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義心は、言った。

「では、今実月役の王が申されたように、皆様の架空の王から任務の褒美だと賜った刀が屋敷から盗まれ、それを捜索している最中に巽の遺体と、刀を見つけました。死因は胸を一突きにされた失血死。昨夜は穏やかな普通の夜で、夜に出歩いていたのは離宮回りの見回り隊、内回りの見回り隊、外回りの見回り隊の数人しか居ませんでした。ちなみに、筆頭重臣の息子とはいえ放蕩息子で通っていた男なので、皆の心象は良くありません。良く屋敷で騒動を起こして仲裁に行っていたのですが、そういえば最近静かだったなとは皆様思い当たります。」

全員が、怖いほど真剣に聞いている。

そんな中で、妃達が支度を済ませて入って来て、王達に頭を下げると、ホールの隅に設置されてあるソファの方へとぞろぞろと歩いて行った。

義心は続けた。

「ここからですが、今から全員で話し合う時間を一時間設けます。その後、話したい神が居れば指定して防音の結界を敷いてある隣りのお部屋に移って、お話をすることができる時間をまた一時間設けます。部屋は6つあり、それぞれの部屋に入る事ができます。複数指定することも可能です。そしてまた全員で話し合う時間と、交互に繰り返す事になります。途中休憩を挟んでこれを4回繰り返した後に、犯人だと思う神にそれぞれの役の序列順に投票して頂きます。ちなみに記憶の玉を取るのは、規則違反という事になりますので、おやめください。大体の流れはお分かりになりましたでしょうか?」

皆が、頷く。

何より眠そうだった翠明ですら、今ではかなり真剣な顔をしている。

義心は、言った。

「では、壁にある時計をご覧ください。」全員が従う。義心は続けた。「只今は午前7時15分です。8時15分まで、全員でのお話をお続けください。」

そう言って、義心は壁際に下がった。

炎嘉が、言った。

「…こやつは放蕩者であったし、実月の刀を盗んで来たのではないのか?だとしたら、殺したのは実月に見えるがの。」

維心は、首を振った。

「我が来た時にはもうこうだった。そもそも、殺さずとも刀ぐらい取り返せる。それに殺すなら、こんなに目立つ場所で殺したりせぬわ。王から刀を賜るほど信頼されておるのに、何故に臣下一人を殺して罪を犯さねばならぬのよ。」

志心が言った。

「我は非番で、実月を訪ねて屋敷へ行ったが居なかった。その時は、主の侍従達も特に慌てた様子はなかったし、その後のことではないのか?」

実月は、答えた。

「分からぬ。主は何時頃に屋敷へ参った?そういえば、駿…松吏が見かけたとか言うておったな。三番目の休憩となるとかなり深夜ぞ。そんな時間に何をしに我の屋敷へ来たのだ。大体我が宮の宿舎で休むのは、主は友なのだから知っておろうが。」

志心は、顔をしかめた。

「非番であるから帰っておるかと思うただけぞ。結局何もせずに茶だけ出されたゆえ飲んで帰った。主の侍従に聞けば分かるわ。」

怪しい。

だが、決定打がなかった。

「…恐らく刀を盗んだ奴と殺した奴は別であろう。」翠明が言う。「同じだとは思えない。離宮で殺されておるのだから、離宮の見回りの奴らが疑われるのは道理。だが、お互いにとりあえず、休憩の時以外は離れておらぬのだな?」

駿が、頷く。

「それは確かにそうぞ。何かできるとしたら、休憩に向かう時に離れるゆえその時手を下して休憩に向かうよりない。だが、離宮当番とはいえさっきも言うたように離宮の中までは王に許されておらぬから、あくまでもこの周辺を見回るだけで何があっても気を放たなければ気取らぬぞ。灯りもついていなかったしな。誰か居たとは思えぬ。」

高彰が言った。

「そも、巽は死後どれぐらい経過しておるのだ?」

維心は、答えた。

「我が見つけた時既に2、3時間経過した様子だった。つまりは夜明け3時間前ほど、主らが4番目の休憩を終えたぐらいの時間ぞ。」

ということは、4番目の休憩があったのは、4人組になっている見回り当番だけ。

4人組は、離宮当番のみだった。

「…外回りは3人であったな。その時間は共に居るはず。」維心が言う。「ということは、内回りと離宮当番で4番目に休憩に行ったのは誰ぞ?」

公明が言った。

「我が内回りで4番目。つまり共に4番目で休憩したのは佐津間ぞ。」

炎嘉が、言った。

「その二人が、今のところ容疑者候補になるの。」二人が驚いた顔をすると、炎嘉は続けた。「他は誰かと共に任務についていたので抜け出せば分かる。主らなら、休憩終わりに離宮に潜んで殺してから任務に戻ることも可能だということだ。」

佐津間役の高彰と、摂津役の公明が顔を見合わせた。

そして、高彰が言った。

「…そんな分かりやすい事があると思うか。」皆が、眉を寄せる。高彰は続けた。「そも、我らは任務に戻らねばならなかった。少なくとも公明…摂津と共に宮の控えで休んでいた事実はお互いに見知っている。そこから見回りの場所まで戻るのに、飛んで数分の距離ぞ。長く遅れたら、同じ見回り仲間がおかしいと気付くはず。松吏、我はそんなに遅れたか?」

駿は、問われて顎に手を置いて、首を傾げた。

「いや…遅れてはおらぬの。妥当な時間だと思うたからこそ、ハッキリ覚えておらぬのだろう。遅れておったら遅いなと感じたはずだ。そうではないか、来務、多知?」

旭と加栄の二人は、頷いた。

「その通りよ。特に違和感はなかった。すんなり戻って参った印象ぞ。たった数分で、そこに巽が居ると知っていて殺してすぐに見咎められずに戻って来るなど、不可能ではないかと思うがの。」

公明扮する摂津の仲間である、覚の役である翠が言った。

「そう言うのなら摂津もそうぞ。普通に戻って参ったし、内回りは離宮とは反対方向。もっと時を取るはずなので、ないはずよ。」

公明が、言った。

「任務についていながらに誰にも気取られず巽を殺すのは難しい。非番の奴らはどうなのだ。瀬那が夜中に宮へと向かうのを多知に目撃されておろうが。つまりは、起きて行動しておったということぞ。」

瀬那である炎嘉が、言った。

「多知は二回目の休憩時に我を見掛けたという事であるから、その頃にはまだ巽は死んでいなかったことになるだろうが。そのまま帰って寝たのだから、知らぬ。」

翠明が、ため息をついた。

「…死亡推定時刻は正しいのか。我らが確かめる事はできるか?」

義心は、自分を見て言う翠明に、頷いた。

「はい。調べたところ、死亡推定時刻はやはり発見時で2、3時間前のことだったと分かります。」

翠明は、頷いた。

「取り越し苦労だったか。やはり実月が殺して時刻を偽っているのでもない。」

維心が、言った。

「だから我には巽を殺す動機がないわ。刀を探しておっただけだし、我は巽が刀など必要ではなかっただろうと思うておるので、刀は攪乱させるためにわざと犯人がここへ残して行ったのではないかと思うておる。つまり、我は犯人は同一人物ではないかと思うておる。我に罪を擦り付けようとしておるように見える。」

志心が、言った。

「これは、計画的に行われたことであると?」

維心は、頷いた。

「その通りぞ。突発的に行なって、見回りの者達の目をかいくぐってこの場所で巽を殺せると思うか。巽がここへ来た目的も、誰かに呼び出されたとしか考えられぬ。巽に恨みを持っているような者は居ないのか。誰か情報があれば出して欲しい。」

漸が、言った。

「…巽か。巽は確か、最近は真面目に父親について政務を学ぼうとしておったと聞いておる。我が通っておるらしい女が宮の侍女であるので、そこから話を聞いたのだがの。」

炎嘉が、苦笑した。

「通っておるらしいとは何ぞ。つまり、古都の女が宮の侍女なのであるな。して?他に何かないか。」

漸は、頷いた。

「女が申すに、巽は最近になって女を見染めたらしゅうて。その女というのが、王の第一皇女の加賀(かが)。王は常より皇女を結界外に出したくないので、臣下に降嫁させたいとお考えで、軍神か重臣にという話が出ていたらしいので、途端に巽は精進するようになったのだとか。というのも、巽は筆頭重臣の息子であるから、その気になれば皇女を戴ける立場だと気付いたからなのだとか。ま、女の噂であるし、どこまで誠か分からぬがの。」

巽は、皇女の加賀を見染めて望んでいた。

炎嘉が、維心を見た。

「だが、王は実月にと言うておったのではないのか?我はそう読んだ…いや、聞いたがの。」

維心は、首を振った。

「我は断った…いやお断りした。身を固めるつもりはないと申し上げて、だからこそ代わりにと刀を賜ったのだ。その刀を失くしたとなれば、婚姻が言われるのではないかと必死に探しておったぐらいで、我は皇女に興味はない。」

公明が、言った。

「それを幾人が知っておる?皆、主の刀は褒美に遣わされたのだと聞いておるだけ。王から直接にそんなお話があったとは聞いておらぬが。」

維心は、答えた。

「軍神が断ったとか、皇女の顔に泥を塗ることになるゆえ、誰にも言わぬわ。知っておるとしたらその時外に居った王の侍女ぐらいではないか?とにかく我は、皇女に関してはそんな気はないと申しておくわ。」

蒼は、書いてあった項目を思い出していた。

加賀…第一皇女でかなり美しく、王も自慢の娘を己の守りの外には出したくないからと、臣下に降嫁しか考えていない。

臣下の中でもその話は知れ渡っており、加賀を狙う者は軍神達の中でも多かった。

「…噂が広がっておったら主を恨む男は多かろうな。」炎嘉が言う。「加賀は王が殊の外可愛がっておる美しい皇女で、それを望む男は多かった。刀を盗ったのは、そのうちの誰かなのではないのか。そして、主に罪を着せようとしておるのかもしれぬ。」

維心は、考え込む顔をした。

「ふーん…。だとすると、巽の他に、あれを望んでいた男が巽を殺した可能性があるという事よな。ここに居るのは軍神でも筆頭から16位までの上位の者達。誰もが望めば皇女を賜る事はできる位置に居る。一人一人、聞いて行くしかないかの。」

聞いて言うだろうか。

蒼は、顔をしかめた。

自分は、特に何も知らないのだが、つまりは皆の仲を取り持つことはしても、特別に仲が良い神が居たわけでもない、うわべの付き合いが上手い神の役のような気がする。

誰が誰と友達で、そして誰の秘密を知っているのだろうか。

蒼は、まだまだ何も分からないのに、ため息をついていた。

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