青春は回り、僕は誰かを好きになる2
僕は教科書類をバッグにしまい、代わりに弁当の包みを取り出す。
昼休みは四十五分あるので、そのうちの最低三十分は図書館で過ごすのをルーティーンにしている。
さっさと食べてしまおうと思い、弁当の蓋をあけたところで、前方のポニーテールがこちらを向いた。
「有末くん、いつも歴史小説読んでるよね」
相沢梨亜子は微笑して言った。
さっき話しかけようとしていたのは、これか? 僕は訝りつつ答えた。
「歴史には物語がつまっているから。古くなればなるほど、神話と史実のあわいあわいが増えていくんだけど、考古学側からの解明も進んでいておもしろいよ」
「物語かあ。やっぱりロマンというやつなのかな?」
そうだね、と僕はエビフライを口に入れた。
相沢はなぜか満足そうに頷くと、
「私もごはん食べなきゃ」
と自分の弁当の包みを取り出して立ち上がった。相沢の黒いソックスが足の長さを際立たせている。
僕はおにぎりをほおばりつつ、部室? と訊いた。
首を振って、ううん、今日は学食なの、と微笑んでから不意に、
「有末くんて、書き物もしてるんだっけ?」
「……勉強したことを、まとめてるだけだよ」
と曖昧に答えた。
「そっかあ。ときどき一生懸命に書いてるあれ、創作か何かだと思っていたのだけれど、違うの?」
「創作……というより、歴史のおもしろい話を写したり、頭に浮かんだことを思いつくままに、ね。たしかにフィクションめいた内容もあるけど、恥ずかしいし、誰かに見せるつもりはないよ。特に意味のないものだから」
「私は、見てみたいけどな」
「ありえないよ」
そっけなく言うと、相沢は不満そうに口を尖らせた。
「僕からすれば、相沢さんに書いてるところを見られたってだけで恥ずかしいのに。それに本当につまらない思いつきをごちゃごちゃと書いているだけなんだ。でも……、なんでそんなこと急に訊くの?」
「なんとなく、かな?」
相沢は意味深に言い置くと、教室の後方の開けっぱなされた引き戸から外へと消えていった。
相沢がいなくなった方から視線を戻すと、僕は我に返ったように、またダッシュで弁当の中身を平らげた。
そして、図書室へと走った。




