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めんこ勝負

蒼は、最初に説明をした。

順番を決め、最初に攻撃する人以外は、自分のめんこを地面に置く。攻撃する人は、自分のめんこを地面にたたきつけ、風圧で相手のめんこを裏返す。裏返しためんこは、自分の物になる。全てのめんこを失った者が負け。獲得しためんこの数が多い者が勝ち。

全員が真剣に説明を聞き、前の畳の上に移った。

旭は、漸と同じようにめんこを持っていなかったので、蒼のめんこを借りる事になった。

漸も、多めに持っている蒼のめんこを借りて、それで参加することになった。

「順番を決めましょう。」蒼は、言った。「オレは審判をするので、参加しませんしめんこは要らないから、旭と漸に貸します。ちなみに、装飾されためんこが欲しいならその番号のめんこをひっくり返すのを頑張ってくださいね。それぞれ特徴的なので、誰のめんこが誰のものか分からなくなることはないでしょう。ええっと…じゃんけんでもするかな。」

蒼が言うと、着いて来ていた嘉韻が言った。

「王、それでは神は知らぬ方法ですので、一般的ではありませぬ。クジを作られたらいかがでしょうか。」

蒼は、頷いた。

「じゃあ、そうしよう。紐の端に番号を書いて、作ってくれるように侍女達に言ってくれないか。」

嘉韻は、頭を下げた。

「は!」

そうして、出て行った。

蒼は、皆を見た。

「順番はクジで決めましょう。少々お待ちを。」

炎嘉が、時があるので皆の装飾されためんこを見て回って、何が欲しいか物色していた。

焔が、その横へと並んで言った。

「のう、やはり維心のやつか。あの宮の奴らは器用であるからなあ。この桜の木の枝ぶりはどうよ。見事よな。これは貝か?」

炎嘉は、頷いた。

「これが欲しいのう。隣りの海の風景の物も良いなあ。龍は誠に何でも凝りよるから、目移りするわ。」

維心が、言った。

「我に勝たねば獲れぬぞ?まあ、獲られても獲りかえすがな。特にその、桜の物は維月が気に入っておるし、持ち帰らせるわけには行かぬわ。」

すると、志心が言った。

「こら、維心の物ばかり見ておって。それよりこちらを見よ。覚の宮の物も珍しいぞ。塗りが見事なのだ。」

どれどれと皆がそちらへと移動する。

言われた通り、確かに艶やかな深みのある黒のような赤のような、それは美しいめんこがあった。

「おお、これはまた。敢えて柄を入れずに塗りで色彩の奥深さを出すなど。主の宮の塗りの職人は、かなりの手練れよ、覚。」

炎嘉が言う。

すると、焔がポンと手を打った。

「そうよ。そういえば、こやつの皇子が成人した時に祝いを遣わせたら返礼に盃が送られて参って。それがあまりに見事であるから、上客が来た時しか出さぬと宝物庫に桐箱のまま収められておるわ。覚の宮は、塗りの職人がかなり良い腕なのだ。」

覚は、頷いた。

「そうなのだ。もう、職人で勝負しようと思うたら、あれしか主らの宮に太刀打ちできる職人が居らぬで。めんこなど知らぬだろうが、小さな美術品だと思うて作れと申したら、このように。塗りだけでは飽きるゆえ、金粉を散らしたものやら絵師に金で描かせたものやらも作って参った。色彩では単調やもしれぬが、それなりに見られる物になったと我も思うておる。」

本当に美しい塗りだ。

翠明が、言った。

「主の宮の職人に、盃を作ってもらおうかの。うちはそんな優れた職人が居らぬでなあ。来客があった時の盃はいつも陶器なのだが、あれはよう欠けるし塗りの物も軽いし良いなと思うてな。」

覚は、頷いた。

「いつなり申してくれたら、作らせようぞ。」

それぞれの宮の得意分野が分かって、たかがめんこだがされどめんこだなと蒼は思っていた。

王達がそんなこんなでめんこを眺めて感想を言い合っている間に、クジは無事に作られて持って来られたのだった。


維月達は楽しく会話しながらいろいろ文字を書き付けて楽しんだ後、日も傾いて来たしと、惜しみながら部屋を出て王達の元へと向かう事にした。

帰って来いといつ言って来るかとヒヤヒヤしていたが、全く水を刺される事もなく、お陰で楢もようやく皆と馴染んで、リラックスして話せるようになった。

維月が満足して侍女に案内されながら歩いていると、綾が言った。

「変わらず美しい文字でありましたわ、維月様。良い学びになりました。」

維月は、微笑んで答えた。

「まあ綾様ったら。綾様の艶やかな文字には敵いませぬのに。我ももっと精進せねばと思いましたわ。」

天音が言う。

「初めて龍王妃様のお手を拝見させて頂きましたが、まあ、誠に何と素晴らしいものかと。我も励んでそれなりにと思うておりましたのに、恥ずかしくなりましたわ。」

天音もそれは良い文字だった。

芯の強そうな、それでいて包容力のあるような美しいものだった。

「天音様の文字も美しかったですわ。我は元より王に御指南頂いてやっとであるので、まだまだなのですよ。」

何しろ維心は手取り足取りそれは辛抱強く教えてくれたのだ。

本当に良い夫だと我が夫ながら誇らしかった。

「それにしても楢様の文字もお優しいお気質が滲み出る美しいもので。驚きましたわ。」

椿が言う。

楢は、恥ずかしげに答えた。

「我なりに励んではおりましたが、この世にはまだあのように美しい型があるのだと気を引き締めて精進しようと思いましたわ。皆様には、戻りましても文などを取り交わして御指南いただけたらと。」

綾は、微笑んで答えた。

「まあ。指南などおこがましい限りですけれど、文はいつなりお寄越しくださいませ。お待ちしておりますわ。」

皆が仲良くなって良かった。

維月が満足して王達の居る部屋へと入って行くと、いきなり焔の叫び声が聴こえて来た。

「あー!漸、主よくも我の3番をひっくり返しおったな!」

何事?と、妃達が目を丸くする。

王達は、全員テーブルの前の畳に立っていて、何やら足元にはカードが散らばっているのが見えた。

…めんこ?

維月が思っていると、蒼がこちらに気付いた。

「あ、戻って来たのか?」

維月は、困惑している妃達を代表して言った。

「何事ですの?見たところ、めんこの勝負のようですけれど。」

維心が、こちらを振り返った。

「おお維月、戻ったか。」

維月は、頭を下げた。

「はい、王よ。それでめんこをなさっておいででしたか?」

維心は、頷いた。

「その通りよ。主が好みそうな物は獲得しておいたぞ。後で見るがよい。」

まあ、維心様なら負け知らずでしょうね。

維月は思いながら、頷いた。

蒼が、言った。

「では、ここまでにしましょう。集計しなくても維心様が一番でしょうが、他はいかがですか?」

炎嘉が、顔をしかめた。

「我。我が二番ぞ、獲られたのは一枚だけだったし。獲ったり獲られたりでややこしいがの。」

あちこちめんこが散っていて、誰が誰なのかわからない。

駿が、言った。

「せめて覚のやつだけは獲りたかったが獲ってもすぐに取り返されて。結局維心殿の物か。」

維心は、フフンと笑った。

「持って帰って我が宮の職人にも見せるのだ。良い塗りであったしな。」

何やら攻防があったらしい。

蒼は、パンパンと手を叩いた。

「さあ!おしまいですよ、畳から降りて!」と、旭を見た。「旭、もう日が沈むし露天風呂などにご案内したらどうか?」

勝負ごとには大騒ぎの王達なので、蒼は気分転換させるためにも場を移動した方が良いとそう言った。

旭は、めんこを手に呆然としていたが、ハッと我に返って頷いた。

「おおそうよ!では案内しようぞ。そら、皆参るぞ。」

まだやるとごねる焔を説き伏せて、皆は露天風呂の方へと移動することになった。

蒼は、居ない間にめんこは片付けておくように、侍女達に言い付けるのは忘れなかった。

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