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その理由

義心は、巻物に視線を落として確認してから、言った。

「…まず、筆頭軍神の実月と、次席軍神の瀬那の二人は、前にもお話があったように、王に対して不信感を持っておりました。きっかけさえあれば反旗を翻すつもりでありましたが、それが無い状態で、巽の事件が起こった次第です。なので、二人の使命は上位の軍神達の過半数から王を討つことに同意を得られるようにすることでした。これは成せたので、二人の思惑は当たったという事になります。ちなみに、過半数からの同意が得られず、尚且つ王への不満を皆の前で口にしていた場合、王からの命で捕らえられて巽殺しの罪を擦り付けられて処刑される未来もあり得ました。」

炎嘉が、眉を寄せた。

「誠か。誠に嫌な未来もあったのだの。」

維心は、頷く。

とはいえ、維心には皆を説得できるだろうという自信があった。

まず、炎嘉を説得さえしたら、他は炎嘉が何とかするだろうと思っていたからだ。

それだけ、炎嘉には全幅に信頼を寄せていた。

義心は、続けた。

「古都は、巽以外は誰も殺さない、という使命がありました。つまり、仮に奈綱という真犯人が分かったとしても、それが処刑されるのを回避せねばなりませんでした。その他、真須や蒼が奈綱を庇って死ぬという未来も、あり得たのですが、それも避けねばなりませんでした。なので、古都は大変にいろいろな事に目を光らせる必要がありました。なので、漸様は改めて他の軍神達の部屋を見回り、自害するような面倒な秘密を抱えている者は居ないかどうか、調べていらっしゃいました。秋津が死んでいたら成せなかったのですが、それも知らずに回避なさいました。ですから漸様はやるべきことを成したという事になります。」

また漸は面倒な役を引いていたのだな。

皆が、漸を見た。

漸は、苦笑した。

「ま、やれるだけやろうと思うた。難しいなと思うたので、点数は10点しか振り分けておらなんだしな。今思うともったいないが。」

確かにそうだ。

皆がうんうんと頷いていると、義心は続けた。

「それから、4位の奈綱ですが、犯人として皆に投票されない、という使命と、真須を処刑させない、という使命がありました。つまりは、真須に罪を擦り付けても、処刑をさせないという事なので、王の前に突き出される前に、逃がすなり他の軍神を説得するなりしなければならないところでした。ですが、結果は皆が犯人は居ないとして王に反旗を翻す決断をしたので、これは無くなりました。焔様は、成すべきことは全て成されたので、得点は100点となります。」

焔は、困ったように笑った。

「ま、皆の情けぞ。我が勝ったとは思うておらぬ。」

しかし、維心が言った。

「背後を知ってしもうたしの。確かに殺したことは悪いと思うておるし、我が宮でこんなことがあったら罰する案件ではあるが、我は軍神の立場であったし、何よりこの王を討ちたいと思うておったからな。この判断が正しいと思うておる。」

焔が頷いて、義心は先を続けた。

「次に5位の玄師。10位の毅沙に妹からの文を届けねばならなかった。そして、毅沙の性根を正す必要があった。というのも、玄師と毅沙、そして玄師の妹の佐羅は幼馴染で、幼い頃から佐羅は毅沙を想うておりましたが、育った後は会う事もなくなっておりました。それというのも、毅沙の序列が最初あまり上がらなかったので、会う事を佐羅の父から許してもらえなくなったからでした。毅沙は、そのせいであちこち遊び歩くようになっていて、佐羅がそれを悲しんで文を書いたのです。それを、玄師は届けて毅沙の心を救うのが使命でした。毅沙は、佐羅からの文をもらって佐羅に通う事にしたのでしたね?」

毅沙役の、翠明が頷いた。

「それは、父に必死に訴えて我に嫁ぎたいと申したと、女の方から健気な文を寄越されたらの。どうやら毅沙は、幼い頃からずっと佐羅と共に居て、将来を誓い合っていたのに佐羅の父親に引き裂かれてしもうてやけになっておったようで。浮名を流しておったのも、当てつけのような感じであったようよ。それを伝え聞いた佐羅の気持ちなど考えてもおらぬのだの。そんなわけで、我は佐羅と和解したことになった。ちなみに我も、幼馴染と復縁する、と書いてあったので、お蔭で復縁できたので成せたわ。」

義心は、頷いた。

「はい。ですので、玄師役の箔炎様と、毅沙役の翠明様は点数が入ることになります。」

背後にそんな事があったのか。

皆は、事件には直接関係ないが、一人一人の事情が分かっておもしろい、と思っていた。

義心は、次々に続けた。

「では、次に6位の斗起。志心様でございますな。斗起には二つの使命がありました。刀を盗んだことを知られてはなりませんでしたが、知られてしまいました。実月の刀をもらう、という使命もありましたが、それは佐津間に譲ったので点数はありません。」

志心は、苦笑した。

「分かっておってやったことであるし。まあ良いわ。」

義心は、頷いて続けた。

「駿様の松吏の件は、旭様の来務の件でありますので、先ほど皆様がお聞きになった通りです。兄弟を探しておりました。成せたので、お二人には点数が加算されます。」

駿と旭は、頷く。

義心は、それを見てまた巻物に視線を落とした。

「蒼様の永久は、難しい位置でした。犯人に投票しない、という使命は成せました。そして、犯人を特定させない、という使命も、今回成せたことになるので、100点となります。永久は、幼い頃に父親を亡くして軍での貢献も無かったので、自然回りとは距離を取りつつ全てを丸く回す性質であった神でした。実際は特に何にも興味なく、部屋がガランとしていたのが印象的であったのではないでしょうか。」

蒼は、できたら永久も幸せになって欲しいなあと思っていた。

義心は、蒼が頷くのを見てから、先を続けた。

「高彰様の佐津間は、犯人に投票する、というのは成せませんでしたが、刀は手にしました。他、刀を盗んだ片棒を担いだことを知られてはならない、も成せませんでした。」

高彰は、ため息をついた。

「ま、仕方がないわ。志心の情けで刀だけは手にしたので良かったと思おう。」

義心は、高彰に頷いた。

そして、次へと進んだ。

「樹伊様の澄嘉は、此度は何も成せませんでした。」

樹伊は、ため息をついた。

「ま、澄嘉には他のもの達のような、大変な事情もないしな。多知の根付けを譲り受けたいと思うておったが、それを言い出す暇がなかった。加栄が暇そうにしていた時に、話し掛けたら良かったわ。何やらいろいろ考えるのに頭がいっぱいでな。」

加栄が、え、という顔をした。

「言えば根付けぐらいいくらでもやったのに。何しろ、多知の趣味はなかなか理解してくれる者が居らぬでな。多知としては、主が欲しいと申し出たら、喜んだだろうに。我だって、誰かにもらって欲しいと考えていたが、それを言い出せなかった。職人が作った物が良いだろうと思うのが普通だし、もう諦めてしもうて。言えば良かったわ。我も何の事情もないゆえ、それしか成すことはなかったのにの。」

義心は、二人にウンウンと頷いてから、先を続けた。

「次、12位の摂津ですが、覚様の翠と内回りの見回りの時に一緒で、二人で組んで回っていたのですが、その折実は、翠が一度宿舎に戻っているのですよ。そして、それを摂津は知っていますが、言わなかった。」

え、と皆が二人を見た。

公明が、苦笑した。

「そうなのだ。実は、我の妹が翠に懸想してどうしても会いたいと申すので、その時少しだけ時を空けた。本当は別の日にしたかったが、父が宮の当直の時でないとまずいと思うてその時を選んだらしい。事件には関係ないので、これを翠と共に隠す通すのが我らの成さねばならない事だった。」

覚が、気まずそうな顔で頷いた。

「そうなのだ。任務の最中に何をやっておるのだと言いたいが、そう巻物に書いてあったのだから仕方がないよの。とにかく隠し通すしかなかったので、二人共任務中の事は決して口にしまいと話し合った。お蔭で誰にも気取られなかった。ホッとしたわ。」

誠に何をしておるのよ。

炎嘉が、むっつりと言った。

「…何をしておるのよ。ま、主のことではないが。」

覚は、ムッとした顔をした。

「仕方がないではないか。巻物に書いておったのだから。」

義心は、さっさと済ませようと思っているのか、次に言った。

「ええっと、来務のことも翠のことも終わったので、次は15位の真須ですね。真須は、犯人の奈綱に投票しない、という事と、隠された何も知らないもう一人を探し出し、それと協力して真犯人を隠匿する、というのが使命でした。どちらも成したので、点数は100点となります。英様は蒼様と繋がって話をし、お互いに協力関係になろうと、確認されましたので。」と、顔を上げた。「これで、全員の思惑と成さねばならない事が説明し終わりました。何か質問がありましたら、どうぞ。」

炎嘉が、頷いて言った。

「他の、つまりは選択を間違えたらどんな未来があったのか知りたいの。それは教えてもらえるのか?」

義心は、頷いた。

「はい。許可されております。では、どんな未来があったのか、全ては無理でございますが、ご説明を致します。」

義心は、他の巻物が入った厨子を、背後に持って来て、開いた。

皆が、あったかもしれない未来がどんなものだったのか、知りたいとそれを待っていた。

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