表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/159

投票と

皆が、それぞれの想いを胸に二人の話を聞き終えると、維心は言った。

「…義心。」後ろに控えていた、義心が顔を上げる。維心は続けた。「ここで、投票によって犯人と吊るしあげられたら、どうなるのよ。」

義心は、答えた。

「このゲームでは、皆様が選択する方向によって未来が変わります。それぞれの判断や成したことにより、様々な結末が準備されております。投票によって決まった犯人の名は、王に知らされます。軍神達によって発見された犯人は、王により処刑されるでしょう。それが正しいかそうでないかに関わらずです。この王は、己でそれが正しいか正しく無いかを判断できない王なのです。」

処刑…。

あの、己の事ばかりを考えておる王にか。

炎嘉が、自分の文箱を皆に押しやった。

「…読め。もう時が無い。王の暴挙が、この文の数々で伺い知れようぞ。秋津は、己の父親の勝手で美しいがゆえにこんな扱いをされておった。その上で、皆投票を考えるが良いわ。」

全員が、頷く。

そうして、一斉にその文へと気を送って一気に読み取っている中で、義心の声が響いた。

「…そこまで。全ての話し合いのお時間が終わりました。これより、投票に入ります。」


皆が、文から手を放して、義心を見る。

義心は、続けた。

「では、投票についてご説明致します。」皆は、ウンウンと真剣に頷く。義心は続けた。「投票は、お好きなかたから順番にしてくださって結構です。挙手して頂いて、立ち上がって投票先とその投票理由、そして、何か言っておきたい事がある場合はそこで申してください。そうして、最後の一人が投票を終えた後集計となりまして、その先の結末を我が読み上げまする。」

投票によって、未来が変わる。

蒼は、急いで手を上げた。

「はい!」皆が、びっくりして蒼を見る。蒼は続けた。「オレから投票します!オレは、ここには犯人は居ない、に投票します。巽が死んだのは、確かに気の毒だと思います。でも、あんな王に、一生懸命生きていた軍神が殺されるなんて我慢できない。王を換えたいぐらいです。きっと、奈綱はどこかに逃れてやっていけるはずなんですよ。どこかにあるはずです、月の宮のような、そんな宮が。秋津と一緒に、月の宮に行けばいいんです!」

王の蒼が言うのだから、月の宮が存在する世界なら、きっと受け入れてもらえるのだろう。

それを聞いて、英も手を上げた。

「では、我もここに犯人は居らぬ、に一票ぞ。そも、奈綱は悪くないと真須であった我は思う。今読んだ王から秋津への文の内容も、あまりにも不憫ぞ。同じ娘でありながら…ならばなぜに、母親と共に一般の神として生かしてやらなんだのだ。悪いのは王ぞ。王と刺し違えても、真須は奈綱を守ると思う。こんな王には仕えたいとは思わぬ。我も蒼殿と同じく、王を換えたいぐらいだ。」

皆が、どうしたものかと顔を見合わせる。

いつの間にか入って来て、後ろで様子を見ていた妃達も固唾を飲んで見守っていた。

維心が、手を挙げた。

「…ならば、我も犯人はここには居ない、に投票する。」皆が驚いた顔をした。維心は続けた。「悪いのは王ぞ。こんなことになるような、環境を作っておったのだと我は判断する。皆が同意してくれるなら、我は王を討つ。その上で、己の王は己らで決めようぞ。奈綱をあんな王の手にかけさせるわけにはいかぬ。」

また思いきったことを。

蒼は思ったが、しかし維心なので皆がやるだろうと納得しているのが分かった。

炎嘉が手を挙げて言った。

「ならば我も犯人はこの中には居ない、に投票する。実月が王を討つ事を支持する。我が手助けしようぞ。とはいえ、こやつは一人でやりおるだろうがの。」

翠明が、ため息をついた。

「ならば我も。主らに同意ぞ。犯人はこの中に居ない。真の犯人は王だとする。王を討つことに同意する。」

駿も、頷いた。

「我もそのように。ところで、我が成すべき事は腹違いの弟を探すこと。来務がそれだった。別に男色ではなく弟を探しておるだけだったのだと言うておこう。誤解されたままだと面倒だからの。」

旭が、苦笑した。

「設定ではどちらもいけることになっておるくせに。」と、手を挙げた。「我も犯人はここには居ない、に一票ぞ。王を討つのには黙認ということにしてくれぬか。なぜなら、我は王の子なのだ。あの王は、軍神の妻にも手を出して勝手に子を作って知らぬふりであったのよ。つまりは、松吏の父の妻が我の母よ。いくらなんでも育てることはできなんだので、松吏の父は生まれてすぐに我を里子に出した。泣き寝入りするしかなかったわけだ。」

どこまでも鬼畜な王だな。

蒼は、それを聞いて思った。

妃達も、後ろでその話に顔をしかめている。

志心が、手を挙げた。

「我も皆に同意ぞ。もう王は討ってしまおうぞ。ようそんな王にこれまで仕えておったものぞ。犯人はここには居らぬ。」

そうやって、皆が次々に同意して行き、残ったのは漸と焔だけだった。

焔は、言った。

「皆、それで良いのか?巽を殺したのは奈綱ぞ。それは間違いないし、秋津を利用したのも確かなのに。ならば我もここには犯人は居ないに投票するぞ?」

炎嘉が、頷いた。

「良い。巽は気の毒だが、王の犠牲者であったと考えることにする。」

焔は、頷いた。

「では、我もここには犯人は居ない、に投票する。王を共に討つ。我にはこだわりはない。秋津には…謝るしかないの。」

漸は、頷いた。

「ならば我も犯人はここには居らぬとしよう。そして、面倒な王はとっとと処理して次へ参るのだ。ここに、全ての軍神がここには犯人が居らぬと判断したことになるの。」

義心が、黙って聞いていたが、頷いた。

「…皆様のご判断は聞き申しました。では、これで犯人捜しの時間と投票は終了し、これによりどうのような結末となったのか、ご説明となりますが、とりあえずお一人お一人とお話を。成すべき事を成せたかどうか、駿様と旭様は成せたと分かり申しましたし、蒼様、真須様もこれにより成せたという判定になりまするが、残りの皆様、個別に話をされた内容をお聞きして参ります。あちらの防音結界の部屋に、お一人ずついらしてお話をお聞かせくださいませ。では…我から見えて居らぬのは、漸様。漸様からどうぞ、こちらへ。」

そうして、漸と義心は防音結界の部屋に入って行った。

残された皆は、これで終わった、と、やっとホッとしたのだった。


綾が、小声で隣の維月に言った。

「…どうなるのでしょうか。とりあえず、奈綱という軍神が巽を殺した犯人ではありますが、皆がそうではないと庇った形ですわね。要は、この架空の宮の王の体たらくに皆が我慢ならなくなった、と。」

維月は、頷いた。

「はい。いろいろございますの。結局は、参加しておる神次第でこの最後の判断は変わるのですわ。ここで、情報がどれだけ重要なのかということで。仮に軍神宿舎を検分に行こうとならねば情報はもっと少なかったでしょうし、行っていても見逃しておったら出なかった情報もございます。巽の執務室にしても、行かねば加賀との関わりも分からず終いでありますしね。特に最後の、秋津の文などは調べるのにも時が問題になりますから、行こうと気付いても潜むのに瀬那の協力が不可欠ですの。ですが、行かねば真犯人にはたどり着けぬのですわ。」

椿が、感心したように言った。

「誠にようできておりますわ。我はもう、真須という男が告白しておるのでそれで決まりだと思うておりました。表面に見えておることだけではないのですわね。」

維月は、頷く。

「はい。うまく立ち回らなければ真犯人にたどり着けず、また背後の事を知らねばどう処断するべきか判断が付かぬのですわね。此度は、誠に知るべきことはほとんど網羅してくださいました。」

天音が、え、と維月を見た。

「え、これで全てではないのですか?」

維月は、フフと微笑んだ。

「はい。実は秋津とも話すことは可能でありましたし、やり方次第でいろいろございましたの。とはいえ、我としてはこれが良い形なのではないかと思いますけれどね。」

気になる。

皆が思ったが、これからネタばらしがあるのだ。

なので、その時を首を長くして待っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ