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年末

龍の宮では、確かに維心は忙しいのだが、仕事がとんでもなく速いのでいつもと変わらなかった。

なので、定刻に居間にきちんと戻って来るのだが、維月が居ない。

それと言うのも、維月は旭の宮へと皆で向かうに当たり、例の娯楽の一つである、マーダーミステリーの舞台装置などを整えて、持って行く準備を指示しなければならないのだ。

前に準備していたものを、そのまま持って行くとはいえ役割分担が龍の宮でやるという事を前提に決められていて、それをどうするのかを決めねばならない。

臣下を大勢連れて行くのもなので、必ずついて行く軍神達に全てシフトして文官たちが受け持っていた部分を引き継ぎしていたのだが、時間が掛かる。

鵬も、祥加も公沙も一緒に内容を詰めた仲間だったが、これらは宮の中を回すために、重臣筆頭として当日は龍の宮に残らねばならなかった。

なので、代わりに共に旭の離宮に飛び立つ軍神達に内容を教えた上で、どういう役割があるのか話して聞かせ、誰にそれを振り分けるのか決めた上でどう役割を演じるべきなのかとしっかりと教え込まねばならない。

義心と明蓮はとんでもなく物覚えが良いので、あっさり理解を終えたが他が時間が掛かって仕方がなかった。

何しろ、聞いたこともないような事をさせられるのだから、それも仕方のないことだった。

それを指示して進捗を見ているので、維月は居間に戻れなかったのだ。

義心が、言った。

「維月様。そろそろ王がお戻りになって居る頃であります。ここは我が見ておいてご報告致しますので、王の御元へ。」

維月は、ハッと窓の外を見た。

そうだ、もうそんな時間。

「…ごめんなさい、義心、じゃああなたに頼むわ。3つのシナリオのどれをやるかまだわからないし、もしかしたら7日もあるから全部とかになるかも知れないの。皆には負担だろうけれど、よろしくお願いね。」

義心は、頭を下げた。

「は。お任せください。」

義心が真っ先に理解してくれたから助かるわ。

維月は思って、急いで奥宮へと向かった。


思った通り、維心はもう戻っていた。

維月が戻ったのを見てパッと嬉しそうな表情が浮かんだが、すぐに拗ねたように顔をしかめる。

維月は、維心に文句を言われる前に言った。

「お待たせして申し訳ありませぬわ。こちらから蝦夷へ持って参る娯楽の事で、かなり大層な事になっておるので大騒ぎですの。年末の忙しい時でありますので、時が限られておってこのような時間になってしまいました。」

維心は、寄って来た維月の手を取りながら、文句の一つも言いたかったが娯楽については維月に丸投げしているので、何も言えずに頷いた。

「…そうか。とはいえもう準備はできておるのだろうの?もう7日もないぞ。」

維月は、頷いた。

「はい。舞台装置などは既に荷造りを終えておるのですが、本来臣下が担うはずであった役目を軍神達に振り分け直したので、それを教えるのに時を取っておりまする。幸い義心がすぐに理解して手伝ってくれておるので、任せて参りましたわ。明蓮も既に丸暗記していて手を貸し手くれるので、恐らく大丈夫なのではないかと。」

維心は、頷いた。

「我らの娯楽に軍神達を使うのはとは思うが、臣下をぞろぞろ連れて参るわけにも行かぬしな。ならば良い、義心ならば上手くやるだろう。旭からはとっくに準備はできておるので、大晦日から来ても良いと言うて来てはおったが、元旦に臣下と顔合わせだけはせぬとな。なので予定通り元旦の昼頃参るとあちらには知らせをやった。さすがの焔も王としての役目があるので同じように元旦に参るそうな。あちらは燐が一時的に戻って後を回すのだと聞いておるので、燐へと対面もあろうしな。」

維月は、フフと笑った。

「燐様にお任せして己は遊び呆けるのに、元旦の挨拶もしないとなればまた、燐様に咎められると思われたのでしょうね。烙様にも共に戻られるのだとか。」

維心は、頷いた。

「元より烙は皇子の煌にいろいろ教えるために頻繁に宮に戻っておるらしいしの。今では燐より宮に詳しかろう。補佐に戻るのだと聞いておる。あの二人が居れば焔は宮を空けるのに問題ない。ま、こちらも維明と維斗が居るゆえ。最近は維知もしっかりしてきたし、我も安堵しておるよ。」

維知は維斗の皇子だ。

次代龍王の維明があの様子で妃を娶ることはなさそうなので、恐らく維知が維明の次になるのだろうと思われたが、何分維心の寿命は定められていない上に、一度転生し直してまた新しく生きているので尚更しばらくは代替わりなどない。

なので、そこはあまり皆気にしていなかった。

「どちらも落ち着いておって良かったこと。それにしても、今回7日もとは長くはありませぬか。常は3日で宮は4日から通常運営されるのが普通でありましたのに、此度は長いなと思うておりました。」

維心は、ため息をついた。

「確かにそうだが、焔が今年は休めなかったのだからとごねての。此度だけ、7日でとなったのだ。我としても7日も飽きるのではないかと思うたが、まあ蝦夷になど滅多に行かぬし此度だけなら良いかと思うて。次はこうはならぬと思う。」

維月は、頷いた。

「蒼も気を遣って双六やら羽子板やらを詰めて準備をしておるようですわ。さすがにゲーム機は持って行けないと申して居りまして。何しろ電気が無いのでソーラーパネルまで持って行く事になるからとか。手持ち無沙汰になったら、月の宮まで皆様をお連れしても良いとか申しておりました。そのつもりで、宮では一応準備をさせているのだと聞いております。」

維心は、苦笑した。

「蒼には気を遣わせるの。確かに月の宮に移動になるやもしれぬ。三が日が過ぎたら宮も通常運営になるゆえ、蒼の臣下も正月休み返上にならぬしそこまで気兼ねもないか。いよいよとなったら蒼に頼もう。」

月の宮は他と比べて珍しいものが多いから、暇潰しには事欠かないものね。

維月は、思って頷いた。

とはいえこの様子だと、毎年どこかの宮で集まるのでその度に娯楽をとなって、それ専用の部署を作らねばならないかもしれない。

維月は、先々を考えると頭が痛かったが、とりあえず今だとあの、マーダーミステリーが上手く行く事を願っていたのだった。


月の宮では、蒼が会合に出ていた。

会合と言っても、恒と裕馬の三人での内輪のものだ。

恒が、言った。

「…じゃあ、あっちに飽きたらこっちに戻って来る可能性があるんだね。7日だもんなあ、確かにあり得る。」

蒼は、頷いた。

「そうなんだよ。旭は普通の神の王だから、多分楽とか香合わせとか、基本的な娯楽しかないだろうし。維月が聡子と考えて作ったマーダーミステリーのシナリオが三つあるから、それで間が持つのは多分三日。その後双六やって、楽で遊んで羽子板やっても多分、四日ぐらいが限界じゃないかな。残りの三日は、こっちでゲームでもしてもらうのが一番いいかなって。ここなら他の宮も近いから、何かあってもすぐに宮に戻れるだろ?さすがに7日は長いからさ。」

恒は、頷いた。

「そのつもりで準備しとく。正月は三日間だから、みんな通常運営に戻ってるし問題ない。でも、こっちでもなんか作っとく?聡子に頼んだらマーダーミステリーぐらい書いてくれそうだけどね。維月が持ってるシナリオの内容は知ってるわけだし、被らないように考えてくれてるんじゃないかな。」

蒼は、何度も頷いた。

「そうしよう!あっちのは神の世バージョンらしいし、こっちは人世バージョンでも書いてもらって。」

聞いていた裕馬が顔をしかめた。

「人世って、舞台装置はどうするんだよ。確かにここには人世の物がたくさんあるけど、別に人の家建ててそこに呼ぶとかならないか?面倒が増えるから神の世バージョンでいいって。」

言われて、確かにそうだと思ったが、そんなにたくさん違うシナリオなんか書けるんだろうか。

「…まかせるけど。でももう三つ書いてるのに、違う内容書けるか?いきなり。神達も慣れて来るから、できたら違う世界観の方が目新しいし悩むんじゃないかなって思うんだけど。」

恒は、うーんと唸った。

「ちょっと考えとくよ。聡子に会って来る。急がないと舞台装置の準備も含めて日数あんまりないからね。」恒は、立ち上がった。「じゃあ今日の会合はこれで終わりでいい?」

蒼は、頷いた。

「頼んだよ。」

そうして、会合は終わった。

毎年これでは疲れるな、と、蒼は去って行く恒の背中を見ながら思っていたのだった。

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