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犯行

一方、その頃維月達はホールで居た。

王達は手分けをして調べたりし始めたので、それからはもう、待つしかなかったのだ。

維月が、言った。

「…只今は宿舎の永久の部屋に参って探しておるのでしょうね。」

綾は、疲れたように頷いた。

「もう、途中からわけが分からなくなり申しましたわ。もう、早う種明かしをして欲しいと思うもの。」

維月はフフと笑った。

「この後しばし休憩ですの。その折茶を飲むのに場を変えますので、解決の時までそちらで我らはお話をしておりましょうか。ここで居てもお邪魔するかと黙って聞いておるしかありませぬし。」

椿は、言った。

「そうですわね。それがよろしいわ。もう、何がなんだか。ですが、王は夢中になっていらっしゃるようですわ。お目が真剣でありますし。意外なことでありました。」

それは皆思ったようで、頷く。

普段から、王が何かに真剣に向き合っている様を見るより、気を抜いた様子を見る方が多い妃の役割なので、そこは新鮮なのだろう。

とはいえ、維月は維心が物事に向き合う時の凛々しさも、頼り甲斐のある様も知っている。

何度見ても、惚れ直す心地だった。

それにしても、真犯人に行き着けるのかしら。

維月は、思っていた。

何しろ手助けする立場の神も居て、上手く立ち回っているはずだからだ。

皆優秀なので、騙すなどお手のものではないだろうか。

だが、それを見極める神もまた、優秀だった。

維月は、結末を楽しみにおっとりと王達が戻るのを待っていた。


王達は、永久の宿舎で英と向き合っていた。

英は、ため息をついた。

「…バレたら仕方がない。根付けがないと言われた時には、どこで失くしたのだろうと思うておったがそこだったか。確かにその根付けは、我が永久が戻らぬうちに、犯行に使われた刀を厨子に収める際に落としたものぞ。ちなみに刀は、皆軍から支給される同じもの。我は軍の蔵から新しい刀を盗み、それを使った。そして、それを永久の部屋に収めた際に、根付けを落としたのだろうの。部屋に戻ったら根付けがないゆえ、まずいと予備の刀と入れ換えて、腰に差してまた焔の屋敷へ戻ったのだ。焔は寝ておって、我が屋敷を抜け出したことに気付かなかった。」

そこで、また義心が割り込んだ。

「…個別のお時間です。」

こんな時に。

維心は、炎嘉を見た。

炎嘉は、言った。

「…一度ホールへ戻ろうぞ。そこでじっくり話を聞く。」と、維心を見た。「まだ次があるゆえ。」

維心は、炎嘉の意図を汲み取って頷いた。

秋津の文を調べなくても、当神が暴露しているのだから今はいい。

結局は、それは犯行の裏付けを取る作業になるからだ。

ならば今は、英の話を聞くことに集中しよう。

一同は、永久の宿舎の部屋を出て、ホールへと戻って行ったのだった。


秋津の昼の茶の務めは13:00まで。

今は、12:35だった。

ここから話を聞いていたら、とてもではないが秋津の部屋まで行って文箱を探し出し、奪って来るには時が足りない。

気取られたら面倒そうだった。

ここは、次の機会に回してさっさと犯行の全貌を聞きたかった。

妃達は、黙って座っている。

炎嘉が、言った。

「それで?どうやって巽を殺したのか全て話さぬか、英。」

英は、苦笑した。

「我が殺したわけではないゆえ、真須について書かれていた事を申せば、やはり加賀絡みの事のようだ。」

やはり、と皆顔を険しくする。

妃の席では、英の妃の佐江が失神しそうになっていた。

「ま、まあ。」維月は、慌てて言った。「出ましょうか。さあ、こちらへ。皆様も、場を変えましょう。」

綾と椿は残念そうにしたが、それどころではない。

なので、皆で佐江を支えてホールを出て、慌てた旭の侍女が案内するのについて出て行った。

「…だから我が殺したわけではないというのにあやつは。」

英は、それを見送って言う。

炎嘉は、せっついた。

「良いから。分かっていても衝撃だったのだろう。して?詳しく話さぬか。」

英は、頷いた。

「我は加賀と文をやり取りしてはいたが、思わせ振りではあるのに一向に通わせようとか、そんな様子がないのにやはり皇女だからか、とそれでも文をせっせと出していた。文は、もったいないが全てその都度焼いた。なぜなら王が知ったらまずいからぞ。我は15位であるし、どうせなら上位の軍神にと思うておるだろうからな。あちらも処分しているようだった。だが、そんなある日、秋津から悲壮な顔で言われたのだ。もう黙ってはいられぬと。実は加賀は、巽とも文を取り交わしていて、そちらには大変に熱心に己から文を書いておると。我のことがあまりに不憫なので、何とか気取ってもらおうと、加賀は複数の男に文を送っているという、噂も流してみたのに、我の耳には入らなんだので、仕方なく今申す、とな。」

やはり秋津か。

しかし秋津は、こう聞いていると命じられた通りに文遣いをしていただけのようだ。

「…それで、巽が居なくなったらと思うたのか?」

英は、頷いた。

「真須は、短絡的にそう考えたらしい。王が実月に降嫁の話をして、断られたのは知っていた。だが、まさか古都にまで声を掛けているとは思わなかった。ちなみに奈綱には、加賀への恨みの文を送っていたので知っておる。加賀絡みで殺されたというのなら、我しか居らぬと思うただろう。なので、個別会議の時に二人で話したのだ。」

漸が、言った。

「…ならば主が焼いたのは、真須からの文か?」焔が驚いた顔をする。漸は続けた。「消したつもりだろうが、我には分かる。臭いが残っておった。窓から外へ撒いたであろう。」

焔は、苦笑した。

「なんぞ、バレておったのか。その通りぞ。これまでなら上手く誤魔化せたのに、主の鼻があるとこうも違うか。」

漸は、フンと鼻息を吐いた。

「臭いを確かめるのは最早習慣であるからな。僅かな臭いも分かるのよ。他の部屋ではしなかった臭い。主が何かを隠蔽したのだと維心には話してある。」

維心は、頷く。

「泳がせておったのだ。だが…」と、腕を組んで考える顔をした。「…そこまで庇っておったのに何故あの時根付けを見つけた事を皆に申した?主以外、寝台の下まで見てはおらなんだ。あれが見つからねば、真須だと特定される事もなかっただろうに。」

焔は、顔をしかめた。

「あれが何なのか、分からなかったからぞ。ただのゴミかと思うた。だが、やぶ蛇だったわ。」

炎嘉は、言った。

「それで?どうやって殺したのだ。ここへ巽を呼び出したのは、秋津であろう。」

真須は、頷いた。

「その通りよ。秋津に頼んで、巽を呼び出させた。秋津自身に嫌疑が掛かってはならぬので、誰かと、できたら捜査に関わるだろう上位の軍神と共に過ごせと言った。秋津は、心当たりがあるので我の事はお気になさらず、と言って、手を貸してくれた。まんまと誘き出された巽を、奈綱の屋敷から抜け出した我が刺し殺した。誰かの気配がしたゆえ、すぐにそこを離れたので誰だったか確認はしておらぬ。休憩交替の時を選んだのは、その折離宮担当の軍神達がここを離れておるのを知っていたからだ。我の知るのは、以上ぞ。」

そういう事だったのか。

時刻は13:15に近付き、もうすぐ休憩時間に入る。

炎嘉は、ため息をついた。

「…ま、一応今は、個別会議の時間なので。」と、維心を見た。「維心よ、話そう。」

維心は、何かを考えていたが、頷いた。

「…分かった。」

そうして、二人は防音結界の中へと移動して行った。

残されたもの達には、何とも言えぬ空気が漂っていた。

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