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来訪

妃達が出て行くのを見送って、翠明が言った。

「何やらホッとしたわ。維月殿が面倒を見てくれたらこれ以上無理を言われる事もないしの。」

炎嘉は、笑った。

「誠に綾に頭が上がらぬな主は。まあ妃が居ってはなかなか羽目も外せぬし、あれらはあれらで楽しめば良いのだ。」

焔が言う。

「だから妃など面倒なのにの。連れて来るからではないか。我らだけで集まれば良いのだ。」

維心が言った。

「己だけで正月出掛けたらそれこそ何を言われるか分からぬわ。まあ、あれらはあれらで楽しむという炎嘉の言葉はその通りぞ。女同士積もる話もあろうしな。特に維月と綾は仲が良いから、会わせねば文句を言われる。」

それには、翠明も頷いた。

「それよ。主、少し維月殿に言うてくれぬか。度々綾を宮に誘ってくれるのはありがたいが、あやつは一度行くとなかなか帰って来ぬからな。我が毎回渋るとあやつは機嫌が悪うなるのだ。仲が良いのはいいが、困るのよ。」

維心はクックと笑った。

「そういうことには口を出さぬようにしておるからの。それは面倒な女なら付き合いを禁じるが、綾は申し分ない友であるし。呼んでも良いかと聞かれたら、良いと答えるわ。だがこれからは、とりあえず翠明の気持ちを考えて短期間にせよと申す事はするゆえ。」

翠明は、渋々ながら頷く。

志心が、言った。

「それほどに側にとは誠に困った奴よの主も。綾の好きにさせてやるが良い。龍の宮ほど安全な場所はないのだし、預けておって心配はなかろうが。」

翠明は、ジトッと志心を見た。

「あれがまた先に逝く事を思うたら時が惜しいのよ。一度失っておるのだからな。主らには分かるまい。」

確かに、綾の前世の綾を失った翠明は、しばらく立ち直れなかった。

気持ちは分かるので、維心が苦笑してその会話を聞いていると、そこへ侍女が来て頭を下げた。

「王。漸様がお越しでございます。」

旭は、頷いた。

「おお、やっとか。」と、立ち上がった。「ちょっと迎えに行って来るわ。」

炎嘉が頷いた。

「そう遅れもしなかったの。まだ遊びも始まっておらぬし。早う連れて参れ。」

旭は頷いて、そこを出て行った。

焔がそれを見送って、言った。

「あやつは気が進まぬのかの。我など夜明けからもう出たくて仕方がなかったのに。」

志心が、笑った。

「何をするのかも知らぬのに楽しみにすることもなかろうが。あれもここで楽しめば、次からは真っ先に着いておろうよ。それに、皆が降りるのを待って時を取っておったから、まだそう遅れてもおらぬではないか。公式の事でもあるまいに、時など良いのよ。」

確かにまだ昼過ぎだ。

漸が到着したと酒が次々に持って来られる中、皆は漸を待っていた。


漸は、旭の離宮の上空で追って来た月の宮の軍神から松からの返事を受け取り、それに返事を書きながら到着した。

持って来たのが軍神だったので、すぐにとって返してしまったのでそれを届ける事もできずに、旭の宮に降り立ってイライラしていた。

貫は、そんな漸に言った。

「王、何分王族同士の文でもないのですから、軍神が持って来ただけでも良かったのですから。お相手は、蝦夷までは返事を送られぬと書いていらしたのでしょう?それも道理なのですよ。」

漸は、唸った。

「我が王なのだから良いではないか。だったら主、返事を持って月の宮へ行き、返事を待って戻って参れ。それならいける。」

ずっと蝦夷と月の宮を行き来し続けろと。

貫は、言った。

「…我は王のお側に控えるのが務めでありまする。命だと仰るのなら参りますが…。」

確かに、筆頭軍神に文使いなど何度もさせられない。

漸は、ウーッと唸った。

そこへ、旭がやって来た。

「漸殿、よう来られたの。皆集まっておるのだ。さあ、こちらへ。」と、漸がむっつりとしているのを見て、首を傾げた。「はて?どうしたのだ漸殿。何やら機嫌が悪そうだの。」

漸は、素直に答えた。

「蝦夷が遠すぎてあちらと文のやり取りもできぬのだ。何とかならぬか。」

旭は、歩き出しながら言った。

「まあ、我とて面倒で会合にもなかなか出向かないほどであるからの。それほどに重要ならば、軍神に命じたらどうか?」

確かにそうだが、何度もになるから無理なのだと言うのに。

漸は思ったが、旭に当たっても仕方がないので何も言わなかった。


案内されたのは、変わった設えの部屋で、王達がぐるりと半円を描いて長いテーブルの前に座り、こちらを振り返った。

「おお、来たか。漸、遅いぞ。やっと酒が飲めるわ。ささ、座れ。」

漸が案内されたのは、維心の隣りで炎嘉とは維心を挟んで座る場所だった。

焔が言った。

「ここで珍しい遊びを皆で楽しむのよ。蒼がいろいろ持ってきてくれておるようだし、それに維心も何かあるらしい。楽しい事が好きなら願ってもないぞ。」

しかし漸は、何が気に入らないのかむっつりしている。

皆が微妙な空気になりそうだったので、蒼が気を遣って言った。

「ここで4日ほどお世話になったら、月の宮に来てもらいたいと思っておって。全員であちらに移ってはどうかと。」

焔は、知らなかったので、目を丸くした。

「誠に?良いのか、蒼。こちらとしては願ってもないがの。」

蒼は、頷いた。

「やることがなくなるだろうからな。月の宮なら、最悪ゲームもあるし。」

だが、思っていた以上に漸がそれに食いついた。

「誠か!月の宮に参れるのか?!」

蒼もびっくりしたが、皆もびっくりした。

蒼は、少々退きながら頷いた。

「まあ…その頃なら宮の正月休みも終わっておるし、問題ないから。」

月の宮に行ける。

漸は、途端に機嫌が良くなって、微笑んだ。

「ならば良い。」

何が良いんだろう。

皆思ったが、なぜか漸の機嫌が直ったので何も言わなかった。

志心が、言った。

「して?今回はどんな遊びを持って来ておるのだ、維心よ。何やら維月が大層な準備をしておったと聞いておるがの。」

維心は、頷いた。

「マーダーミステリーとか申す、人が考えた遊びであるようぞ。シナリオがあり、皆にその中の登場人物の一人が割り当てられる。そして、その中には犯人も居て、それを皆で当てるわけぞ。犯人役に当たってしもうた者は、己が疑われぬようにする。最後に一人ずつ、犯人は誰かと申すのよ。得票数の多い者が拘束され、それが犯人であれば犯人ではない者達が勝ち、逃げ切れたら犯人の勝ち、という遊びぞ。制限時間があるそうで、その時間内で調べて行くそうよ。ただ、準備に時間が掛かるゆえ、今からでは無理ではないかの。あれは今、茶会に出ておるしな。」

漸は、それを聞いて目を丸くした。

「聞いたことのない遊びぞ。やった事が無いの。主らは常、そんなもので遊んでおるのか?」

焔が、自分が提案したのでもないのに誇らしげに胸を張った。

「だから言うたではないか。正月の遊びは、常とは違うのだ。誠に珍しい事が多くての。ただ、維心が言うたように、すぐには無理なようであるな。」

蒼が、頷いた。

「だったらオレが持って来たもので遊びますか?羽子板、ありますけど。それとも、メンコにします?前にやろうとしてできなかったし。」

炎嘉が、頷いた。

「良いの。メンコか。まずはお互いのメンコを見せ合う事から始めるか。」と、漸を見た。「漸は、知らぬから持って来ておらぬだろうが、我の物を貸してやるゆえ。次から作って来れば良いぞ。」

漸は、俄然興味が湧いたようで、頷いた。

「メンコとな。見たい。どんな遊び方をするのだ?」

蒼が、苦笑した。

「それは、皆知らぬからこれからオレが説明しよう。」と、自分の侍女に頷き掛けて、持って来たメンコを持って来させることにした。「今回は、本格的に戦いにしましょうかね。景品用のメンコと、戦い様のメンコを準備して来ているはずですけど。」

俄かに背後が慌ただしくなって、それぞれの侍従や侍女が急いで平たい厨子を持って入って来る。

あの中に、メンコが入っているのは確かだった。

焔が、自分の厨子を侍従に目の前の畳の上へと置かせながら、言った。

「持って来た。番号を振って置いたぞ。戦闘用メンコの方に。」

開いた厨子の中には、綺麗に並んだ美しく装飾されたメンコと、その下に番号が書かれた札が着いていた。

もう一つの厨子には、メンコ自体に番号だけが振り分けられてあって、それもそれなりに美しい色合いに塗られてあったが、明らかに装飾されてある物より、シンプルで頑丈そうだった。

…めっちゃ激しく戦いそう。

蒼は、それを見て思った。

次々に全員のメンコが運び込まれて並べられる中で、蒼はメンコでの戦い方を説明し始めたのだった。

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