、エルがちょっと目を離していた隙にアインツは変わった。
アインツはアルマに出会い、ハッシェ選手に出会い、ヴァリーに出会い、成長した。
その結果、今のアインツはマラソン大会で優勝し、周囲から一目置かれるような存在に少しずつ変わってきたのである。
それがエルにとってはすごく不満だった。
あの大人しくて気弱でかわいかったアインツはどこに行ったのか。
そんなことばかり考えていた。
結局学校が終わるまでエルのモヤモヤが消えることはなく、エルは意を決してアインツの家に突撃することを決めた。




